とある世界線での出来事

貴方に最高の絶望を



「……きみは、だれ?」


死んだ目をした青年――ダークファルス【囚人ルサルカ】――が、長い白髪を揺らす青年に語り掛ける。


「俺は【偽者】であり、誰も救えなかったアイツの末路さ」


彼の持つ紫色に染まったフォトンの刃が、ゆらりと怪しく煌いた。

ダーカー因子に浸食されていて、禍々しく煌いては沈んでいく。


「ふーん……あ、そうだ、いかないと」


囚人ルサルカ】は何か思い出したようにどこかへと歩いていく。

ブランシュはふらふらと歩いていく彼を追いかける。


「どこに行くんだ」

「なんでついてくるの。ダメだよ、きみはついてきちゃだめ」


追い払おうとしてくる彼の手をブランシュが力強くつかむ。

彼は掴まれて痛かったのか、ぎゃっと悲鳴をあげた。


「……ルサルカ。お前がそっちに行ったら取り返しのつかないことになる。【深淵なる闇】と融合して、俺の手に負えなくなる」


囚人ルサルカ】はこてりと首を傾げ、何の話と呟いた。


「お願いだから行くな。今のお前に言っても無駄なのはわかっている、だけど俺は……ッ!」

「ねぇ【偽者レプリカ】。きみはなんでぼくにかまうの? ぼくはきみのこと、しらない」


はなしてよ、と【囚人ルサルカ】はブランシュの手を振り払った。

そして、逃げる様に走って行ってしまう。


「ルサルカ! 待ってくれ……お願いだ、ルサルカ!」


ブランシュの悲鳴のような声だけが響く。

思わず【囚人ルサルカ】は耳を塞いでしまう。


なんでこのひとはぼくにかまってくるの。

どうして、なにをしっているの。

ぼくのしめいは【深淵なる闇】のところにいくことじゃないの。


「ルサルカ……俺はもう繰り返したくないんだ……」


ちがう、ぼくはダークファルス【囚人ルサルカ】なのに。

なんで、なんで、なんで。


もう、わからないよ。

はやくしんえんなるやみのとこにいかなきゃ。


あれ……どこ、だっけ?

ぶらんしゅ……?

きみも、ぼくをみすてた、の?






「ノアちゃん!」


赤い涙を流す彼女の前に、うずらが息を切らせて走ってきた。


「うずらちゃん……」


深淵なる闇ノワール】は腰かけていた瓦礫から立ち上がり、走ってくるうずらを出迎えた。

表情こそ変わらないものの、彼女の声はとても嬉しそうで。


「うずらちゃん……ノアは……ノアは、ね…………うッ!?」


彼女の胸に鋭い痛みが走る。

見れば、紫色に煌くフォトンの刃が【深淵なる闇ノワール】の胸を貫いていた。


「すまない。お前を騙すような形で殺すなど、俺はとても心が痛い」


うずらだと思っていた者は、酷く歪んだ笑みを浮かべていた。

誰、【深淵なる闇ノワール】がそう聞こうとしたときにはもう声は出なかった。

乱暴に刃が引き抜かれて、彼女は勢いよく地面に倒れこむ。


「さようなら、【深淵なる闇ノワール】。俺の名はダークファルス【偽者レプリカ】。お前を殺すために、俺は何度でも繰り返す」


偽者レプリカ】は虫の息の彼女を一瞥すると、赤黒い闇に包まれて消えた。










全てに気づいたうずらが向かったときには、もう何も残っていなかった。


ただ、時空が歪んでいく感覚だけが彼女を支配していた。


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