魔導姫戦記

ウロボロス団
@ouroboros_dan

魔導師ダンタリアン

アルーヴヘイム領のとある村にて宿泊中…


未明にカーバンクルが部屋の窓を叩き、ミシェルは目を覚ます。

「どうしたの?カーバンクル…」


そう言って窓の外に目をやると、薄明るい空を行く、巨大な猛禽の群れが見えた。

それぞれの背には人影らしきものが騎乗している。


「あれって…帝国軍のウィザード?」

騒ぎで目覚めたランが言う。

カーバンクルは、猛禽の群れが行く方角を見たまま興奮している。


ミシェル「もしかして…あの先にまた、アグエルの遺物が…?」

ラン「追いかけてみようか?」

ミシェル「はい…!」

ラン「よしっ、みんな起きな、朝だよ!」


かくして一行は、猛禽の群れが飛び去った方角を目指す。




リン「だけどランちゃん、向こうは飛んでるんでしょ?

追いつけないんじゃ…」

ラン「いや…アイツら低空を飛んでた…たぶん目標は割と近くにあるのよ。

戦場跡だもの、もっと何かあっても不思議じゃない。

どの道このジャングルじゃ、向こうも歩いて探すしかないさ。」




カーバンクルの先導で、緑に浸食された廃墟を探索していると、ランが何かの気配に気付く。


「(シッ…!)」


茂みの向こうでは、1人のウィザードが複数の野盗に囲まれていた。

だが、圧倒的な実力差で野盗は倒され、その中の1人にウィザードは手にした杖を突き付ける。

杖の先端には、淡い光を放つフォシルに似た鉱石が据えられていた。


ウィザード「見ろ。

私の家族は、貴様らの様な者に捕らわれ売られた挙句、こんな姿にされた。」

野盗「…な、何を言って…」

ウィザード「我らの苦しみを、身を以て知るがいい。」


そう言って念じると、鉱石から放たれたオーラがウィザードを覆い、その長い髪に複数の苦悶に満ちた顔を投影した。


シャールヴィ「(あれって、もうメタモルフ化してるんじゃ…?)」

リン「(だけど、意識はまだあるみたい…どういう事?)」


ウィザード「生きたまま四肢を引きちぎれば、我らの苦しみも理解できるかな?」

野盗「ひいィィィ…や、やめてくれ!」


ミシェル「待って!」

見兼ねたミシェルが茂みから飛び出した。


ラン「(あッ、ちょっ…!)」

ラグナ「ミシェルさん!」


ラグナも後を追い、2人は野盗とウィザードの間に割って入る。


ラン「(やれやれ…懲りないねェ…)」


ウィザード「…姫様⁉︎

…いや、違う…そうか、君がミシェルだな?


そして君は…」

ラグナ「ラグナ=ヴァルホルです。」

ウィザード「…噂は聞いている。

父親と決別してテロリストになったそうだな。

…で、なぜ野盗などを庇う?」

ミシェル「…この人が貴方の家族を拐った訳じゃないでしょう?」

ウィザード「だが、同罪だ。

放っておけば、いずれ別の誰かを不幸にする。」

ラグナ「でも、これじゃ虐殺だ。

然るべき裁きを…

ウィザード「然るべき裁きとは何だ?

それを裁くべき者の長たる君の父親と君が決別したのは、つまりそういう事だろう?」

ラグナ「…そ、それは…


その時である。


「…くたばれや、バケモノがぁァァァ‼︎」

野盗がウィザードに背後から襲い掛かった。

だが、ウィザードは振り返りもせず、魔法で野盗を瞬時に焼き尽くす。


「見ただろう?

彼らは反省などしない…生かす価値など無いのだ。


だが、不覚にも苦しませずに死なせてしまったな…

まぁ、感謝するがいい。


さて…君達の目的も、アグエル文明の遺産なのだろう?

私怨に囚われ仲間とはぐれてしまったが、足止めとしての役割は果たせそうだ。」

ラグナ「やめてくれ…貴方とは戦いたくない…!」

ウィザード「私を哀れむより、自分達の心配をするがいい。」


その時、茂みの中からラン達が姿を現した。


ラン「全くその通りだね。

ラグナ、あんたはミシェルを連れて先に行きな。」

リン「シャールヴィ、アンタもよ。」

シャールヴィ「なに言ってんだ、オイラも戦う!」

リン「ここは先輩に任せなさ〜い♪

…アンタはミシェルちゃん達を守ってあげて。」

シャールヴィ「…ちぇっ、偉そうに…

気をつけろよ…!」




ラグナ・ミシェル・シャールヴィは、再びカーバンクルの導きに従い先に進む。


ミシェル「あの人の杖のアレ…フォシルに似てた…」

ラグナ「家族がこんな姿に…って、どういう事だろう…?」










一方、ウィザードと対峙するランとリン。

魔法攻撃をかわしながら言う。


ラン「いいのかい?

そんな盛大に魔法使いまくって。」

ウィザード「見ての通り、私にはまだ猶予がある様だ。」

リン「そう、それ!

なんでそんな姿になっても、まだ意識があるの?」

ウィザード「私の魔力の源が、他の魔導師達とは少し違うからかもしれんな。」

ラン「…その杖かい?」

リン「どゆ事?」

ウィザード「お喋りしてる余裕があるのか?」


射程の長い魔法攻撃の前に、近接戦しか出来ない2人は攻めあぐねていたが、持ち前の素早い動きで攻撃をかわし続けると、やがてウィザードに疲労の色が見え始めた。


ウィザード「…やはり人間の叡智など、まだアグエルのそれには遠く及ばぬ様だな…」

ラン「…あんた…まさか⁉︎」

ウィザード「…聞け、私にまだ理性があるうちに…」


ウィザードは攻撃の手を止め、杖の先端に据えられた鉱石を見て語り出す。

「…これは、アリハマ博士のネクロマンサー計画によって…人工的に精製されたフォシルだ…

彼はこれを…アトモスと名付けた…」

ラン「フォシルを…人工的に…⁉︎」

リン「でも、どやって…?」

ウィザード「…アリハマ博士は、フォシルを構成する成分が何なのかつきとめた。

それは…

全ての生き物が持つ、生命と精神の根源…

いわゆる、魂と呼ばれるものを結晶化した物質だ。」

リン「魂…⁉︎」

ラン「…それじゃあ、まさか…⁉︎」

ウィザード「そう…

野盗や人買いに売られた人々の魂からアトモスは造られた…

コレは文字通り、私の家族の成れの果て…」

リン「…ヒドイ…!」

ラン「…なんてこった…!」

ウィザード「…どうやら、時間切れ…の様…だ…

せめて、私が人間で…あ…る…うちに…ニン…ゲン…ト…シ…テ…!」

リン「…そんな!」

ラン「…わかった…

ウロボロス団・ラン=タテハヤが介錯させてもらうよ…」


頭を垂れるウィザードに、ランは刀を振り下ろした。


「…アリガ…と…う…」

そう言い残してウィザードの身体は灰と化し、風に消えた。


リン「…ランちゃん…」

ラン「……

…ラグナ達を追いかけよう。」






続く…

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