しかめっ面

樹@ しばらくおやすみ
@mlfk_asa_eos

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「にーらめっこしーましょ! 笑ったらだーめよ! あっぷっぷ!」


殊更に明るい声で、玲が思い切り顔をしかめる。本人としては渾身の変顔のつもりなんだろうけど……俺としては、また愛しい一面を知った思いだった。



***



仕事は順調だ。順調、というと少し語弊があるが、先月の大捕り物が一段落して以来、ややこしい案件はすっかりご無沙汰だ。


少なくとも、玲に心配をかけてしまうような職務上のトラブルはない。


ただ……流石に今回は落ちこんでしまった。


付き合い始めてそれなりに経つというのに。マトリとしても、恋人としても、君はどんどん成長しているというのに。


指を切った。フライパンを焦がした。お詫びにと皿洗いを始めたら、思い切り君に水をかけてしまった。


久しぶりに重なった休日。調子に乗って台所に立ったら……これだ。君は笑い飛ばしてくれたけど、流石に沽券に関わるものがある。


だけど……


「……負けたよ」


しかめっ面では効果がないと踏んだのか、さらなる変顔を試みようとする君。それはちょっと申し訳ないから、俺は小さなその身体をそっと抱きしめた。


「でも、もう少しだけ、慰めてくれるか……?」


どうせ俺は、情けない男だから。そして、ズルい生き物だから。玲の優しさにつけこんで、俺は甘えるように顔をうずめた。


「……」


誤摩化すようにキスしてごめん。でも出来ればこのまま、溺れさせて。


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