いつものエデン(BLAST)

藤堂遥惟
@haruy_toudou

「おーい! 見習いー‼」

 今日も悲しく、マスターにこき使われる日々。やっと出来たささやかな休憩時間にロビーの隅で、ご飯を済ませようとしていたら、突然やって来た BLASTの大和くん。今日も元気だなー。元気過ぎて、疲労蓄積した身体には痛いよ。

「オイ、クソボーカル。さっさと行くんじゃねぇ」

 声がした方を見ると、宗介くんとその後ろにいる翼くん、徹平くんがいた。

「見習いさん、なにしてるんすか?」

 BLASTのいつものやり取りを見ていたら、徹平くんが近くに来ていた。

「やっと休憩できるから、今のうちにご飯済ませようと思って」

 と言っても、お湯を入れたばかりのカップうどんがあるだけ。

「大変そうっすね。マスターたちはいつも通りなんすか?」

「うん。いつも通り特上寿司。肉体労働は私に押し付けて楽してるよ。私はあれが苦労した結果に見えない。うん。見えない。なんで、あそこだけ、更地化してるのか不思議だよ」

 乾いた笑い声しか出なく、泣けてきた。

「マスター、特上寿司は譲れないってましたからね。見習いさん! 俺に手伝えることあったら、言ってください! バイトで肉体労働やってるから、重い機材運びとか、任せてください! もしかしたら、頼りにならなかもしれないっすけど……」

 予想外の徹平くんの優しい気づかいに、私は感動して思わず、涙が出そうになった。頼りになるならない以前に、手伝いを申し出てくれるだけ、私はとても、嬉しいよ。あーやっぱり、嬉しすぎて、涙出た。

 こんな私に驚いて、おろおろしている徹平くん。

「徹平、ついに視線だけで、見習いに危害加えて泣かせたのか」

「は!? 誰が、視線犯罪者だ!」

「だめだろー徹平。お前みたいな犯罪者が積み重ねちゃ」

「だから、なんでそうなるんすか!!」

 あー、いつものにぎやかなBLASTだ。

「徹平くん、ありがとう。君の優しさに、私、思わず、涙出ただけだから。徹平くんにはいいとこいっぱいあるから。顔以外」

「顔は余計だろ! 顔は!」

「おい、お前ら、うるさいぞ。ここは防音してないから、外に響くだろう」

 どこかで、楽していたと思われるマスターが来た。

「あ、マスター! 今日も輝いてんな!」

「あ? たりめーだろ。輝いてなかったら、マスターじゃねぇだろ」

「そもそも、マスターって、輝いてないとダメだったけ?」

「お前ら、会って早々に、絞めるぞ」

 さりげなくマスターのハゲをディする三人。このやり取りも、いつも通りだ。

「すいません。先輩たちが」

「徹平くんも、苦労が絶えないね」

「いつものことなんで……」

 隅に座っている私に気づいたマスターが

「おい、見習い。今日の用意は済んでるのか?」

「ご飯の時間が欲しいので、先に済ませました。変更とかありましたか?」

「今のところはない。なら、さっさと済ませろ。まだ、やってもらう仕事はあるからな」

 まだあるのか。せっかく準備していたカップうどんを一口すすると麺は少し伸びていた。

 BLASTはスタジオの予約を入れていたので、練習しに行った。

 静かになったロビーで、私は一人、うどんを食べた。

 空腹は満たされた。ごみを片づけて、私は仕事の続きをするためにマスターを探しに行く。エデンでの私の一日はまだまだ終わらない。

著作者の他の作品

バンドやろうぜ!のCure²Tronマイリーです。一人語りみたいなものです。