からくり世界と銀鼠

かるぼなーら⊿ 妄想垢 logout
@AraPerfu_pink

#2 - 序章 -








立った彼は、今度は柵の近くに紙を置いて、柵にもたれかかるようにして座った。



おちょくりたくて立ち去るふりをしただけかと思った私は、

ほんの少しだけど心に外傷を負う。





…まあ、いいけどさ。









私は、ゲームの続きに戻る。









今やってるゲームは、有名なRPGだ。

やっぱりどんなものでも王道というのは、王道なるべくしてなったのだなって思える素晴らしさがある。


このゲームに関して言うと、

どのシリーズも毎回ストーリーがよくて泣いてしまうし、

戦闘シーンの面白さはやはり群を抜いてる。



実はこの回はやるの二回目なんだけど、

2回目は二回目でいいなあ。

より効率的に戦う方法を考えながらプレイできたり

思わぬ伏線に気付けたりするし。超楽しい。



とりあえず、今はできるだけ装備を固める作業をして、

今日中に戦闘に行くかな………









なんて思っていた、



その時だった。












背後からものすごい勢いで風が吹き付ける。


決して長くはない私の髪が、

視界に入って邪魔なくらいには、強い風。







私は慌ててゲーム機を閉じた。



大野くんの方を見ると、風によって紙が相当巻き上げられている。









「やばいやばい」






私は絵を取ろうと、とっさに立ち上がったけど。










…迂闊だった。










なんで私は昨日、天気予報を見ておかなかったのだろう。


なんで私は今、スマホで警報の欄を見ていなかったのだろう。







ものすごい勢いで背中を押されて、私は柵にぶち当たる。







暴風警報。



その風は、生半可なものじゃなかった。












「おいっ、柵…!」








バキッとも、メリッとも表現できるとてつもなく大きな音が続く。


なんと、柵が折れたのだ。






嘘でしょ、って思った。

そんなことってある?、って思った。








けどこの強い風で私は体制を保てなかった。


どうしたってこの折れた柵にもたれるしかなかった。


それ以外に選択肢はなかった。


というか本能的に柵を掴む他なかった。





さらに不運なことに、柵は屋上のかなり際に建てられていた。









よく、ドラマなんかでは窮地に陥った時スローモーションになるけど、


現実は違くて。





残酷にも、重力加速度は一定だ。








私は、どうすることもできず背中から落ちた。



遠のいていく意識の中で、大野くんが手を掴んだような気がする。



でも私にはその手の感覚はなかった。













大本彩乃。



享年17。



強風に煽られ屋上から落下する事故にて、



即死だった。