人間嫌いと桔梗と

1 主さま、口が悪いですよ!

初めまして。私、桔梗と申します。とある本丸の主さまの守り刀をさせて頂いてます。

その主さまと言うのが人間嫌いで変わり者とこの業界ではとても有名な方なのです。あぁ、この世界では珍しい刀剣女士を所有していると言うことも1つの理由なのでしょう。


その主さまはただいま、お客様のお相手をされています。


「………と言うわけで、私はその刀剣女士である桔梗を譲り受けたいと思っています。もちろんタダでとは言いません、六花さまの言い値で……」


中年の男が20くらいの女性にぺこぺこと頭を下げながら話す姿はなんとも情けない。そして 、話を持ちかけられている当の主は男の方を一切見ていない。

見ていないと言うより、男の後ろに近侍として座っている刀を見ている。かと思いきや、無表情の顔が私に向けられる。


六「桔梗、あなたはどうしたい?」


桔「主さま、分かってるくせに…私の主はあなたが最初で最後ですよ。」


六「本人がこう申していますので、お引き取り下さい。」


桔(!あの主さまが丁寧に断るなんて……今日は槍でも降るのかしら…)


バンッッ


外の天気が気になって、障子の外を眺めていると突然男の態度が豹変した。


「人が下手に出てりゃ、いい気になりやがって!」


男は怒鳴ると、立ち上がった。それでも主はお茶を啜りながら何喰わぬ顔をしている。それがさらに男の怒りに油を注いでしまった。


「もう、いい。話し合いでできれば穏便に済ませたかったが……加州、殺れ。」


今まで男の後ろで空気のように座っていた刀が、男の声に反応して途端に怯えだした。


加「で、でも…主。おれ…」


「ぐだぐだ、うるせぇ!この本丸は刀剣の数が少ない上、今、戦力になる奴らは遠征に行ってる。女1人どうとでもなる……それともお前、これがどうなってもいいのか?」


男は自分の腰に挿した刀を加州に見せつける。


桔(…なるほど。計画的な犯行のようですね。しかも、あの腰の刀…)


どこか他人事のように事態を眺めていると、今までお茶を啜っていた主がすっと立ち上がった。そして…


ガンツツツ


六「うるさい!」


足元に、相手からはテーブルの下に隠れて見えていなかっただろう釘バットで殴った。そう、躊躇なく、容赦なく……


六「お前が、ぐだぐだうるさいんだよ!人の本丸内で!!お前の大事なもん千切り素揚げにして喰わせるぞ。」


桔「鬼ですか!!」


だいたい、怒るとこそこなんですか。とは誰も突っ込まない。突っ込むまともな奴は遠征に行っている。


加州は、いまだ自分の主がガツガツと殴られているところを目の当たりにして、今度は違う怯え方をしている。


加「え、あ、あるじ!!」


男への攻撃が終わったのは、顔がパンパンに腫れ上がったあとだった。


六「はぁ~、だいたい私が貴方の素性を知らないとでも?貴方が裏でやっていることも、刀剣男士達への処遇も……既に政府へ報告していますので、政府の人が来るまでおとなしくしていて下さいね。」


それだけ言うとまたお茶を飲み始めた。