からくり世界と銀鼠

かるぼなーら⊿ 妄想垢 logout
@AraPerfu_pink

#7 - 械姫編 -


 





朝7時。




ガンッという勢いで、目が覚めた。


文字通り、目が、あいた。まぶたが持ち上がった。





強制的に起こされる、というのはストレスレスで案外心地いいかもしれない。




確かに二度寝も幸せな時間だったけど…


寝坊で悩むことも遅刻で罪悪感に押しつぶされることもないし、

寝る前に怖くなってねれなくなることも、睡眠時間を計算する必要もない。


睡眠に関する悩みが一瞬で消えたようなものだ。幸せすぎる。










さて。



私は目覚めてから何をすべきか知らない。


コンピュータに聞いてみたけど答えてくれないので、わからない。





人間なら顔を洗ったり朝ごはんを食べたりするんだけど。



そしてどうやらそれはこの世界の人間も、データによると同様らしいけど。






残念ながら私にはヒューマノイド___ボーグ、だっけ?

としての記憶データは皆無なのだ。


是非とも未来のボーグの脳には、そのデータも入れてあげて欲しいものだ。








どうしたものか、と目をパチクリさせていると。






例の男性が、ドアを開けて部屋に入ってきた。








そういや、私はじめに目覚めてから一切場所を変えてないけど…


このガラスらしきものの中が私の住処なのかな。





え〜〜〜〜〜、なんかやだなあ。


必要はないんだろうけど、私だってベッドで寝たいよ。








すると男性 ____名前は、えっと…潤だよね?

が、口を開いた。








「おはようございます、彩乃」



「おはようございます、潤」





イケメンからの呼び捨ていただきました。





「あっ、名前当局に登録しておいたから。

 ちなみに君のIDは047389000です。

 彩乃で通じなかったらIDを名乗ること。

 でもこのあと属性が決まったらまた変わるから、その時はその時で。」





そのイケメンに、今度は一気にいろんな情報を言われる。






え〜〜〜っと?



知識プログラムに問い合わせを入れてみると…








まず、当局というのは械姫の情報を管理している役所らしい。

ボーグのデータも此処で管理されてるっぽい。


イメージ的には戸籍みたいな感じかな?



で、IDってのは、この国の機械とかをいじる時とかに入れなきゃいけない数字らしい。

まあマイナンバーだよね、要は。それか学校で言う学籍番号?

それがあらゆるもののログインにいる、と。


いや、めちゃくちゃ大事じゃん、それ。




そして、属性というのは……情報がない。


ので、潤に聞いてみる。




_____なるほど、これがボーグの思考方法なのね。だいぶ慣れてきた。









「属性、というのはなんですか?」




「ああ…そうか、まだ知らないよね」




「すみません」




「?いや、謝らなくていいよ」








あれ、此処で謝るのは変だったかな。



やっぱり、まだまだ感覚は人間だなあ。









「彩乃はね、まだ12時間おきに此処の親コンピュータに繋がないと制御がうまくいかない半完成状態だし、知識も最低限しか入ってない」





え?


こんなに入ってて、最低限なの?



めちゃくちゃ感動してたのに。





「特にボーグについてのことはあまり知識が入ってないはずだから、

 まずは新生のボーグたちにこれからのことを教える講習会に行きます。」





はあ…


なんかめっちゃ人間っぽいな、講習会って響き。





「わかりました」




「ということで…コード抜くね。僕についてきて」








そういうと潤は、私に繋がれた複数本のコードをぶちぶち抜いて、

一度も振り返らずにドアへ向かった。



私はその後頭部を眺めて、「綺麗な茶色だなあ」とか思いながら、潤のあとを追いかけた。













===












たどり着いたのは、床に大きく描かれた円がやたら白く発光していて、

それを丸く机とその前に配置されたベルトコンベアが囲む、

モダンな作りの会議室らしきところだった。

壁は不思議な凹凸をしていて、こちらもやたら青白い光を発している。




「彩乃、乗って」



片眉をクイッと上げながら潤がそういうのでベルトコンベアに乗ると、

ゆっくり潤とともに、移動した。


くるくる回って行き、だいたい120度回っただろうか、というところでベルトコンベアが静止する。






すると、背後からキュイーンという音がした。




「?」




なんの音だろう、と振り向いてみると、


壁の凹凸部分がパカ〜っと開いて、椅子が出現する。


その椅子がザザザと音を立てて、私のすぐ後ろにスライドしてきた。






なんだこれ。すげ〜〜、、!







「座っていいんですか?」




念のため潤に聞くと、




「そりゃあ、もちろん」




承諾をもらえた。




やったあ。










座ってみると、座り心地は……うん〜〜〜〜、、




硬いな(笑)





もっとその〜〜〜クッションとかつけるべきだと思うな?



まあ私ヒューマノイドだからいいけど。














しばらくして、私たちが入ってきたドアが開いて、二人の人影が現れた。



前方にいるのは、青いメッシュが所々入って、私のように白い服を着た男の子。

後方にいるのは、潤と同じ青い作業服を着込んで、奇抜なメイクをした30代くらいの女性。




一発でみてわかった。


彼らは私たちと同じ、新生のボーグとその管理者だ。





彼も私と同じように現実世界からきたのだろうか。


しかし見覚えはないし、どちらかといえば中国人っぽい顔つきなような気がする。

なら中国から来たのかな?









私がそんなことを考えている間に、




「蒼、乗って。」




潤が私に言ったように、女性が男の子にそう命じて、彼はベルトコンベアに乗った。


ベルトコンベアが回り、彼が私のいるところの90度くらいのところで止まる。




ちなみに私は椅子に座っていたので回らなかった。

なるほど、だから椅子は後から出てくるのか。





そして私の時同様に、キュイ〜ンという軽快な音を壁が鳴らし、椅子がスライディングされる。


私はそれを誇らしげな顔で見ていた、と思う。






「どうよ?驚くでしょ?」って、


やっぱり先に経験した身としてはどうしても思ってしまった。










だけど、彼はあまり驚いたそぶりは見せなかった。



ちょっと目が動揺するように動いていたくらいで、


表情は堅い。



あれ?












「えっと…あなたの名前は…」








普段えらいコミュ障の私だけど、なんとなく好奇心に駆られて聞いてみる。







男の子は答えない。








「蒼、だっけ?」





さっきわずかに聞いた名前を言ってみると、



後ろにいる女性を一瞬見てから、戸惑いつつも頷いた。









「そうです、このボーグの名前は蒼です」




女性が無表情でそう付け加える。



この人、金髪でかなり外人顔なのにめちゃくちゃ流暢な日本語

____じゃないか、械姫語?___話してて、

その時点で怖いのに、さっきから表情変わんなくて、


なんか、すごい怖いな……





「あなたは…?」





恐る恐る聞いてみると、







「有里(ゆり)」




そうボソッとつぶやかれた。





こ、こわ……








怯えていると、潤が耳打ちをして来る。




「前にボーグを人間扱いしない管理官がいるって話したよね」



「は、はい」



「彼女そのタイプだから。ごめん気をつけて」



「はあ…わかりました」




なるほど。



確かに前、人間としての誇りがどうのこうのって話してた。

4話だったかな?

覚えてない読者さんはぜひ、遡って読んでみてね。








そうとわかったら、彼らに話しかけるのは無し。



私はもともとそんなに人と積極的に絡むタイプじゃない。


話すのは好きだけど、怖い人と話すのは嫌いだ。


怖い人と親しくなるほどのコミュ力は、私にはない。






だけど、沈黙は沈黙で退屈だ。


ゲームとかありゃいいんだけどな。





この体は、セルフインターネットだし、睡眠の悩みも解消されたし、めちゃくちゃ便利だけど、


どうせならセルフゲームもつけるべきだったと思うな。うん。絶対楽しい。













とか考えてると、またドアが開いた。




そこにはまた、二人の人影。



でも今度は、ボーグとその管理者、というペアではなく、

白髪まみれのおじさんが二人だった。



反射的に偉い人だとわかる。









「彩乃、蒼、だったな」



「はい」



「…はい」


_____こちらの返事はもちろん蒼。




「私は管理官長である尊(みこと)、彼は副長である猛(たける)だ。以後お見知り置きを。

 では、これにて新生ボーグ講習会を開始する。把握漏れのないように」






やたら低くて荘厳な声を響かせながら、おじさんはそう宣言した。