魔導姫戦記

ウロボロス団
@ouroboros_dan

医の霊鳥と2人の姫

グレゴリウス領・旧ヒノモト…


リリィ「なぁに、あんた達、しくじっちゃってんのぉ?

アハハハハ!」

アッシュ「そりゃないわ〜…

俺らが陽動してやったお陰で、そっちも上手く行ったんだ。

ほっぺにチューしてくれても良い位だぜ。」

リリィ「馬鹿、変態、死ねッ!」

アッシュ「…

…アイシスちゃんは?

ほっぺにチュー…」


アイシスは優しい笑顔で、手に持った鞭を床に叩きつけた。

鋭い音が辺りに響く。


アッシュ「…冗談です、すんません…」




そこへ、ザハークが現れた。

「お前達、何を勝手に出撃している?」

リリィ「やば…」

ゼル「…申し訳ありません。

私が独断で命じました。

全ての責任は私にあります。」

アッシュ「…あっ、でも、フォシルも何個か奪って来たんスよ。

ほら、リリィちゃん、出して出して!」


リリィがフォシルを差し出す。


「…ふむ、まぁ、よかろう…」

ザハークはフォシルを手にし、立ち去った。




「な〜にが 『私の命令』よ!

何様なの⁉︎

こんなんで貸し作ったなんて思わないでよね⁉︎」

そう言ってリリィが立ち去る。

アイシスは無言で礼をし、リリィの後を追った。










ウロボロス団アジト…


「…ラグナ君‼︎

…そんな…!」

石になったラグナを見て、ミシェルはその場に崩れ落ちた。


リン「…ごめん…ミシェルちゃん…」

シャールヴィ「…」

シグルズ「…何てこった…!」

ラン「…賢者様、元に戻す方法はないの?」

メリュジーヌ「…我が眷族、アスクレピオンの力ならば、治せるやもしれぬ…

だが、何処に眠っておるか定かではない…」

シグルズ「探すしかねぇか…」

メリュジーヌ「うむ。


ランには情報収集をしてもらいたい。」

ラン「わかったわ。」

メリュジーヌ「リンとシャールヴィはミシェルの護衛を頼む。」

シャールヴィ「…おう。」

リン「…わかった。」


かくして、各々が各々の役割を果たすべく動き出すが…


シャールヴィ「…護衛っても結局、留守番って事だよな。」

リン「仕方ないよ。

ウチら、ヘマしたんだもん…」

ミシェル「…ねぇ、リンちゃん、シャールヴィ君。」

リン「ほぇ?」

ミシェル「メリュジーヌさんは、"聖獣は竜を模倣して造られた"って言ってたよね…?

それなら、ラグナ君を治す力を持った聖獣も、居るんじゃないかしら…?」

シャールヴィ「…確かに…!」

ミシェル「…お願い、カーバンクル。

そんなお友達、居たら教えて?」


すると、カーバンクルは目を閉じ、淡い光を放った。

しばらくすると光は消え、今度は外への扉とミシェルの側を、繰り返し行ったり来たりしだす。


「…教えてくれるの?カーバンクル。


ねぇ、行っても良いかしら?」

ミシェルがそう言うと、リンとシャールヴィは顔を見合わせ、笑顔で答えた。


シャールヴィ「うん!」

リン「行こう!」

ミシェル「…ありがとう…!」










再び、グレゴリウス領・旧ヒノモト…


「…フォシルを手に入れた、か…

余計な真似をしおって、愚か者め…

私にとっては、右手で持っていた物を左手に持ち替えたに過ぎん。」

ザハークは1人呟き、玉座の間に赴く。




玉座の間…


ルーシェ「どうしたと言うのです?ケットシー。」

ルーシェに付き従う聖獣ケットシーが、落ち着き無く動き回っていた。

まるで、遥か遠く、カーバンクルに連動するかの如く…


ザハーク「…何か…もしや、聖獣や聖剣の気配を感じているのでは?」

ルーシェ「他にも聖獣や聖剣が存在しますの?」

ザハーク「古い文献によれば、王家で使用されていた聖獣や聖剣は、王族の始祖たるアグエルが造りし物の内、ごく一部に過ぎません。

世界には、数万年に渡り眠るアグエルの遺産が、まだ存在すると思われます。

それを、何らかのきっかけで感じ取ったのかも知れません。」

ルーシェ「…ならばケットシー、私をそこへ案内なさい。

禁忌の力で我らに抗おうとする輩が居るのならば、更なる力を手にして、これを凌駕せねばなりません。」










カーバンクルの導きにより、アグエル文明の遺跡に辿り着いたミシェル・リン・シャールヴィ。


ミシェル「…ここに聖獣が…?」


カーバンクルが遺跡の中に入って行き、ミシェルがそれについて行く。

リンとシャールヴィも遺跡に入ろうとしたが、突如入口の石像が動き出し、行く手を塞いだ。


シャールヴィ「うわッ、何だコレ⁉︎」

リン「待って、ミシェルちゃん!」


だが、応答が無い。

しばし途方に暮れていると、帝国のリリィとアイシスが現れた。


リリィ「…子供?

こんな所になんで…迷子かな?

でも、どっかで見たような…」

アイシス「…ムスペルヘイムで会った、ラグナ=ヴァルホルの仲間よ…」

リリィ「あ〜、そっか!


…!

ウチらの仲間も着いたみたいよ。

…って、ちょッ、アイシス⁉︎」


アイシスは無言でリン・シャールヴィの方に駆け出した。


シャールヴィ「…アイツら!」

リン「ウィザード!」

アイシス「…あなた達、隠れなさい…!」


そう言って、鞭でリンとシャールヴィを捕らえ、物陰に隠す。

そこへ、他の帝国兵達も到着した。


アッシュ「…あれ?

リリィちゃんとアイシスちゃん、先に着いてたんじゃないの?」


物陰から現れるリリィとアイシス。


リリィ「…つ、着いてるわよ。」

アッシュ「何してんの、ンな所で?」

アイシス「…何でもない…」


そこへルーシェとザハークが到着した。

入口を塞ぐ石像の前にケットシーを従えた

ルーシェが立つと、石像は再び動き、道を開ける。


ザハーク「…これがアグエル文明の叡智の片鱗…素晴らしい…!」


だが、ルーシェが通った後にザハークが続こうとすると、再び石像は動き出し道を塞いだ。


ザハーク「…なるほど、アグエルの末裔以外は通さぬという訳か…


お前達、破壊できるか?」

ゼル「やってみます。」


ゼル・アッシュ・リリィ・アイシスの4人は石像と戦いこれを破壊、帝国軍は遺跡内に入って行く。

アイシスは最後尾で、リンとシャールヴィの隠れている方に目をやった。




遺跡内部…


「侵入者ヲ確認、排除シマス。」

何者かがウィザード達を襲撃する。

メタモルフとは違う…そもそも生き物ですらなかった。

どうやら入口の石像同様、アグエルでない侵入者を排除する仕掛けの様だ。

ウィザード達は、これも破壊する。


アイシス「(あの子達も、きっとここに入って来る)…

先に行ってて…」

リリィ「全く…あんたってば、お人好しなんだから。

あたしが付いてないとダメね。」

アイシス「…ありがとう…」




アイシスの予想通り、リンとシャールヴィが遺跡内に潜入して来た。

するとやはりウィザード達と同様、襲撃を受ける。

そこへ加勢するリリィとアイシス。


リン「ど…どういうつもり?」

アイシス「…あなた達こそ、こんな所に何しに来たの…?」

リリィ「デートコースにしちゃ危ないわよ?」

シャールヴィ「違っ…!

…って、じゃあやっぱり早く探さないと!」

アイシス「…確か…ミシェルと言ったかしら?

あの子ならきっと大丈夫…」

リン「‼︎

…なんでそれを⁉︎」

アイシス「…やっぱり…

私達は、姫様の聖獣に導かれてここに来た…

他に、ここを知る事が出来る者が居るとすれば…」

リリィ「あの、姫様のそっくりさんか!

なるほどね〜♪」

アイシス「…ここは多分、アグエルの末裔だけを受け入れる様に出来てる…」

リリィ「けどさ、あの子って一体何者なワケ?」

リン「…それは、私達にも…ミシェルちゃん本人にもわからない…」

アイシス「…そう…


急ごう…

彼女が安全なのも、私達の仲間に見つかるまで…」


リン「…あの…なんであたし達を助けたの?」

アイシス「…あなた達の仲間、ラグナ=ヴァルホルはあの時、魔導師を救おうとして犠牲になった…

私達の末路も、あの魔導師と同じかも知れないから…」




一方その頃…


「ここに、ラグナ君を治す力を持った聖獣が…?」

ミシェルは敵に会う事無く、カーバンクルの導きで、奇妙な鳥の石像が祀られた祭壇に辿り着いた。

「これがその聖獣…?

でも、石だわ…どうすれば…」


そこへ、ケットシーに導かれてルーシェも辿り着く。


ルーシェ「…誰かと思えば…

ミシェル…と言いましたかしら?」

ミシェル「…⁉︎

あなたは…ルーシェ姫…!」

ルーシェ「どうやってここに…もしや、その聖獣の様な生き物に導かれて…?

あなたは一体何者なのです?」

ミシェル「…私が何者なのか…私も知りたい…

でも…今はそれ以上に、この聖獣の力が必要なんです!」

ルーシェ「…あいにくですが、その封印を解けるのは、これだけですわ。」


ルーシェはそう言って聖剣をかざした。

すると石像に亀裂が走り、その亀裂から光が漏れ出す。


ミシェル「お願い!

ラグナ君を助ける為に、その子の力が必要なの…!」

ルーシェ「⁉︎

…ラグナ=ヴァルホルに何か?」

ミシェル「メタモルフに…石に変えられてしまったの…」

ルーシェ「…‼︎

…そう…

…ですが、ヴァルホルは敵国の人間ですわ…!」


ルーシェはそう言って聖獣の封印を解き放ったが、良心が痛み、迷いが生じていた。

聖獣の像は砕け散って光の粒子となったが、ケットシーではなく、カーバンクルの方に集まり吸収されていく。


ミシェル「…これは…⁉︎」

ルーシェ「ど、どういう事ですの⁉︎

聖獣があなたを主に選んだとでも…⁉︎」


そこへウィザードが2人現れ、武器を構えた。


ルーシェ「…オロバスに…ゴモリー?

この者は民間人、手出しは無用ですわ。」


だが、そのまま近付いて来る。

無言で…いや、言葉とも呻きともつかない声を、ブツブツと発しながら…


ミシェル「…?

様子がおかしいわ…!」

ルーシェ「…これは…メタモルフになる前兆…

だからあれほど魔法は控えよと言いましたのに…!」


2人は剣を抜いた。


ルーシェ「…貴方に殺せますの?

あの者達は恐らくもう助かりませんが、それでもまだ姿形は人間のままですわよ?」

ミシェル「…私は生きてラグナ君の元に帰らなきゃいけない…

何人の知らない人より、私、ラグナ君1人の命が大事…!

そんな事言ったら怒られちゃうかしら?」

ルーシェ「…

顔や能力が似ていても、やはり貴方に女王は相応しくありませんわね。

…でも、ああなった者達を弔って差し上げるのも、女王の役目ですわ。」


2人の共闘の末、ウィザード達はメタモルフと化した。


リン「ミシェルちゃん!」

シャールヴィ「ミシェル姐!」

リリィ・アイシス「姫様!」


そこへ駆け付けた4人が加勢し、メタモルフを倒す。


ルーシェ「…私以外の主を選ぶ聖獣など必要ありません。

連れて行くがよろしいですわ。


…きっと、貴方の強い想いに応えたのですわね…大事になさい。」

ミシェル「…ありがとう…!」


かくしてミシェルは、病を喰らう霊鳥・カラドリウスの力を手に入れ、リン・シャールヴィと共にアジトに帰還する。






続く…

著作者の他の作品

世界の覇権を取り戻すべく再興を目論むグレゴリウス帝国と、人や獣が凶暴化す...

世界の全てを手に入れるはずだった姫は、3歳の時、全てを失った。革命と言う...