とある世界線での出来事

未来は途切れて消え去った

「危ない……うずらちゃん……ッ!!」


胸のあたりに鈍い衝撃。

受け身をとれずにうずらは地面に転がる。

彼女は泥まみれになった顔をあげ、虚空へと手を伸ばした。


「いや、だめっ! ノワールちゃん!!」


うずらの静止むなしく、ノワールはアクアから放たれた氷の刃に貫かれていた。

宙を舞う鮮血、壁に激突して砕け散った氷のカケラ。

そして、ノワールの帽子が脱げて地面に落下した。


「いた……い……」


相変わらず無表情のまま、黒い少女は氷の刃に貫かれたまま膝から崩れ落ちた。


「ノワールちゃんっ!」


うずらの悲壮な叫びが火山洞窟中に響き渡る。

耳をふさぎたくなるような悲鳴が、叫びが、うずらから溢れ出す。


「嫌だよ! やだやだ! 死なないでノアちゃん!」


崩れ落ちたノワールを抱き起し、必死に声をかける。

けれど彼女はゆっくりと瞬きを繰り返すだけだった。


「……ごめん……ね……わた、し……」


ノワールは消え入りそうな声で、うずらに謝罪する。

ごめんね、声にならない声が彼女から漏れ出る。


「なんで、なんでこんなことを……酷いよ! ノアちゃんのばか!」


わっと泣き出したうずらに、ノワールもつられて泣き出した。

まだ死にたくない、本当はこんなこと望んでない。

私はただうずらちゃんが死んでほしくなくて、守りたくて。

……同じことを繰り返したくなくて。


「……うずら……ちゃ……ん」


お願いだから泣かないで、最期に見るのがうずらちゃんの泣き顔なんて悲しいから。


「わた……は……ちがっ……てない……よ、ね……?」


ぽろぽろと涙を流しながら、ノワールは静かに事切れた。

光を失った水色の瞳は泣き崩れるうずらの姿だけを映し続けた。


泣き疲れて眠ってしまったうずらの耳に残ったのは、二人を嘲り笑う少女たちの声だった。





間違っていないと言ったら、嘘となる。

お前の判断は正しい、けれどそれじゃあだめだ。

おかしくなる、狂ってしまう、全て壊れてしまうから。


「きみは、だれ?」


死んだ目をした青年が、長い白髪を揺らす青年に語り掛ける。


「俺は【偽者】であり、誰も救えなかったアイツの末路さ」


彼の持つ紫色に染まったフォトンの刃が、ゆらりと怪しく煌いた。

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