市丸ギンの復活

ノックハート
@knockhearts

神鎗はできるやつ







ボクが目を覚ました時、そこには真っ白な雪原か広がっていた。

宵の空だから周りは若干明るくて風景がはっきりと見える。とは言ってもただただ雪原がつづくだけ。


記憶の走馬灯かもしれない

だってボク、何も取り返せんまま、死んだ

愛した女を、最期まで泣かせて死んだ。


皮肉にも口元は自身を嘲笑う



広漠な雪原には見覚えがあった。

ここは戸下界で、死神になろうと乱菊から離れる決意をした日の夜。

あの時は雪がふっておったな…

本当は次の日に乱菊と雪合戦する約束やったのに。


今もあの頃も、よく約束を破った。

彼女のためを思って

…ー乱菊が泣かなくてえぇ、世界にするために…


自分のせいで泣いていることも、自分を思って泣いていることも知っている。だからもう、ボクのために泣かんでえぇようにするために死んだ。



くらりと眩暈がして膝をつく

元来白い両手は透けて雪原の白さを写していた

……。


『あっ‼︎、また勝手に出て行ってこんな霜焼けになってぇ〜!…雪の日の食糧集めやめてよ』

『そないなこと言わんとってや。昨日で乾物系無くなってしもうたし…仕方あらへんやろ。てか見て…ホラ雉やで凄ない⁈』

『…何っ回言っても聞かないんだから…ほら、手ぇだしなさいよ』

『?はい』


あん時の、乱菊の手ぇ…あったかかったなぁ……。





…意識が遠のいてきたわ

今度こそあの世からも消えるんやな。

どうせ消えるんならあの日と同じく乱菊が送り出してくれれば良いのに、と思ったことを口に出した

だってどうせ誰もおらへんしボクだけ…

〝神鎗がおりますよ〟



…ーーえ、マ?



奇妙な沈黙の後、神鎗を腰から外し完璧に透ける手で撫でる

…、どうせ最後や手入れは欠かしたことなかったけどちゃんと語り合おうやないの。



吹雪が強くなる。





…神鎗、お前はこんなボクに黙ってついてきてよかったん?

〝わたくしめの意思で主人に仕えました。後悔などございません〟


ーーそか。

〝ぇえ、わたくしなどより主人が大変後悔していらっしゃいますから。あとわたくし実は主人の意思に背くことをしでかしてきたのでまた目が覚めてもわたくしのことはおこらないでくださいまし。〟







…ーーー。。…ん?ちょ神そ


〝…未練タラタラの癖にカッコよく死んだからええやろとかお思いになられていますよね、安心してくださいどうせこうなるってわかっていましたから手は打っております〟


さっきから何言うとるんや神鎗


〝ではまたアチラでよろしくお願いしますね、市丸ギン様〟
























手と頰が硬いものに触れて冷たい


まだぼんやりとした意識の中で再び目覚めてしまったなと思うが、これは明らかにいつのまにか裏でコソコソ動いていた神鎗のせいだ。


前回は身体が浮いているような感覚で五感もなかったのに、今は生身の人間のような感覚

身体全身に鉛がついたようで重たい。


起き上がって、手をグーパーする

……なんか、小さなってないか


周りの景色を見て違和感があった


それは、ココは虚圏でもなく戸下界でもないから他は人間界しかない

街の喧騒さと建物からして恐らく人間界だ




今、ボクは人間界にいるんか…?


そもそもこの地面は普通じゃない。

コンクリートっちゅうもんで、白線が一定の間隔で引かれているところを見ると道路と呼ばれる地面になる。


…そして

ボクの目の前に


「っっはぁぁあああ⁈」


鉄でできたでっかい箱が突進してきはった。この時点で意識は完全に覚醒しておったから少しの動揺と同時に車を避けようと瞬歩を使おうとしたら使えないやと。ちょっとまってぇなホンマ使えんのか。そいえば自分の霊圧らしいもんも感じられへんし死神装束も着ておらへん。

着ているのは白装束一枚。え、また死ぬんか。








車とボクの距離、13センチメートル(笑)






……どないしよう、全くおもろない。状況が状況やさかい、ホンマおもろない。


いつから平子隊長のギャグセンスが身についたんや。


…ーーぁあ…せっかく、せっかく神鎗が上手いこと生かしてくれはったのに。

跳ねられるの痛いやろなぁ…痛いの嫌やなぁ…。


ボクの第三の人生も終わったなと同時に車に轢かれる瞬間


「あっぶなぁぁあい‼︎」

「⁈ぶっ」


真横から車に轢かれるんとおんなじくらいの衝撃が走りそのまま自分の身体が宙に浮いた。

浮いた体は隣のビルの屋上へ

轢かれ死ぬことは免れたがお互い酷く体を打ち付けてしまった。


相当な勢いだったのかボクを攫った張本人も力の加減ができずに吹っ飛ばされている。

助けられたが随分と頼りないなぁと、いわゆる小さな死神にお礼を言うべくでんぐり返しな体勢を戻して駆け寄った


先程理解したがボクの身体は10歳前後の体型に退化している。

その年相応の言動、態度をしなければ怪しがられるだろうしボクの事が市丸ギンだとバレたとしても記憶がないなら死神から魂をリリースされる

記憶があった場合、…きっと斬首だ。


(死刑執行は受けるつもりだがまだ早い。せめて乱菊にちゃんといろいろ事情を話して半殺しにされたら受ける。…よし決めたで。絶対それまでは死なへん。)



それの可能性を踏まえて少年を騙すのは心許ないが少し協力してもらおか


自分と同じように転がった、少年の死神に手を差し伸べる。

「大丈夫かぁ兄ちゃん、助かったでホンマ…ありがとお。」


「あははは〜、ゴメンね…ぼくまだ加減が上手くなくって。父さんからも注意されているけど治らなくて…え?

君ぼくのこと見えるの⁈」

「みえはるよ、

…もしかして兄ちゃん幽霊なん?

ボクな、昔から霊感あんねん」

「!、あ、えっと…うん、そんな感じなのかな…」

「へっ〜すごいなぁ!幽霊やのにボクん事助けてくれはったんかぁ…」



「困っている人を見過ごせないんだよねぇ…ぼく」


あはは〜と笑う顔

オレンジ色の頭髪

こんの…お節介と正義の塊みたいなやつは…


こ…こいつもしかしなくても

(黒崎一護の息子か?)

「かっこええなぁ、兄ちゃん

…ボクの名前はギン丸。君は…?」





「黒崎一勇‼︎」