君の気持を教えて

かいわれ
@tatannotatann

 審神者の部屋は、今回のように緊急時に籠城できるよう、そこだけで生活できるようになっている。そのため渡り廊下の先の離座敷練は丸々審神者の部屋だ。

 担当は歴史修正主義者に離座敷練を囲むよう指示をする。大太刀二振りが勝手口付近を。側面は太刀が一振りずつ。正面は大太刀一振りと結界が破れ次第乗り込み、審神者を捕らえるための打刀が一振り。

 雨戸も部屋の襖も全て締め切られているせいで、複数ある部屋のどこに審神者が身を隠しているか分からない。結界を壊している隙に逃げられることがないよう考えての配置だった。


 審神者の逃げ場を封じた担当は、ようやく思い描いていた一方的な展開に笑みを浮かべる。さながら気分は、城主の間まで攻め込み勝利を確信した将軍だ。

 そして、この本丸担当の政府職員であるはずの男は、歴史修正主義者たちに高らかに命令した。

「結界を破れ!審神者を引きずり出すんだ!」

 命令を受けた歴史修正主義者たちは、結界めがけ無防備に刀を振りかぶり……。


「後ろだぜ!」

「斬る!」

 そのうち裏側に立っていた大太刀二振りが、空から降って来た二振りの白い刀剣男士に首を刈り取られた。さらに直後、各所で打刀、太刀が僅差で雷鳴の轟くような衝撃に吹き飛ばされる。表の大太刀は初機動の遅さ故に異変に気付き、結界への攻撃を中断したようだ。


 初撃を成功させた二振りは素早く身を翻し、山姥切は右側から鶴丸は左側から表へ向かう。


 離座敷練の右側。

 敵の太刀は結界の反撃が強かったのか、吹き飛ばされた衝撃で倒れ伏していた。山姥切の気配に気づきすぐさま立ち上がるがしかし、立ち上がることは許しても、刀を構えるまでを山姥切は許さない。

「はあっ!」

 真っ直ぐに正面から直進し、敵が刀に手を触れるか否かの瞬間に上から一線。

 哀れな太刀は呻き声すら上げずにバキンと折れた。その音を聞くか否か、山姥切は離座敷練の表へと走り出す。


 変わって離座敷練の左側。

 こちらは上手く衝撃を逃がしきれたのか、反撃に呻きながらも辛うじて立っていた太刀に鶴丸は肉薄した。しかし、即座に振るわれた迎撃で斬りかかる事はできず、鶴丸は鞘で受け止める。

 その刃は予想より重く、相手の練度の方が上のようだ。

 同じ刀種では、各々の特徴こそあれど性能にそれほど大きな違いはない。練度がそのまま優位になりやすい戦いで、相手の方が上なのは危険だ。しかし、その手は焼け爛れており、結界からのキツイ反撃を受けたことを物語っている。

 ――勝機はある!

 鶴丸は鞘を操り相手の刀を払うと、距離を取って刀を構え直す。大将がまだ残っているのだ。負けるわけにはいかない。


「さあて……これで負けたんじゃ、驚きも何もないよなあ!」

 硬直状態は一瞬、一騎打ちが始まった。

 刀同士がぶつかりあう高い金属音が絶えず響く。

 怪我のおかげで斬り合いは互角。それでも練度差というものは厄介だった。

 ――打撃が足りない……!

 互角の斬り合いでも、両者ともに避け切れなかった分の傷は負う。しかし、練度差で劣っている鶴丸の付ける傷は浅く、反対に付けられる傷は深い。

 斬り合えば斬り合う程、鶴丸は不利に陥っていっていた。

 ――だが、今度こそ俺はまた君に逢う事を諦めない!

 拘束され何もできず、もう逢えないかもしれないと諦めかけていた鶴丸に、山姥切は希望を灯してくれた。予想外の場所でこそあったが、再会できたのも山姥切が動いた結果だ。

 今度は自分が敵を超え会いに行く番。

 防御を捨て敵に身を切らせた直後、鶴丸は山姥切が春雲のようだと称したその神気を開放した。周囲の温度が上がる。


「紅白に染まった俺を見たんだ。後は死んでもめでたいだろう……!」


 刀を振り切ってしまった敵は、防御が間に合わないと悟って避けようと身を引く。しかし、すでに白い刀はその体を捉えている。その動きに合わせて鶴丸が一歩踏み出せば、そのまま必殺の一撃は入った。

 太刀は呻き声すら上げずにバキンと折れる。


9 / 13

著作者の他の作品

人の子に転生した山姥切国広が、己の婚姻届けの純潔を本気で心配する話。

怪盗キッドこと黒羽快斗成り代わり小説のお試し編。出だしだけ。