ハッピーバレンタインデー -想いよ届け-

ユリちご🍓絵描き
@yuritigo_0702

好きになった理由

そう、私が好きなのは香月先生……つまり、担任の先生。

世間的に、許されてはいけない感情を……私は持ってしまった。


「……稚児野ゆり、」

「ぁ、はい……!」

いつの間にか私の番が来ていたようだ。私は慌てて返事をする。

「土屋日向、」

「はい。」

香月先生は淡々と出席確認をしていく。

そんな香月先生は生徒の間では近寄りがたい先生、

目をつけられたくないと生徒からは一目置かれている。

その一方でかっこいい先生、イケメンと一部の女子では高い人気もある。

私は最初、前者側の方だった。


胸を弾ませた4月の入学式、期待と不安を胸に学校へ……。

そして担任の先生として教室に入って来たのが香月先生。

若くイケメンということもあって女子達からは熱い視線が送られていたが、

そっけない態度、一切生徒に対して笑顔を見せない先生。

それがものすごく、怖いと思った。この人が、1年間私のクラス担任だなんて……。

でも1年生が終わって2年生に進級すればクラス替えがある。

それまでの辛抱だと自分に言い聞かせていた。

それほど香月先生は当初私の苦手な先生No.1だった。


けど、それを覆す出来事が夏休み入る前に起きた……。







_7月中旬


「ゆりー、帰ろー!」

6時間目が終わり放課、教科書やノートをカバンに入れていると

すでに用意を済ましていた美香がゆりの席にやってくる。

「ちょっと図書室に本返却しに行かないといけないから……

それに、ちょっと図書室でまた面白そうな本探したいから今日は先に帰ってて大丈夫だよ。」

よくみんなに意外と言われるが、私はこう見えて読書も趣味なのだ。

と言っても読むのはラノベ系だけど……。

「えぇ……わかった……じゃあ先に帰るね?」

「うん、ごめんね美香ちゃん……」

ちょっと申し訳ない……。

「いいっていいって!あ、私も読めそうな本があったら紹介してね!

じゃあまた明日、バイバイ!」

「うん、バイバイ!」

お互い手を振って、美香ちゃんは教室を出て言った。

私も荷物をまとめて図書室に向かう。


図書室は3階、私たち1年生の教室は1階なので階段を登る。

階段を登り終えればすぐ目の前には図書室がある。

「こんにちは、本を返却しに来ました。」

ゆりは図書室のドアを開ける。そして入るとすぐに司書さんがいるカウンターがある。

「あら稚児野さんじゃない。今回の小説はどうだった?」

司書さんの名前は国井美智子さん。30代半ばの女性です。

「はい!すごく面白かったです。特に主人公かっこよかったです!」

返却をしながら本の感想を言うゆり。

「稚児野さん、入学してから大分借りてるわね。学年の中でもかなり多いわよ?」

「今や電子書籍の時代……でも私はこうした紙の本が、読んだって感じがして好きです。」

「そういわれると、司書として嬉しいわ。

また借りていくの?」

国井さんは嬉しそうに笑みを浮かべていた。

「はい、今度はラノベ系じゃなくてしっかりとした小説読んでみたいなーって思って……」

「それなら……ここからみて一番左端の棚に置いてあるわよ。

宮沢賢治や芥川龍之介とか……有名どころが沢山あるわ。」

左端の棚は真面目な本が多いため、普通の生徒はあまり立ち寄らない。

でもそこには椅子と机があるので自主勉に使う生徒や稀に先生の憩いの場になってたりする。

私は早速そこへ向かう。


「あ、ほんとだ……文庫版サイズが沢山……挿絵も少なそ……」

でもせっかく借りに来たわけでここで帰るわけにはいかない。

何かしら読みたい本を見つけなくては……

ゆりはカニ歩きをしながら一段一段ずつ本を探していく。

ゆりは本探しに夢中になるあまり……


「えぇと……_ドンっ!

っきゃ!」


誰かとぶつかってしまった。

「っ……!?」

ゆりがぶつかった相手も驚いた様子でゆりを見ていた。

「いたたたた……す、すいませ……んな!?」

頭をさすりながらぶつかった相手を見上げる。どうやら相手は長身の男性。

先輩だろうか……でも先輩でも同級生でもなかった。

ゆりの目の前にいたのは……




「っ……か、かかか香月先生!?」

なんと自分がぶつかった相手は苦手な先生No.1である香月満。

ゆりは顔を青ざめる。

「稚児野……」

満はメガネをクイっとあげる。どうやらぶつかった衝撃でメガネがずれたようだ。

「っす、すすすすいません!」

「……いや、構わない。本に夢中になることは、悪いことではないからな。」

「ぇ……」

てっきり満に怒られるかと思っていたゆり、ゆりはポカンと満を見上げている。

「お前が読書に熱中しているというのは、国井さんからもよく聞いている。

その趣味は、ずっと続けていくといい。君にとっても、為になるだろう……。」

「っ……」

怒られるどころか褒めらた私……

普段のギャップについていけず言葉が思うように発せない……。

でも、それが……


「何か迷っているようだな。俺の薦めではあるが、江戸川乱歩の小説がおすすめだ。」

「江戸川乱歩って……推理系小説とかで有名の……?」

どうやら香月先生はミステリー系のものが好きらしい……。

「あぁ。少年探偵団あたりはお前でも読みやすいと思うが……」

「え、少年探偵団ってコナンの?」

真っ先に少年探偵団といえば、名探偵コナンに出てくる少年探偵団を思い出す。

「っはは……とは、違うとは思うが……」

満は苦笑いを浮かべていた。

「っ……!」

(私としたことが……恥ずかしい……)

ゆりは一気に耳を赤くする。

「ククククク……」

満は拳で口元を押さえながら「ククク」と笑いをこらえていた。

「っ……」

その仕草に、ゆりは一瞬目を奪われた……。



「っ……」

(っだって……)



先生が笑ってるところ、初めて見たから……。

初めて見た仕草に不覚にもドキッとしてしまった。

いわゆるギャップ萌え的なやつだろうか……。

「っ笑ってしまってすまない……けど、俺もこう見えて……コナンの漫画は集めていてな……」

満はちょっと視線を横にずらしながら呟いた。

「っえ!?」

またまたギャップ……漫画なんて、めちゃくちゃ縁がなさそうな先生が読んでいる……

それだけでも驚きを隠せない……。

「……意外か。

まぁ、それも無理はない……生徒たちにとって、俺は近寄りがたい教師みたいだからな……」

「っ……」

(先生、ちょっと悲しそう……?)


満の見せる表情は、なぜか少し悲しそうに見えた……。






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