魔術師→祓魔師

アメツキ
@black_a_dream

02.

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 増援部隊の逗留場所である虎屋旅館には、襲撃によって魔障ましょうを受けた者達も大勢いる。

 その、魔障者達がいる一室にて。


「何やゴルァ、もっぺん言うてみぃ!!」

「おとなしぃ聞いとったらアホらし。

 ネチネチネチネチ...

 はっきり言ったらどうなんや...!」


「おお怖。

 口がまわらんからすぐに手が出る。

 これやから志摩家しまけ

 無能な連中は嫌やわ」

「あ"あ?何やと!?」

「今回の件は明らかに

 志摩しま八百やおぞうの指導力不足。

 現に今もせって

 起き上がれもせぇへんやないか。

 八百造は所長の職をするべきや!」


「ぬかせ宝生ほうじょうのヘビども!!

 おとんを呼び捨てにすなアホゥ。

 つーか自分とこの失敗お父に

 擦り付けとるだけやろ!」

「...金造きんぞう相手にしたらアカン!」


「な...っ、何を!」

あてらはもっと根本的な話をしてるんや」

「ブッハ!何や根本て!

 二百字以内で説明してみぃ!」


 仲が悪いと評判の志摩しま宝生ほうじょうは、魔障者(のはず)であるにも関わらず、小競り合いをしていた。


「大体[深部]は宝生の管轄やぞー!

 お前らの警備がザルやったから

 こんな事になったんやろ!!」

「やった柔兄じゅうにいがキレた。

 やれっ!やってまえ柔兄!」


「黙りよし!

 そもそもその前に上部の警護が

 ザルやったから[深部]にまで

 侵入されたんえ。違うか!?」

「姉様!正論や!!」


「ぐ、へ理屈ばっかこねよって。

 ヘビ顔のドブス共ォ!!」

「おっ」

「きゃあ」


 志摩家次男、志摩しまじゅうぞうは、弟の金造から錫杖を奪うと、それを相手に向かって振り下ろす。


さるが!」


 宝生家長女の宝生ほうじょうまむしは、「オン アミリティ ウン ハッタ!」と唱えると、左腕をナーガに変化させた。


「その棒キレ下ろして

 大人しうした方が身のためやぞ。

 おさるども!」


「げぇっ。蛇だしよった...!!

 どうする柔兄!」

「蝮ィ...、いい度胸やないかい!!

 金造援護せぇ」

「やっぱ柔兄はこうでなくちゃ♪」

「オン!

 シュチリ キャロハ ウンケン ソワカ。

 行けキリーク!!!!」


 柔造と金造が錫杖を飛ばすと、蝮も蛇で応戦する。


「おいッ、君たちやめろ!!

 魔障者じゃないのか!?」


 医工騎士ドクターや他の魔障者達に被害がいく中、『...いい加減にせェよ?』と、地を這うような低い声が部屋に響いた。


「「!?」」


 その低い声と共に、ゴンッ、という鈍い音と、ザクッ、という何かが布を引き裂く音がした。


『アンタら魔障者やないンか?あ"あ?

 やいと据える必要がありそうやなぁ?』

「海琉...!?」


 青筋を立てて現れた海琉。

 柔造が足元を恐る恐る見ると、深々と突き刺さった数本の小刀が。

 海琉の手はきつく握りしめられ、もう一方の手には数本の小刀が握られていた。

 海琉はあろうことか魔障者である蝮の頭を拳で叩き、柔造の足元に数本の小刀を投げつけたのだ。

 そして海琉の数人は殺ったようなその形相に、誰もが顔をひきつらせた。


『まったく変わらんなぁ...。

 喧嘩なら余所よそでやりや?

 シバき倒すぞ』

「やって...」

『ああ?“むし”の餌にしたろか?』

「ヒィ!?」


 海琉が言う蟲とは、“翅刃虫しじんちゅう”のことで、咬合力と牙で骨をも砕く力を持つ蟲。


 間桐まとう海琉には前世がある。前世では兄が二人おり、その内の下の兄に海琉はなついていた。前世の家は魔術師一家で、翅刃虫を使役する家だった。

 転生して、海琉が生まれた家は、前世と同じ名の“間桐”。

 前世と同じ姓ではあるが、前世のような海琉曰く『クソジジイ』はおらず、大好きな兄もいない、普通の家だった。祓魔師一族が、普通と言えるかはわからないが(魔術師から祓魔師になっただけであまり変わらないと、海琉は思っているが)。

 ちなみに海琉は、志摩柔造とは遠縁の親戚で、宝生蝮とは従姉妹である。


『周りの迷惑考え!

 アンタら以外にもいるんやぞ!

 ええか?大人しう寝てよな??

 ...もし次騒いだら、

 簀巻すまきにして鴨川かもがわに捨てるぞ』

「ひっ」


 そう言い残して、海琉は部屋を去った。


◇◇◇


「...!海琉!!」

『!?』


 後ろから大声で名を呼ばれ、手を引かれたことで我に返った海琉。彼女の名を呼んだのは、志摩柔造だった。


『...何だ、柔造か。

 大人しう寝とれ言うたよな?』


 海琉は名を呼んだ人物を確認すると、柔造の手を振りほどこうとしたが、振りほどこうとすると彼は海琉の手を強く握りしめ、振りほどくことができなかった。


「...海琉、何日寝とらんのや?」

『! ...何の話?』


 顔を反らしてそう言った海琉。

 しかしいくら顔を反らしても、海琉と柔造の距離では彼女の目の下にある隅は隠せなかった。


「周りは騙せても、俺は騙せへんよ?

 海琉。...まだ寝れへんのか?」

『...前よりは、マシにはなった。

 だから大丈夫...』

「さっきすれ違った奴、誰か言うてみぃ」

『...?』


 柔造の問い掛けに困惑する海琉。

 柔造の言う通り、海琉は柔造に引き留められる前に一人すれ違った人物がいたのだが、海琉は自分が誰とすれ違ったのか覚えていなかった。


「...誰とすれ違ったかさえ覚えとらん奴が

 大丈夫なわけないやろが!

 ...昔からそうや。

 眠られへんのには何か理由があるんか?

 俺じゃあ、力になれへんのか?」


 海琉を心配そうに見つめる柔造。

 海琉は、一度彼へと戻した視線を、再度横に反らした。


『...理由なんかないよ。

 だから、大丈夫』

「海琉!!!!」


「間桐さん!霧隠隊長がお呼びです!」


 海琉を呼びに来た祓魔師に、海琉は『わかった』とだけ告げる。海琉は柔造を一瞥だけすると、その手を振り払い、己を呼びに来た祓魔師についていった。


「海琉...」


 その場に残された柔造は、弟が呼びに来るまで、その場に立ち尽くしていた。


◇◇◇


 今回の増援部隊隊長である霧隠シュラに呼び出された海琉は、彼女がいる部屋へと来た。


なんの用だ?シュラ』

「いや~、すっごい形相で

 今にもぶっ倒れそうな奴がいるって

 タレコミが何件かあったんだよ」

『タレコミ...?』

「ああ。...お前、来る途中

 寝たっつってたの嘘だな?」


 海琉はとある理由から、深い眠りにつくことができない。眠っても何かがあればすぐに起きてしまう。そのため、海琉の目の下にはくっきりと濃い隈があるのだ。

 ちなみに、彼女が眠れない理由を知るのは、とある一人を除くと他にはいない。


『...多少は寝たさ』

「ほー?...あのなぁ?

 お前が多少なりとも寝た時は

 その目の下の隅が消えるんだよ。

 でも今日は消えてない。

 ...いいから寝てこい。

 所長さんも心配してたぞ?」


 シュラには隈が消えていない理由がばれており、自身の方が酷い怪我をしている所長に心配していたと言われれば、海琉も言い返すことができず。


『...わかった。何かあったら起こせよ』

「へいへい。まずいーから寝てろ」


 海琉は自分にあてがわれた部屋へ向かい仮眠をとることにした。




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