Magic Spells

ムーン家の魔法使い

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「おばあちゃん…私はどうしたらいいと思う?」


祖母の部屋に駆け込んで、あの写真に向かって問いかけた。

どんな言葉をかけてくれるだろうと、想像して。




〈みりあは考えすぎな所があるからねぇ…。

意外と何とかなるものだよ。何とかなると思えばね。

できる事からやってみるといいよ。〉


大人になってからはよくそんなアドバイスをしてくれた。


この部屋に来る事も減って、めったに相談しなかったけど、

もっとたくさん話しておくべきだったと後悔する。



(馬鹿だな…無くなってから気づくなんて。)




祖母の本棚にも、あの原作は並んでいた。

ふと――彼女はどんな気持ちで、これを読んだのだろうかと思った。


未来を知りながら、どんな気持ちで故郷と向き合っていたの?



ぽたりぽたりと涙が落ちていく。



そっと気持ちを落ち着かせるかのようにポプリの香りが優しく広がった。

漂うラベンダーの香りに、安心感を誘われる。

そして、またひとつ思い出に浸った。

よく、ハーブティーと美味しいお菓子をご馳走してくれたな…と。



掌に握られた、黒い鍵が目に入った。




会いたい人には会えないけど、

その人の面影を追うことは出来た。



そしたら、どうして私にこの鍵を…。

ムーンの名を譲ってくれたのか、分かるかもしれない。

心はすでに、決まっていた。



扉を介して、魔法界へ出る。


母から、扉は二つの場所に繋がっていると聞いていた。


ひとつは、ホグワーツ魔法学校のダンブルドア校長室。

もうひとつは、祖母が暮らした屋敷だという。


見渡すと、森のように木々があふれている場所にたどり着いつく。



(ここがムーン家の庭?)



かすかに聞こえる鳥の声と、木々のざわめきに耳を澄ます。

そこには素朴な屋敷がぽつんと建っていた。



鍵穴に黒い鍵を差し込み、傾けるといとも簡単に開いた。

そっと中をのぞきつつ、恐る恐る室内へと入りこむ。




部屋は落ち着いた内装。

窓際には不思議なほど元気な植物が、列を連ねている。

レンガ張りの上品なキッチンに、白で統一されたダイニング。


リビングには暖炉があり、

柔らかなソファと立派な木で作ったテーブルが心地よい空間を作り出していた。



二階には客室と寝室。

それから地下室と思われる場所もあった。



書斎には大きな本棚が並び、

どこもかしこも重そうな本がぎっしりと詰まっている。



一通り確認してからリビングに戻ると、

チェストの上に写真立てがあるのに気づいた。



魔法の動く写真だ。


楽しそうに笑う祖母の姿、ダンブルドアとミネルバが居て、

小さい赤ん坊が零れんばかりの笑みで皆に抱かれている。


「これが、私…。」



隣にも写真がおかれていた。

祖父のようだ。おそらく…ずいぶん若い頃の。


そして、二人が仲良く並んでいる写真も存在した。

制服に身をつつんでいる姿は、新鮮だった。



そのまま私は、ホグワーツ魔法学校へと移動した。

当然ながらそこにはダンブルドアと、もう一人女性が立っている。


「突然の訪問、すみません。」



謝罪を口にすれば、

ダンブルドアはやはり優しげな瞳で、口元をゆるませた。



「貴方は…ミリア。


ミリアでしょう!?」



「…私をご存知でしたね。ええと。」


「ミネルバ・マクゴナガル先生じゃよ。」



ダンブルドアの言葉に耳を傾けつつ、

感動のあまり、慌てて近づいてくる女性を宥めた。



「貴方のおばあ様とは同じグリフィンドール寮でした。

同級生だったのです。ずっとお友達でしたのよ。

今回のこと、大変残念に思います。」



マクゴナガルは少し涙を浮かべていた。



「…祖母は幸せだったと思います。

ダンブルドア校長とマクゴナガル先生という友人がいてくれて…。

何も知らない私ですが…ホグワーツが大好きだったはずです。」



祖母は魔法界が好きだった。

その理由は此処にいる人たちが、大切だったからだ。

たくさんの人に囲まれて生きた祖母は幸せそうだ。


だから、私が最期に祖母に会った時も…。



「ミリア、ありがとうね。私は本当に幸せものよ…。」


そう話してくれたのだろう。

もしかしたら、先は長くないと悟っていたのかもしれない。



「ミリア、もっと顔を見せてくださいな。」



顔をマクゴナガルに向ければ、彼女は一層涙を潤ませた。



「あんなに小さかった子が、

綺麗なお嬢さんになられたのですね。」



感動もひとしおだろうが、

ここでダンブルドアが気づいて話を振ってくれた。



「それでミリア、何か用があったんじゃないのかね?」



「…ダンブルドア校長。」



何かを見透かすような目。

それをもう怖がる必要はないと思った。



「ムーン先生はミリアの幸せをいつも願っておった。


今もそれは変わらぬとわしは思う。

ムーン先生はいつもミリアを褒めとったよ。


とても優しい子じゃと。意外と度胸もあるとな。


なに、謙虚になることは無いのじゃぞ。

その身には大きな才能を秘めておる。


もし良かったら、ホグワーツで働いてみんかね?」




(ーーねぇ、おばあちゃん、

やっぱり、私の望みを知っていたのですか?)




そう問いかけたくなる。

出来なかった過去を悔やまなくていい。


もうそんなことは、どっちだっていいのだ…。

涙が這い上がりそうになってきて、必死に言葉を探した。



「私にできるでしょうか?」



(この道でいいだよね?おばあちゃん…。)




「出来るとも。

ムーン家の子孫は、大きな魔力をもっておる。

ミリアも筋がいいじゃろう。」



これからはもっと素直な気持ちで、

祖母と向き合えるような気がした。子供の頃のように…。



「出来ることから、お手伝いさせていただきます。」



目の前に立っている友人らは、

祖母のような、柔らかい眼差しをしていた。



「そうかそうか。」



「ミリア、遠慮は要りませんよ。

困った時は頼ってくれればいいのです。

私たちはみなホグワーツの家族なのですから。」



「ありがとう、ダンブルドア校長。

マクゴナガル先生。

どうぞよろしくお願いします。」



こうして私は深々とお辞儀をして、

魔法使いへの一歩を踏み出したのだった。