人魚の唄

アメツキ
@black_a_dream

阪神共和国─前

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 魔女の力、いや、モコナの力で世界を渡ると、その世界は、見たことのない建物が立ち並んでいた。魔女のいた世界と似たような建物だった。

 別次元への移動に慣れていないためか、それとも精神的な疲労のためか、小狼、さくらは気を失っているようだった。...もっとも、さくらの場合別の理由なのだが。


「別の世界に来れたみたいだねぇ」

『そのようですね。

 ...彼らをどうしましょうか』


「兄ちゃんら、

 もしかして別の世界から来たんか?」


 突然話しかけられ、身構える三人。

 ちなみに、モコナは水月の肩に乗っている。


「そう警戒しぃなや。

 行く場所なくて困っとんのやろ?

 ならわいのとこに来ぃや」


 行く宛もなく、気を失っている二人を放置するわけにもいかなかったので、不思議な話し方をするその男についていくことにした。


◇◇◇


 男に案内され、一先ず部屋に入る。男にタオルを借り、飲み物でも持ってくる、と、男は部屋を出ていった。


「この子たちも拭いちゃおっかぁ」

「モコナもやるー!」

『なら、この子は私が』


 モコナは小狼を、水月はさくらの水滴を拭く。気を失っていても彼女を離そうとしない小狼に、水月は『よほどこの少女が大切なのだろうな』と思った。


「さくら!!」

「ぷう、みたいな」

「さ...くら....」


 突然声をあげたのは、それまで気を失っていた少年。しかし目の前にいたモコナに呆気にとられているようだった。モコナは「ツっこんでくれない」としくしく泣いている。

 そこに、「あー」と言いながら、ファイがモコナをひょいと抱えあげた。


「目覚めたみたいだねぇ」

「さくら!」


 小狼はもう一度大きな声で少女の名を呼ぶと、自分が抱き締めていたことに気付き、ギュっ、と抱き締めていた。


「一応拭いたんだけど」

「モコナも拭いたー!」


 モコナは「ほめてー」と上機嫌だ。


「その子のことは、

 そっちの女の子が拭いたよ。

 君、寝ながらでもその子のこと

 絶対離さなかったんだよ。

 君___、えっと...」

「小狼です」

「こっちは名前長いんだー。

 ファイでいいよ。

 えーっと、そっちの君は?」

『水月と申します』

「で、そっちの黒いのはなんて呼ぼうか」


 モコナはファイの膝から降りると、ぴょんぴょんと跳ねて、黒鋼の方へといく。


「黒いのじゃねぇ!黒鋼だっ!」

「くろがねね__」


 ファイは「くろちゃんとかー?くろりんとかー?」と、楽しそうにあだ名を考えている。モコナは、黒鋼の膝の上でぴょんぴょん跳ねている。

 すると突然、ファイが小狼の体をごそごそとまさぐり始めた。 


『なにをなさっているのですか...』

「なにしてんだ てめぇ」


 思うことは一緒のようだ。


「これ、記憶のカケラだよねぇ

 その子の」

「え!?」

「君にひっかかってたんだよ

 ひとつだけ」

「あの時飛び散った羽根だ。

 これが、さくらの記憶のカケラ


 体が....

 暖かくなった」

「今の羽根がなかったら

 ちょっと危なかったね__」

「おれの服に偶然ひっかかったから...」


「この世に偶然なんてない」


 祖母も言われたことがあるという、魔女の言葉。それを口にしたのはファイだった。


『...そう、魔女は言っていましたね』

「うん。だからね、この羽根も君が

 きっと無意識に捕まえたんだよ。

 その子を助けるために」


 今の羽根が彼女に返ったのは必然。

 しかし、水月は疑問に思う。

 何故、そうまでして彼は嘘をつくのか。

 水月は口にはしなかったが、疑問に思っていた。


「なんてねー。

 よくわかんないんだけどねー」

「.....」


 この人はよくわからない、それが水月の感想だった。


「けど、これからはどうやって

 探そうかねー、羽根」


 「はーいはいはいっ」と、上機嫌にファイの膝で手をあげるモコナ。


「モコナ分かる!」


 小狼が「え?」と言うと、モコナは小狼の膝の上にぴょん、と、飛び移り、話しを続けた。


「今の羽根、すごく強い波動を出してる。

 だから、近くなったらわかる。

 波動をキャッチしたら、

 モコナこんな感じに


 めきょっ


 なる」


 モコナが〔めきょっ〕、となったとき、それまで閉じられていたモコナの目が開かれた。ファイはへらへらと笑ったままだったが、黒鋼は「げっ」と目を見開き、よほど驚いたのか、壁に手を付き、胸に手を当てている。小狼は、冷や汗(?)をかいている。水月も、予告なしにくると、少し心臓に悪い、と思った。


「だったらいけるかもしれないねー。

 近くになればモコナが

 感知してくれるなら」

「教えてもらえるかな。

 あの羽根が近くにあった時」

「まかしとけ!」

「...ありがとう」


「おまえらが羽根を探そうが

 探すまいが勝手だがな。

 俺にゃあ関係ねぇぞ」


 そう言ったのは黒鋼だった。


「俺は自分がいた世界に帰る。

 それだけが目的だ。

 おまえ達の事情に首をつっこむつもりも

 手伝うつもりも全くねぇ」


 その言葉に小狼は、はい、と言ってこくりとうなずくと、「これはおれの問題だから迷惑かけないように気をつけます」と言った。

 黒鋼の顔を見ると、鳩が豆鉄砲でも食らったような顔をしていた。


「あははははー。

 真面目なんだねえ、小狼くん」


 黒鋼は面白くなさそうな顔をすると、「そっちはどうなんだ」とファイに問いかけた。


「んん?」

「そのガキ手伝ってやるってか?」

「んー、そうだねぇ。

 とりあえずオレは、

 元いた世界に戻らないことが

 一番大切なことだからなぁ」


 元いた世界に戻らない、その言葉に、黒鋼は眼光を鋭くする。自分とは正反対の望みだからか、黒鋼は良く思っていないようだった。


「ま、命に関わらない程度のことなら

 やるよー。他にやることないし」


「そっちのお前は」


 次に黒鋼は水月の方を向く。


『私は探し人がおります故、

 そちらを優先いたします。

 ...ですが、手が空いた時には、

 彼らを手伝いましょう』

「....そーかよ」


「よう!目ぇ覚めたか!」


 部屋に入ってきたのは、水月たちをこの場所まで連れてきた男だった。




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