魔導姫戦記(仮)

ウロボロス団
@ouroboros_dan

聖剣クワルナフ

「お願い、カラドリウス。

ラグナ君を助けて。」


ミシェルがそう言うと、カーバンクルは光を放ち、それは粒子となって鳥の姿を象った。

その鳥…聖獣カラドリウスの嘴が石になったラグナをつつくと、石の身体から砂が溢れ出し、光の粒子となってカラドリウスの嘴に吸い込まれていく。


ラグナ「…あ…ここは…?」

シャールヴィ「ラグ兄!」

ミシェル「ラグナ君…!」

ラグナ「…そうか、あの時僕は石にされて…

でも、どうやって元に?」

リン「ミシェルちゃんのおかげだよ♪」

ミシェル「この子…聖獣カラドリウスの力よ。

でも、見つけられたのはみんなのおかげ。

リンちゃんとシャールヴィ君と…

…あと、ルーシェ姫…」

ラグナ「ルーシェ姫⁉︎」

ミシェル「えぇ…」


ミシェルはこれまでの経緯を話す。


ラグナ「…そんな事が…

みんな、ありがとう…!」


そこへランが戻って来た。


ラン「リン、あんた、ミシェルを連れ出して帝国の連中に鉢合わせたんだって?」

リン「ご…ごめんッ…ランちゃん…」


そこにシャールヴィが割って入る。


「リンだけじゃねぇ!

それに、そのおかげでラグ兄を治すことが出来たんだ!」


ランは、シャールヴィがリンを庇う様子を見て少し驚き、直後に「ぷっ」と笑いが溢れた。


「フフッ…いや、よくやったよ、あんた達…!」


それを聞くと、リンとシャールヴィはきょとんとし、直後に顔を見合わせて笑った。


ミシェル「ランさん。

ルーシェ姫が、封印された聖獣を解き放てるのは聖剣だけだと言ってたんですが…」

ラン「…て事は、先に聖剣を手に入れないと、聖獣探しも出来ないって訳ね。

丁度いい。

誰にも抜けない剣ってのの噂を聞いてきたところさ。」

「誰にも抜けない剣?」

ラン「そう。

何でも、南の大陸にある、大昔の戦場跡で見つかったらしいんだけど…

それこそ、アグエルの遺物が残ってるって事も、有り得ない話じゃないでしょ?」

ミシェル「わかる?カーバンクル。」


カーバンクルは「?」と首を傾げた。


ラン「流石に距離があるからね。

行ってみるかい?」

ミシェル「はい!」






南方大陸…

亜熱帯〜熱帯気候で、南下するほど鬱蒼とした森に覆われている大陸である。

革命後の新興国は、最北端に位置するドゥエルグヘイムのみで、未開の先住民の領域はアルーヴヘイムと呼ばれている。


一行は、ドゥエルグヘイムのとある街に辿り着いた。


リン「カーバンクルの様子はどう?」

ミシェル「まだ何も…」

ラン「南方大陸っても広いもんね…

とりあえず、大昔の戦場跡ってのが何処なのか、訊いてみようか。」


かくして街の人々に聴き込みを始める一行の様子を、物陰から窺う者の姿があった。






ドゥエルグヘイムは魔法の普及において遅れているが、それ故にメタモルフも、海を渡って海岸に現れる者・空を渡って来た者と遭遇するのみで、北方大陸に比べ圧倒的に少ない。

だが、その一方で野盗の類が逆に多かった。


それらを退けながらサバンナを越え、ジャングルを行くと、カーバンクルが反応を示す。


「何か感じる?カーバンクル。」


そう言ったミシェルの肩から降り、何かを目指して歩き出したカーバンクル。


しばらくすると緑に侵食された廃墟に辿り着き、無造作に地に突き立てられた一振りの剣と、傍らに佇む奇妙な生き物の石像を発見した。


ラグナ「あれが…聖剣…?」

ミシェル「…周りの石像は…聖獣かしら…?」

ラン「試しに…リン、抜いてみ?」

リン「うん♪

…よいしょっと…!

う〜ん…!

ダメだぁ…やっぱり抜けないよ。」

シャールヴィ「オイラにもやらせてよ。

…ほっ…!

むむむ…!

マジかぁ⁉︎びくともしない…!」

ラン「あんた達の馬鹿力でも抜けないなんて、やっぱり普通の剣じゃないね。

だけどミシェル、もしこれをアンタが引き抜くことが出来れば…」

ミシェル「…私は…

…アグエルの末裔…?」

ラン「…怖いかい?知るのは…」

ミシェル「…だ、大丈夫です…!」

ラグナ「…ミシェルさん…」


ミシェルが剣に触れると、脳裏に映像が流れ込む。

それは、力尽きて倒れる剣士と、剣士に付き従う生き物が石像と化す瞬間だった。


ミシェル「…これは…アグエル達の戦争の記憶…?」


力自慢のリンとシャールヴィでさえ引き抜くことが出来なかった剣だったが、ミシェルが手にすると、羽根のように軽く突き立てられた大地を離れる。


ミシェル「…抜けた…!」

ラグナ「…じゃあやっぱり…ミシェルさんは…」

ラン「…まぁ…ルーシェ姫が存在している以上、グレゴリウス王族なのかはわからないけど、少なくともアグエルと何らかの関係があるのは間違いないと思うね。」

ミシェル「…私が…アグエルと…」


ミシェルはふと、刀身の刻印に気付く。

剣の銘だろうか…?クワルナフと彫られていた。

次の瞬間、ランは何者かの気配に気付く。


ラン「…シッ!

…囲まれてる!」

リン「囲まれてるって…メタモルフ⁉︎」

ラン「いや…等間隔で間合いを詰めて来てる…

野盗とも違う…訓練された軍隊の動きよ!」

ラグナ「それって…まさか…⁉︎」


茂みの奥から姿を現したのは国籍不明の軍隊だった。

ランの警告により不意打ちは免れたが、挟撃により戦力の分散を余儀なくされる。

ランとリンは敵を殲滅するが、ラグナ・ミシェル・シャールヴィはとどめを刺すのを躊躇し、取り逃がしてしまう。


リン「ちょっと、逃がしたの⁉︎」

シャールヴィ「ちぇっ、逃げられたんだよ!」

ミシェル「ごめんなさいっ!」

ラン「…まぁ、しょうがないさ。


それよりこの石像…

聖獣ならその剣で解放できるんじゃない?」

ミシェル「…やってみます…!


お願い、私達に力を貸して!」


そう言って剣をかざすと、像は砕け散り、無数の光の粒子となってカーバンクルに吸収された。

かくしてミシェルは、聖獣ノーム・ドリュアード・スィームルグの力を得る。


ラン「さて…と、目的も果たした事だし…」

シャールヴィ「帰ろうぜ!」

ミシェル「ええ。」


一行が帰路につく中、ラグナは1人、敵の逃げた方角に目をやった。


「…(さっきの連中は、やはり父さんの差し金なのか…?)」






茂みの奥で、先程逃走した兵士が、アルキュオネを通じて何者かに連絡していた。


「例の娘が聖剣と3体の聖獣を入手。

捕獲作戦は失敗。


…了解しました。」






続く…

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