軌跡の行方

翔生里-kaori-/PSO2リティカ
@kannazukiyua

秘密基地でのランチタイム

それから数分後。


淳平は落胆して溜息をついていた。


「どうしたの?淳平」


目前の香澄は弁当を食べつつ、首を傾げて聞く。


「どうしたもこうしたも…

 秘密基地とかいうから期待したのに、何故に化学室なんだよ」


香澄と何とか靴箱で合流し、向かった先は教室から離れている静かな化学室。

化学の授業以外は生徒たちは殆ど立ち寄らない場所だ。


「なんだなんだ、俺の神聖な職場が気に入らないのか?

 しかし、ここを秘密基地とは良い名称だな!

 そして、追手から逃れる場所にするとは、さすが香澄だ!グッジョブ!」


「グッジョブ!」


「俺を無視すんな!」


お互いに親指を立てて和気あいあいとする二人に、淳平は思わず突っ込む。

実は化学室の住人である化学教師・宮之内秋吉は香澄の従兄弟。

本職は神主をしているが、神主だけでは食べていけないと教員の免許を習得した。

生徒達からは《アッキー》と呼ばれ教員の中では人気だ。


二人っきりになれると思っていた淳平は小さくため息を吐く。


 (まぁ、教室よりはマシか…)


そう納得して淳平も持参した弁当を開けて食べ始める。

二人の向かいに座り、サンドイッチを頬張っていた秋彦は聞く。


「ところで追手って何なんだ?」


「今更かよ!」


香澄同様、性格がマイペースの秋彦に淳平は項垂れる。


言ってなかったっけと香澄が事情を説明すると、秋彦は腕を組んで頷く。


「あの有名な桜井冬馬君か…

 もしかして、淳平の数珠は彼から貰ったのかい?」

 

淳平の左手首を見て秋彦が言うと、香澄は今気づいたのか数珠を見る。


「何でわかったんだ?」


言うまでもないと香澄にさえ黙っていたことを当てられて淳平は聞く。

すると、秋彦は不敵な笑みになる。


「これでも神職だからね、数珠から強力な霊気を感じる」


さすがだなと納得していると、弁当の手を休めて香澄が笑顔になる。


「そんな凄いものをプレゼントされるなんて、冬馬君と仲良くなったのね」


「なっ!ち、ちがうぞ?これは俺の変な体質のせいで強引に渡されたんだ」


また香澄が変な誤解をしないように淳平が否定すると、


「変な体質?」


初めて聞く内容に香澄は首を傾げる。

どう答えようかと悩んでいると、秋彦が気楽に言う。


「憑依体質のことかな?」


「えっ」


言われた淳平と知らずにいた香澄が同時に声を上げる。


「ひ、憑依体質?変な体質って、そういう意味だったのか」


霊が怖い淳平は蒼白になり、香澄は心配したような顔になる。


「そんな体質だったの?今まで、よく平気だったわね」


「香澄が傍にいたからだな」


ストローで飲み物を飲みながら、秋彦は確信したように言う。

なぜ私?という顔をすると香澄の横で淳平が聞く。


「桜井にも言われたんだけど、

 なんで傍にいると大丈夫なんだ?」


二人に視線を向けられて秋彦は少し間を置いて疑問に答える。


「簡単に言えば、香澄の持つ人のオーラが悪い霊を寄せ付けないからさ」


「えぇっ!」


秋彦にそう言われた香澄は落胆する。


「そんな体質じゃゴーストハンターズの活動ができない…

 淳平、変わって~」


「お、俺だって出来る事なら変わって欲しいぞ」

 

香澄から腕を組まれて動揺しつつ、反論していると秋彦が笑顔で言う。


「本格的に活動した時は淳平を囮にすれば完璧さ」


「あ、それもそうだね!」


「いやいやいや、納得するなよ!」


満面の笑みで納得する香澄と不敵な笑いを浮かべる二人に淳平は反論する。


(まったく…この二人が揃うと始末が悪い)


小さくため息をついて淳平は弁当のご飯を口にした。





昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴ると、香澄と淳平は立ち上がる。


「あき兄ぃ~ありがとう!」


「おう!いつでも来ていいぞ~授業以外は暇しているからな」


香澄を妹のように溺愛している秋彦は笑顔で手を振る。

淳平も軽く会釈して、お邪魔しましたと化学室を出ようと香澄の後に続く。


「あ、そうだ…淳平」


呼び止められた淳平が立ち止まると、秋彦は片腕を腰に当てて言う。


「数珠があるからと、くれぐれも安心はしないようにな」


「こ、怖い事を言うなよ」


気味の悪い霊に何度も配偶したことを思い出し淳平は身震いする。

そのまま香澄に促され二人は化学室を後にした。


「まぁ…その霊力より強いものが現れなければの話だけどな」


そして、静かになった化学室で誰に言うでもなく秋彦は小さく呟いた。

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