君からの贈り物

後編

ホワイトデーの日の夜、好きな少年漫画を読み終わったあと、今日幼馴染みの頼に貰ったキャンディの小瓶をぼんやり眺めていた。

今朝テレビで言ってたけどホワイトデーのお返しにはそれぞれ意味があるらしい。

例えば、クッキーは『あなたは友達』とかマカロンは『あなたは特別な人』とか。そんな感じでキャンディにも何か意味があるみたいだけど変な意味だったら嫌だし調べる勇気がなかった。 だからと言って、頼に聞き出すこともできず今に至っている。

「キャンディってどんな意味があるんだろう」

そう1人で呟いていたら無料通話アプリの通知音が鳴った。

送り主が誰なのかはすぐに分かった。この時間にメッセージを送ってくる人は1人しかいない。

私はスマホの通知欄を確認し、やっぱりと思う。相手は頼だった。小さい頃から寝つけない時や不安な時や寂しい時に頼はよく私に何かメッセージを送ってくることが多かった。小学生の頃までは電話だったけど中学に入ってお互いスマホを持ち出してからはこっちでやりとりをすることが多かった。

「起きてる?」

「起きてるよ」

メッセージにはすぐに『既読』がついた。

「今何してた?」

「さっきまで漫画読んでた」

私は勉強机の上に大量に積み上げられた少年漫画を見上げながらそう返信する。

「漫画読んでたってことは明日の課題終わったってこと?」

彼からの返信に私は少し焦った。

なぜなら私は明日提出のワーク(そんなものがあったかどうかも覚えてない)を1ページもやってなかったからだ。

「数学のワークだっけ?終わってるよ」

私はそう打ち、シンデレラの「終わったよ!」という文字の入ったスタンプと一緒にそのメッセージを送信した。

すると、数秒後すぐに返信がきた。

「明日提出なのは英語のワークだけど」

「え?嘘?」

「本当だって」

「マジで?」

「マジ。亜夢、最近勉強してないだろ」

図星だ。

最近は、前に古本屋で大人買いしたお気に入りの少年漫画ばかり読んでいた。

いや、それ以前から私は勉強してなかったと思う。勉強が大嫌いだったからやりたくなかった。

本当は、英語なんて意味の分からない言葉の勉強なんかしたくない。

だけど、やらなかったら来年の進路に響くのだ。いくら勉強が嫌いな私でもそれくらい分かっている。

「明日やる。だから、教えて」

「分かった。じゃあ、明日な」

やりとりが終わってしまう。そう思った私は慌ててメッセージを打ち送信した。

「待って」

「何?」

「今日キャンディくれたじゃん?あれって何か意味あるの?」

渡してくれた人にそういうことを聞くなんて変だとは思ったけど、気になって仕方なかったから私は聞いてみた。

「意味?」

「そうそう。ホワイトデーのお返しには意味があるんだって。クッキーは友達とかマカロンは特別な人とか」

「それか。知ってる。朝やってたよな」

「それそれ!キャンディの意味教えてよ!」

これは答えてくれそうな雰囲気だ。私は1人でそう確信した。

だが、頼から返ってきたメッセージは予想外の言葉だった。

「明日の英語の授業までに英語の課題終わらせることができたら教えてやる」

「英語って何限だっけ?」

「2限」

「2限か!楽勝楽勝」

1限と休み時間を利用して答え写しさえすればあんなのすぐに終わる。赤ペンの消費量がヤバいと思うけどそんなの気にしない。終わらせればいいのだから。

私がそう考えていると頼からメッセージが送られてきた。

「全部赤で書くとかはナシだからな。ちゃんと自分でやれよ」

「なんで分かったの?」

「亜夢のやことだから」

「鬼」

「俺当たり前のことを言っただけじゃん」

「いや、そうなんだけど勉強が嫌いなこっちの身にもなってよ。」と送ろうとしたがやっぱりやめた。張り合ってるうちに眠くなってきたから。

私は頼にシンデレラの「おやすみ」というスタンプを送った。すると、すぐに「good night」と書かれたスタンプ(ここまで英語にするとか嫌がらせか)が送信されてきた。

私はそのスタンプを確認すると、電気を消し目を閉じた。


次の日、私は言われた時間まで英語のワークを終わらせることができずキャンディの意味を知ることはできなかった。

それどころかワークが終わるまでずっと頼や玲羅に嫌なくらい英語の問題を叩き込まれた。

正直、もうキャンディの意味なんてどうでも良かった。


* * *


彼女がキャンディの意味を知ることになるのはもう少し先の話ですが、この小説を最後まで読んだ皆さんには意味を先に教えてあげましょう。


『キャンディ=あなたが好き』

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