魔導姫戦記

ウロボロス団
@ouroboros_dan

哀しき魔女

「皆さんこんにちは。

世界のニュースをお伝えするアルキュオネ情報局です。


さて、先日のアースガルド紛争における魔導師達の活躍を受けまして、世界各国では、魔法の力の軍事利用が注目されています。」




グレゴリウス領・旧ヒノモト…


「馬鹿野郎が!

まだバケモノを増やしてぇのか⁉︎」

放送を伝える伝話鳥アルキュオネにアッシュが怒鳴る。


「呪われし宿命…

背負うのは私達だけでいい。」

ゼルは静かに呟いて立ち上がった。











アースガルド官邸・議長室…


アリハマ博士「君の思惑通りに事は運んでいる様だね。」

オーディン「…まるで私1人の一存であるかの様な物言いだな。」

アリハマ博士「ククク…

私は研究と実験さえ出来れば良いからね。」

オーディン「利害は一致するだろう?」

アリハマ博士「まぁね。

では行ってくるよ、ムスペルヘイム国に。」











ウロボロス団アジト…


ラン「ムスペルヘイム国でフォシルが発掘されたみたいよ。」


それは伝話鳥アルキュオネから得た情報らしい。


メリュジーヌ「ふむ…今の風潮では、国家の手に落ちれば、魔導師の量産は必至であろうな。」

ラグナ「そんな…!

止めないと!」

メリュジーヌ「ならば、先んじて奪うより他あるまい。」

シャールヴィ「おっ⁉︎

オイラ達新メンバーにゃ初仕事だな!」

リン「ドジんないでよ?」

シャールヴィ「そっちこそ!」

ラン「はいはい、イチャイチャしない!


聖獣絡みでないなら、ミシェルは留守番してた方がいいね。

敵がここを嗅ぎ付けないとも限らないから、あたしも残るよ。」

ミシェル「…わかりました。

皆さん、お気をつけて…!」




アジトを出て、翼竜の姿となったメリュジーヌの背に乗り飛び立つ。











ムスペルヘイム国…


南方に位置し、ヨトゥンヘイム同様、巨人の末裔が住民の多くを占める国家である。


人目を避け、都市部から離れた場所に降り立った。

フォシル採掘場まで陸路を、メタモルフを討伐しながら進む。










一方その頃、ゼル・アッシュらウィザード達が、一足先に採掘場に辿り着いていた。

警備するムスペルヘイム兵を倒し、洞窟内に潜入する。

内部は迷路の様に入り組んでおり、ウィザード達は複数のチームに分かれて探索する。




一足遅れてラグナ達も採掘場に辿り着いた。


シャールヴィ「何だこりゃ?」

メリュジーヌ「先客が居るようだな。」

シグルズ「…屈強な巨人の兵士が、ロクに抵抗した痕跡も無く倒されている…

帝国のウィザードか…?」




採掘場最深部…


技術支援の為派遣されたアリハマ博士によって、魔道士が造られていた。


アリハマ博士「…ふむ。

このサイズの結晶では、何人も魔導師になれないねぇ…」

ムスペルヘイム兵「洞窟内には未だ発掘途中の鉱脈もありますので…」


そこへ、伝令が入った。


ムスペルヘイム兵「…何、侵入者⁉︎

ウィザードだと⁉︎」

アリハマ博士「⁉︎

…(妙だな、ウィザードが何故ここに?)…」

魔導師「面白い…

魔法の力…早速試してくれる。」




洞窟内に潜入したラグナ達一行…


メリュジーヌ「フォシルの気配は複数ある…

杞憂だが、手分けせねばなるまい。」

シグルズ「戦力を均等に分散すんなら、俺とメリュジーヌは単独。

お前らは3人1組ってとこだろうな。」

リン「えぇ〜、コイツとぉ〜⁉︎」

シャールヴィ「こっちのセリフだ!」

ラグナ「まぁまぁ…


それで行きましょう。」




かくして、3チームに分かれて探索する。


1人奥へと進んだシグルズは、ゼル・アッシュと遭遇した。


シグルズ「よぅ、こんな所で会うたぁ奇遇だねぇ。」

アッシュ「ふざけ…

ゼル「言ったはずだ、次は殺すと…!」


だが、圧倒的な実力差が短期間で埋まるはずもなく、ゼルは片膝をつく。


「侵入者発見!」

そこへムスペルヘイム兵が現れ、3人は奇しくも共闘する事になった。


アッシュ「騒ぎになっちまった…

シグルズさん、ここはひとまず停戦して、脱出する事を提案する。」

ゼル「…アッシュ、貴様…!」

アッシュ「元々お前のせいだぜ。

それに、これは上からの任務じゃない、俺達の独断行動だしな。」

シグルズ「俺は構わねぇよ。」


共闘するも、ゼルは殺気立っている。

アッシュは空気を和ませようと雑談する。


アッシュ「なぁ、シグルズさんよ。

あんた、何だって、こんな所に忍び込んでんの?

アースガルドとムスペルヘイムって、同盟国じゃなかったっけ?」

シグルズ「俺はもう軍人でも貴族でもねぇ、トレジャーハンターだぜ。

目的はあんたらと一緒なんじゃねぇかな?」

ゼル「…フォシルか…それ程の実力があって尚、力を欲するのか?」

シグルズ「まさか、逆だよ。

魔法なんぞに頼って弱くなった人間の世界なんざ、見たくないのさ。」

ゼル「…貴様…!

アッシュ「まぁまぁ…

俺らだって魔法なんざ欲しくなかったさ。

でも、だからかな?

自分達の贅沢の為に、俺らにこんな呪いを押し付けた連中に、この力で復讐する…

その為に集まったのがウィザードなのさ。」

シグルズ「…ふーん…」


3人は採掘場を脱出した。

結果として、この行動が他のチームにとって陽動効果を発揮する。


ゼル「…次はこうは行かん。」

シグルズ「期待してるぜ。」

アッシュ「俺は出来れば会いたくないよ…」

シグルズ「ま、達者でな。」




ラグナ・リン・シャールヴィは衛兵の姿を見つけ、物陰で息を潜めていた。


そこへ、商人らしき者が訪れる。

手には鎖を持ち、その先には拘束された貧困層と思しき人々が繋がれていた。


「まいどあり。」

商人はそう言うと、繋がれた人々を兵士に引き渡した。

どうやら奴隷商人のようだ。


「こンの、人でなし!」

シャールヴィは怒りに駆られ飛び出し、商人を殴りつけて気絶させた。


リン「あッ、バカ!」

兵士「何だ、お前達は⁉︎」

ラグナ「まずい!」


すかさず兵士を倒し黙らせる。


リン「あんたねぇ…!

騒ぎにでもなったら、フォシル探しどころじゃなくなるんだよ⁉︎

そしたら、メタモルフにされる人はもっと増えるの、わかる⁉︎」

ラグナ「…リン。

シャールヴィは妹さんを魔導師にされかけた事があるんだ。

そしてその時、魔導師の末路…人がメタモルフになる瞬間を見た…

彼の怒りは、魔導師にされそうな人を思いやっての事なんだ。

許してあげて欲しい…」

シャールヴィ「ラグ兄…」


リンにもその気持ちはわかるのだろう。

気まずさを感じたのか、無言になった。


「…あ!

これ、使えるんじゃないか?」

ラグナは、その場の空気を払うように言うと、気絶している奴隷商人から服を奪って自ら着る。


リン「なるほど!

って…じゃあ、あたし達は奴隷約⁉︎」

ラグナ「頼むよ。

これで、怪しまれずに探索できる。」

シャールヴィ「怪我の功名だな!」

リン「あんたが言うな!」




奴隷商人と奴隷に扮して探索していると、交戦中の帝国兵とムスペルヘイム兵に出くわした。

帝国側は女が2人、ムスペルヘイム側は複数の兵と、リーダーらしき女魔導師が1人。


帝国兵「魔法なんか使んなくても楽勝だね、アイシス♪」

アイシス「…油断は禁物よ…リリィ…」


ムスペルヘイムの女魔導師は魔法を乱発するが、軽くあしらわれ、息が上がっている。


ムスペルヘイム兵「だ…大丈夫ですか、メデューサ様?」

メデューサ「黙れ…私は無傷だ…!」

ムスペルヘイム兵「し…しかし、顔色が…」


アイシス「…あの魔導師、もしかして…前兆…?

私達と同じ呪われた宿命を、これ以上誰にも背負わせない…その為にここに来たのに…」

リリィ「あのコは多分、もう手遅れだよ。

それならいっそ、目の前で見せてあげた方がわかりやすいんじゃない?

魔法を使うって事の怖さが…」

アイシス「…仕方ない…」


その様子を見ていたラグナは直感した。

ムスペルヘイムの女魔導師はメタモルフになると…


ラグナ「…リン、ごめん。

シャールヴィを頼む。」

リン「!」


ラグナは両軍の間に割って入り、叫んだ。

「もう、止めるんだ!」

リリィ「?

あんた、どっかで…

奴隷商人の知り合いなんか居る訳ないんだけど…?」

アイシス「…知ってる…

ヒノモトで捕まえた、ヴァルホル家の…ラグナ…」

リリィ「あぁ!

…って、なんでヴァルホル家のボンボンが、そんなカッコでこんなトコに居るワケ?」

メデューサ「ヴァルホル家…?

アースガルドの者が、何故邪魔をする?」


ラグナはメデューサに向かって訴える。

「貴女はもう魔法を使っては駄目だ!

メタモルフになってしまう!」

メデューサ「…メタモルフになるだと?

何を馬鹿な事を…」

ラグナ「本当なんだ!

僕は魔導師がメタモルフになる瞬間をこの目で見た!

それを父に訴えても聞き入れられなかったから、袂を別って来たんだ!」


アイシス「…敵の注意が逸れた…

…私達の目的は戦闘じゃなくて、フォシルの奪取…」

リリィ「グッジョブ、ヴァルホル家のお坊ちゃん♪」

メデューサ「…‼︎

逃がさん!」

ラグナ「やめろッ‼︎」


魔法を発動すべく念じるメデューサの身体が光を放つ。

いや、光が弾けたと言うべきか…




光の中、メデューサは2人の幼女の姿を見出し、語りかけた。

「良い子で待ってるのよ、ステノー、エウリュアレ…

お姉ちゃんが、美味しい御飯を食べさせてあげるからね…

綺麗なお洋服も買ってあげる…

でも、ちゃんと勉強もしなきゃダメよ?

暖かいお布団も…」


次の瞬間、暗転し、男の声が響く。


「この石を握り念じる…たったそれだけで二階級特進だ。

妹達に楽な暮らしをさせてやりたいんだろう?」




ラグナ「…何だ、今のは…?」


魔法は不発に終わり、代わりにその場に居る者達に幻影を見せた。

メデューサは気を失っている。


アイシス「…彼女が軍人に…魔導師になった理由…?」

リリィ「…可哀想だけど、タイムリミットよ。」


2人はそう言うと、それぞれの武器をメデューサに向けて構えた。


ラグナ「…⁉︎

待って!」

リリィ「どいて、そのコはもう手遅れよ。」

アイシス「…ラグナ=ヴァルホル、どかなければ、もうあの時のように貴方を見逃す理由は無い…」


シャールヴィ「もう限界だ、オイラは行くぜ!」

リン「しょーがない、癪だけど、あんたに同意!」


ラグナの危機に2人が飛び出そうとした瞬間、ラグナは背後から魔法攻撃を浴びた。

メデューサだ。

正気を失い、敵味方の見境なく魔法を放っている。

それを浴びた者達の身体は、徐々に石に変わっていった。


ラグナ「…な、何だ、こ…れ…⁉︎」

シャールヴィ「ラグ兄‼︎」

リリィ「あーあ…言わんこっちゃない。」

アイシス「…メタモルフは、駆除…」


リン・シャールヴィとウィザードの2人は図らずも、共闘してメタモルフ化したメデューサを倒す事となる。


戦いが終わった時、ラグナは完全に石化していた。


シャールヴィ「…ラグ兄、ラグ兄‼︎」

リン「…そんな…」




一方その頃…


難無くフォシルに辿り着いたメリュジーヌ。

「忌まわしきアグエル文明により封印されし我が眷族よ…

その戒めを今、解き放たん。」


フォシルは砕け散って光の粒子となり、半人半竜の女の姿を形作った。


メリュジーヌ「エキドナ…我と同様、人に擬態せし竜か…

既に大分魔力を吸い取られた様だな。

もはや戦うまでもない。」


「美しい…」


突如、背後から声がした。

ムスペルヘイム兵だ。

エキドナは光の粒子となってメリュジーヌに吸収される。


ムスペルヘイム兵「今のは一体何だ⁉︎

フォシルを何処へやった⁉︎」

メリュジーヌ「…汝か、我が眷族より魔力を得たのは。

残りは返してもらった。」

ムスペルヘイム兵「訳のわからん事を…

ガキのオモチャじゃないんだぞ⁉︎」

メリュジーヌ「誠その通り、汝が如き幼き者の手には余る代物よ。」


メリュジーヌの圧倒的な力を前に、ムスペルヘイム兵・テュフォンは魔法を乱発し、メタモルフ化する。


メリュジーヌ「クク…その姿、まるでエキドナだな。」


しかし、それでもメリュジーヌの敵ではなかった。

そこへ、伝話鳥アルキュオネを通じて連絡が入る。


メリュジーヌ「…リンか、どうした?」

リン「賢者様、大変なの!

ラグナが…ラグナがメタモルフに、石にされちゃった!」

メリュジーヌ「…何だと?

ともかく、すぐ合流しよう。」






続く…

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