魔導姫戦記

ウロボロス団
@ouroboros_dan

開戦

「反逆者達が革命と偽って起こした戦乱によって…

また、その後の世界に蔓延るメタモルフによって…

家族を、愛する者を奪われし者達よ!


そして、おぞましき実験によって、メタモルフと化す宿命を背負わされし者達よ!


今こそ復讐の時である!

悲しみと絶望を怒りに変えて、偽りの革命家達に知らしめようぞ!」


ルーシェの演説に、帝国兵達が歓声を上げた。










一方その頃…


ミシェルの道案内で、ラン・リンのアジトを目指すラグナ達。

帝国の動向など知る由もなく、目的地に辿り着く頃には、情勢は大きく動いていた。




ラン・リンのアジト…


ラン「シッ、誰か来る!」


アジトに近づく気配に気付き、素早く入口の扉の横に移動し、身構える2人。


リン「⁉︎(賢者様じゃないの?)」

ラン「(賢者様なら伝話鳥アルキュオネに連絡あるはずよ。)」


ドアをノックする音がした。


ミシェル「ランさん、リンさん、いらっしゃいますか?

ミシェルです。」

リン「ミシェルちゃん⁉︎」


ほっ…と緊張感を解き、ドアを開ける。


リン「心配してたんだよ。

大変だったね。」


あの後ミシェル達の身に起きた事を、2人は知らないはずだが…

どう言う事だ?


ラン「…逃げて来たにしてはタイミングが早いわね…

もしかして、あんた達の国で何が起きてるか…知らない?」

ラグナ「僕らの国って…

アースガルドで何か?」

リン「えぇ〜⁉︎

大変な事になってるんだよ?」


そう言うと、伝話鳥アルキュオネに合図した。

「皆さんこんにちは。

世界のニュースをお伝えするアルキュオネ情報局です。


さて、グレゴリウス帝国を名乗る武装集団によるアースガルドへの攻撃ですが、アースガルド騎士団の奮闘により、依然膠着状態が続いており…」


ラグナ「何だって⁉︎」

ラン「…聴いての通り、あんた達の国は今や戦場なのよ?」

ラグナ「そんな…くっ!」


ラグナは矢も盾もたまらずアースガルドに戻ろうとした。


ラン「待ちなよ!

今更戻ったってどんだけ時間かかるか、ここまで歩いて来たならわかるでしょ?」

ラグナ「でも…‼︎」


不安と焦りで苛立ちを隠せないラグナ。


リン「歩いて遅いんなら、飛べばいいじゃん♪」

シャールヴィ「飛ぶ?」

ミシェル「それって、もしかして…」


その時、伝話鳥アルキュオネが鳴き出す。


ラン「ナイスタイミングだよ、賢者様。

ちょっとお客さんをアースガルドまで連れて行って欲しいんだ。

…マジ⁉︎

…それなら丁度良かった。


ラグナ、アースガルドに連れてったげるよ。

アンタにとっては心強い味方も一緒にね。」

ラグナ「…心強い味方?」

ラン「おいで。」


アジトの洞窟の外に出ると、ドラゴンが舞い降りた。


シャールヴィ「何だアレ⁉︎

メタモルフ?…の背に…え?シグルズ⁉︎」

ラグナ「シグルズさん‼︎」


そう、ドラゴンの背にはシグルズが乗っていた。


シグルズ「コイツはメタモルフじゃねぇぜ、シャールヴィ。

ドラゴンだ。」

シャールヴィ「うはー、スゲェ!」

ラグナ「シグルズさん、無事だったんですね‼︎」

シグルズ「あたりめーだ、俺様は不死身よ。

お前も、ちょっと見ない間に逞しくなったな、ラグナ。」

ラン「はいはい、再会を喜ぶのも良いけど、大事な事を忘れてない?」

ラグナ「そうだ、シグルズさん!

アースガルドが大変なんです!」

シグルズ「あぁ、わかってる。

メリュジーヌ、頼むぜ。」


シグルズの言葉にドラゴンが頷く。


ラン「言っとくけど、アタシらは戦争に加担する訳にゃいかないから、運んであげるだけだからね。」

シグルズ「わかってるよ。」

ラグナ「ミシェルさんの事、お願い出来ますか?」

リン「任せて♪」

シャールヴィ「オイラは一緒に行くぜ!」

ミシェル「皆さん、気を付けて…

無事に帰って来てください!」

ラグナ「えぇ、行って来ます!」


ラグナ・シグルズ・シャールヴィは竜の背に乗り、アースガルドに向けて飛び立った。




アースガルド領空…


聖獣だろうか?

巨大な猛禽に乗った帝国兵の一団と遭遇する。


帝国兵「な…何だ、その生き物は⁉︎」

シグルズ「お前らこそ、そりゃ何だよ?」

帝国兵「むぅ…何者だろうと、友軍でなければ排除するまで!」

メリュジーヌ「やれやれ…

我は戦には加担せぬのだが…

降りかかる火の粉は払わねばなるまい。」


帝国兵を倒し、地上に降りると、メリュジーヌは竜から幼女の姿へと変わった。


シャールヴィ「うわっ、人間になった⁉︎」

メリュジーヌ「力と姿を封印したのじゃ、目立つからの。

我の役目はこれまでじゃ。」

シグルズ「あぁ、ありがとよ。」

メリュジーヌ「心して行くがよい。」




帝国軍による地上からの攻撃は、アースガルド騎士団の活躍により、未だ膠着状態にあった。

だが、聖獣らしき猛禽による上空からの攻撃により、官邸は直接攻撃に晒されている。


ラグナ「官邸には父さんが居るはず…!」


確執があれど実の父…

オーディンの身を案じ、焦るラグナ。


シグルズ「心配すんな。

そう簡単にくたばりゃしねぇよ、あのタヌキ親父は。」


帝国兵達を薙ぎ払い、街の入口に辿り着く。


アースガルド騎士「ご無事でしたか、シグルズ殿!

ここは我々が食い止めますので、官邸の方を頼みます!」

シグルズ「あぁ、任せろ!」










官邸上空…


アースガルド騎士団の抵抗は激しく、帝国の近衛兵団は攻めあぐねていた。


近衛兵「止むを得ん、アッシュ。

私が魔法攻撃で活路を開く。」

アッシュ「いいのか?ゼル。

土壇場まで魔法は御法度だろ?」

ゼル「今がその土壇場だ。」

アッシュ「やれやれ…長生きできねーぞ?」


ゼルが念じると剣先から巨大な火球が生み出され、アースガルド騎士団も怯んだ。

その時である。

近衛兵達の背後から高圧の水流が放たれた。

それは、アースガルド騎士団を押し流し、

もろともに火球も消し去る。

それは、ルーシェの召喚魔法・ウンディーネによるものだった。


ルーシェ「魔法は控えよと言ったはずですわよ?」

ゼル「姫様⁉︎

前線に出られては危険です!」

ルーシェ「ならば全力で私を守りなさい。

故にまだ、メタモルフと化す事は許しません。」

ゼル「…はっ!」




官邸屋上に降り立ったルーシェと近衛兵達。


ルーシェ「ここの何処かに、父の仇が居りますのね…?」




官邸の議長室を目前にしたラグナ達。

そこに、屋上への階段から大量の水と共に騎士達が流されて来た。


騎士「…くっ、不覚!

すまん、シグルズ殿、屋上に帝国軍が…」

シグルズ「あぁ、任せろ!


ラグナ、お前は親父ンとこに行ってやれ。」


ラグナ「で、でも…!」

シャールヴィ「オイラ達なら大丈夫さ!」


そう言うと、シグルズとシャールヴィは階段を登って行った。


「くっ…父さん!」

議長室に入るラグナ。


「…⁉︎

ラグナ、何故ここに?

…例の娘はどうした?」

この状況の中、オーディンは冷静だった。


ラグナ「そんな事より帝国が…!」

オーディン「案ずる事は無い。

手は打ってある。」


オーディンは、不敵な笑みを浮かべて窓の外を眺めた。




一方、屋上では帝国軍とシグルズ・シャールヴィが対峙していた。


シグルズ「あれが帝国の姫様かぁ…

確かにミシェルに似てんなぁ。」

シャールヴィ「だろ?」


アッシュ「ガキは頭数に入らねぇ…

1人で何余裕こいてやがる。」

シグルズ「俺様はシグルズ=ヴォルスング。

名前ぐらい聞いた事あんだろ?

まとめてかかって来ていいぜ。」

ゼル「噂に名高い革命戦の英雄か…

いずれにせよ、多勢に無勢というのは好かん。

グレゴリウス帝国軍・近衛魔導兵団ウィザード所属、ゼル=べールがお相手仕る。」

シグルズ「タイマンか…良い心がけだ。

その名前、覚えといてやる。」




ゼルの右腕によって描かれる無数の剣閃。

巨大な両手剣で受けるシグルズは、はた目には防戦一方に見えた。

だが、より重量のある剣で全ての剣撃を受け止める…それはすなわち、より重い剣を同じ速さで振るう事が出来るという事だ。


シグルズ「なかなかやるねぇ…

じゃあ、今度はこっちの番だぜ。」


シグルズの剣撃を全て受け止めるゼル。

それは先程と同じ事…では全く無い。

一撃一撃から受ける衝撃の重さがまるで違う。

たまらずゼルは間合いを取る。


ゼル「くっ…英雄の二つ名は伊達じゃないな…

ならば…!」

ルーシェ「…⁉︎

お止めなさい、ゼル‼︎」


姫の言葉も聞かず、ゼルは念じて剣先から生み出した火球を放った。

「焼き尽くせ、レーヴァテイン!」


「魔法ってやつか…

食らわなきゃどうって事ねぇぜ。」

シグルズは、自分に向かって飛んで来る火球めがけて走り、大剣を振る風圧でそれを斬り払った。

そのまま一気に間合いを詰める。

シグルズの強烈な一撃に、ゼルは受け止めた剣ごと弾き飛ばされた。


シグルズ「飛び道具なんぞに頼ってちゃ、剣が鈍るぜ。」

ゼル「…くっ!」


その時、帝国軍が連れていた伝話鳥アルキュオネが、大声で喋り出した。

「こちら地上部隊のザハーク!

敵が魔導師の大部隊を投入して来た!

このままでは囲まれる!

全軍撤退せよ!」


アッシュ「魔導師だって?」

シグルズ「オーディンの野郎…

そう言う事か…!」

ルーシェ「…聞いての通りですわ。

皆さん、引きますわよ!」


ゼルは、悔しさと怒りの入り混じった視線でシグルズを睨み付けた。


シグルズ「また会おうぜ、ゼル。」

レオン「シグルズ…次は…殺す…!」


そう言い残し、巨大な猛禽に乗って、他の帝国兵達と共に撤退する。




議長室…


ラグナ「…ま、魔導師部隊…だって…⁉︎

…父さん!

僕は、魔導師がメタモルフになるのをこの目で見たんだ!」

オーディン「アリハマ博士の研究によれば、魔法とメタモルフの因果関係は無い。

それは偶然だ。」

ラグナ「じゃあ、なんで貴族は魔導師になっちゃいけないんですか⁉︎

危険だから差別してるんじゃないんですか?」

オーディン「…

…そんな事より、例の娘は何処だ?」

ラグナ「…僕の質問に…答えろッ‼︎」


怒りに任せて、これまでに無い口調が出る。


オーディン「…聞き分けの無い子供ならば仕方ない…」


そう言うと、兵士が2人議長室に入室し、ラグナを捕らえようとした。

その時である。


「漢ってのは、親父に逆らって成長するもんだよな。

ラグナ君の成長に協力しようじゃないの。」

そう言って、兵士達を一撃で気絶させたシグルズ。


「…シグルズ、貴様…!」

オーディンの怒りの表情は、シグルズ以外のその場に居る全員が、戦慄を覚える程のものだった。


シグルズ「反抗期の少年は家出する…

許されない恋なら駆け落ちするのが定石だろ。」

シャールヴィ「行こう、ラグ兄!」


ラグナは何も言わずオーディンを睨み、その場を去った。






続く…

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