ハッピーバレンタインデー -想いよ届け-

ユリちご🍓絵描き
@yuritigo_0702

好きになった理由


「っ……先生……」


先生……

なぜ貴方は悲しそうなの……?

生徒に関心がないわけじゃなかったの……?

なら、ならなんで……

わざわざ生徒に距離を取らせるようなことばかり……



「……なんだ?俺の顔に、何かついているのか?」

「っい、いえ!

えっと、それじゃ……少年探偵団の本にしよっと……」

ゆりは江戸川乱歩の少年探偵団を探し始める。

しばらく探し続けると……

「……あ、江戸川乱歩あった!

でも、1番上じゃん……」

江戸川乱歩の少年探偵団は見つかったが、肝心の本は棚の1番上。

女子だとそう届かない。

「台を持ってこなきゃじゃん……」

ゆりは上り台を持ってこようとしたが……



「待て……」

「へ!?」

ゆりが上り台を持ってこようとした時、満はゆりを引き止めた。

「俺が取れば、わざわざ持ってこなくてもいいだろう……」

「ぁ、あの……「ほら。」……ぁ……」

満は軽々と1番上の棚から本を取り出しゆりに渡した。

「……。」

「ぁ、えっと……ありがとう、ございます!

助かりました……」

「お礼を言われるほどじゃない……

ほら、放課の時間はとっくに過ぎている……早く帰りなさい。」

意外な一面を見せたとはいえ、やはりちょっと冷たい先生に見える。

でも、先生の知らなかった一面が見れて、嬉しいと思った自分もいる……それに……



先生の艶やかな黒髪、細い縁眼鏡から覗かせるちょっと冷たそうな瞳……

普段見ているはずなのに……見慣れているはずなのに……

先生がとてもかっこよく見えた……。

もしかしたら、今まであった男の人の中で1番かもしれない……。

それくらい、先生はかっこよく見えた……もっと、近くで顔を見て見たい……。

そう思うように、なっていた……。


「……。」

ゆりはじっと満の顔を見つめていた……。

「っ……稚児野、暗くなる前に帰りなさい……」

満は見られているのが恥ずかしいのか、耳をほんのり赤くさせていた。

「っ……!

ぁ、すいません……えっと、さようなら……」

(っいけないいけない……いつもの先生じゃなくてついついじっと見ちゃった……)

ゆりはそそくさと満のもとから去り、美智子のいるカウンターへ向かった。



「っすいません、これお願いします……」

ゆりはカウンターに本を置く。

「あら、今度は江戸川乱歩?」

「はい……香月先生に、勧められて……」

「香月先生、放課後にちょくちょくいらっしゃるのよね。」

「ぇ……そう、なんですか?」

予想外の言葉に少し驚くゆり。でも言われればなんとなく納得する。

図書室は学校の中でも一番静かな場所、

いかにもうるさいところが苦手そうな満はこの場所を好みそうだと思った。

「えぇ。たまに、寝てしまう時もあるのよ。」

クスクスと笑う美智子。

「香月先生に、そんな一面があるなんて……」

「先生も、普通の人間ってことよ。はい、貸出期間は2週間よ。」

「ありがとうございます。それじゃ、夏休み前に返すようにします。」

こうしてゆりは図書室を後にした。



「放課後、ちょくちょく図書室にいる、かぁ……」

(っなんだろ、この気持ち……もっと、先生のことを知りたい……

この気持ちは、一体……ただの、好奇心かな……)

ゆりはすっきりしないまま学校を後にした。



そしてのその翌日の放課後、ゆりは図書室に行ってみることにした。

もしかしたら、香月先生がいるかもしれないからと……。

ゆりは6時間目が終わり掃除を終えた後、図書室に向かった。



「失礼します。」

「あら稚児野さん?つい昨日きたばっかり……あら!まさかもう読み終わってしまったの?」

昨日に続いて図書室にやってきたゆりに驚きを隠せない美智子。

「まさか、1日で読み終わるなんて無理ですよー」

苦笑いをするゆり。

「それじゃあ……なぜここに?」

「え!?

えっと……香月先生にちょっと用事があって……もしかしたらまた図書室かなーって……」

ゴニョゴニョと話すゆり。

「えぇ、先ほどいらっしゃったわよ?」

「そう、ですか……ありがとうございます。」

(よかった……先生ここにいるんだ……)

ゆりはお辞儀をすると、昨日満とぶつかった場所へ行ってみることに。

すると机にうつ伏せになっている男性が一人……

「……?

誰だろ……」

ゆりはそっとその人物に近づいた。



「スゥ……スゥ……」

小さな寝息をあげている人物、ゆりはそっとその人物の顔を覗いてみる。

覗いた先にいたのはメガネをかけたまま前髪を机に垂らした状態眠っている満だった。

「っ……!

か、かか、香月……先生……!?」

驚きの声をあげるゆり。

「っん……」

その声に反応したのか、満は小さく肩を動かした。

「っ!」

(やば……起こしちゃった……?)

ふと心配になったが、どうやらそこまで心配しなくてもいいようだ。

なぜなら……


「スゥ…スゥ……」

満はまだ眠り続けていたから……。

「っ……先生……」

(先生の横顔って、すごく綺麗……)

ゆりは思わず満の髪をあげた。

「肌もすべすべ……意外と女子並みにお手入れしてんのかな……」

まじまじと満の顔を見るゆり。すると……

「んっ……ん?」

「っ!?」

(や、やば……!)

顔に違和感を感じたのか、満はうっすらと目を開けた。

「……っ!

ち、稚児野……!?」

目をカッと開らき驚いた様子でゆりを見る。

そして満は勢いよく顔を上げた。

「っ……邪魔して、すいません……せっかく、休んでいたのに……」

起こしてしまったことを謝るゆり。

「っ……寝ていた、俺も悪い……まだ、仕事が残っているのにな……」

メガネを昨日と同じようにクイっとあげる満。

「っ……」

ゆりはその仕草に思わず息を飲み込む。



やっぱり先生……凄くかっこいいな……さっきの寝顔もそうだけど、

今の寝起きの顔とかも……



「稚児野、お前なんでここに?

昨日借りにきたばっかりだろ……」

「っ!?

え、えっと……なんとなく……」

言い訳が思いつかず「なんとなく」と答えるゆり。

「……。」

答えをはっきりさせないゆりを見る満。

「っ……」

ゆりは満から慌てて目をそらす。



何なのよこの気持ち……先生の顔を、まともに見ることができない……。



「……図書室は、落ち着く……」

満はゆりから視線を窓に移して小さく呟いた。

「え……?」

再び視線を満に戻すゆり。

「図書室は、身も心も綺麗にしてくれるような気がする……だから、

俺はこの場所が好きだ……。」



「っ香月、先生……」

「稚児野も、そうなのか……?」

外からゆりに視線を戻す満。

「っ……ま、まぁ……ここは、教室より遥かに静かですし……

それに3階だから、外の景色も綺麗だし……」

「確かに、そうだな……」

小さな笑みを浮かばさせる満。

「っ……!」



_トクンっ…



ゆりの胸はトクンっと小さな高鳴りを感じた。

まるで、恋と同じような感覚が……







この日から、私は香月先生を意識し始めるようになった……。



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