迷い道 SSまとめ

沙羅/和葉@年1ディズニー
@aobiyori_sara

加宮班 序章1-1『一人桃太郎』


 自分の班に潜り込んでいた鬼を幕府の命令で二人斬り殺してから、加宮融(かみやとおる)は、班員集めに難儀していた。

 幕府に薦められて加入する者、加宮が誘ってみた者、自ら名乗りを上げて来た者。

 一通り加入させて仕事をしてみたが、どれもこれも長く続かない者達ばかりだった。

 そのうち、長いこと班にいた者も、退職すると言って出ていってしまった。

 そんな状況がもう何ヵ月も続いて、そろそろ上から暇を出されても可笑しくないところまで来てしまった、風もすっかり冷えきった師走。

 次の班結成が、自分の将来への分岐点となるだろう。

 ゆっくり考えたいからと少し長めの休暇をもらい、久方ぶりに討伐組の詰所へ顔を出すと、長い付き合いの友人に早速見つかった。

 潮(うしお)という名の男だ。

 腰まで伸びたうねりのある髪が、歩く度にゆらゆらと揺れている。

 着流しをゆったりと着こなし、胸元が開いて胸に巻くさらしが見えていた。

 寒くないのかと思いつつ、変わらない様子の友人に加宮は頬を緩める。

 男は加宮を視界に入れると、片手を上げていつもしているように挨拶をしてきた。


「よう!頭は休めたか?」


「小姫の夜泣きで余計頭が痛くなりそうだった」


「それでも可愛いなあって思いながらあやしてたんだろう?」


「……何でわかった?」


「そういう表情してる」


 雉組舐めんなよ。

 ニヤリと片方の口角を上げる友人に、加宮は苦い表情を見せた。

 長い付き合いなだけあって、表情筋の動きを見ただけで考えてることが読み取られる。

 少し下にある男の顔にそれを告げると「いやいや。単純にお前さんの表情が顔に出やすいだけだ」と、さらに笑われた。

 そんなに、表情に出やすいだろうか。

 思わず、口元を隠すように手を置く。


「ほれ、そういうところだ」


「あ……」


 他愛もない会話を交わしながら、二人並んで庭に沿って作られた廊下を歩く。

 このまま歩いて行くと、詰所にある道場に辿り着く。

 肩を並べて歩く友が、「それで」と、話題を変えてきた。


「班員はどうするんだ。目をつけてる奴はいるのか」


「いや……。正直、どんな奴を選べばいいのかわからなくなってきている」


 道場に足を向けているのも、班員になりそうな奴はいないかと見に行くのが目的だ。

 見つけたついでに、手を合わせて見るのも良い。

 が、最近はその手合わせの段階で、こいつは無理だなと除外する事が増えてきた。

 今日はどうなることやら。

 重たい息を吐き出す加宮に、潮も同情に近い視線を向ける。


「まあ、何度も班員がかわればそうなるか」


「同情するなら、おすすめを教えてくれ」


「直ぐ抜刀するようなお前さんに付き合える奴だろう?うーん……いることには、いるな」


 加宮は潮の言葉を聞き、ピタリと足を止める。

 一瞬遅れて潮も足を止め、加宮を見た。


「……いるのか?」


「いる。少なくとも、雉組にはな」





「ほら、あそこにいる奴」


 道場の扉から中を覗きつつ、潮が隅にいる男を指差す。

 黒い髪を肩につくか、それよりも少々長いかという長さまで伸ばし、前髪を加宮と同じように二つに分けた男だ。

 稽古用の槍を、思案顔で手入れしている。

 一見、物分かりの良さそうな顔立ちをしているが、そんな生易しい男ではないのだと、潮は笑った。


「立てる作戦がことごとく厳しい奴でな。あんな作戦だと鬼より班が先に潰れるってんで、どこにも拾われてないのよ。ま、本人がやりがいのある班がないっつって、断ってる所もあるみたいだが……どうする?班長さん」


 友人の視線が道場の中から、加宮に移される。

 加宮の判断を楽しむような視線だ。

 飼うのに難儀する友を想像をしているのだろう。

 普通の奴ならもう少しましな奴をと別の人間にあたるだろうが、この加宮という男は違った。

 腕を組み、しばらく目を閉じて思案したあと「面白い」と呟いて、目を開いた。


「飼われてないなら、その雉俺が飼おう」


「言うと思った。で、他の面子はどうする?お前とあの雉についてこれるような奴を探さないとだぞ」


「その辺りは、私よりも顔の広いお前に任せる」


「変人でいいか?」


「ああ。……骨太で頼む」


 口角をつり上げて加宮は答えると、踵を返し道場をあとにした。





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#rtした人を自分の世界観でキャラ化するツイッターでやった企画です。