恋する動詞111題・011~020

みもち(創作アカ)
@mimochi_sousaku

020. 思い出す:桃城武

凄く、幸せな夢を見た。


……んだけど、どんな夢だったかは、全く思い出せなくて。


なんであんな幸せだったんだろ。

誰か、知ってるヤツがいた気がすんだけど。

アレが誰だったのか思い出せれば、幸せの正体も分かんのかな。


モヤモヤしたまま登校して、下駄箱に靴を放り込んでいたら、

「おっはよーぅ!」

背後から声を掛けられた。

振り向けば、キミの笑顔。


……を、見て、


「あーーー! お前だーーー!!」


思い出した。


「えっ、ナニっ、朝っぱらから大声出して」

「今朝見た夢にお前いたの、今、思い出したんだよ! あースッキリしたー!」

「えーー!?」


そう、アレはキミだった。

場所は…なんか、それこそ夢の中にしかないような、フワフワした花畑で。

薄い黄色のワンピースを着たキミがこっちに背中向けて、花に埋もれるみたいにして座ってて。

振り向いてほしくて、声を掛けて、それで―――


「ねぇねぇ、どんな夢だったの?」

興味深げに瞳を輝かせてるキミに訊かれて、

「……あ、ワリ、そこまでは覚えてねぇや」

咄嗟に、嘘をついた。


「えーホントぉ?」

「ホントホント。お前がいたってのも、今、ようやく思い出したってカンジだし」

「なんかヘンな夢だったんじゃないの~?」

「違うって、マジで覚えてねーんだって」

追及の手を緩めないキミから逃げる様に、俺は教室へと走り出す。


ホントは、全部思い出してた。

……んだけど、さ。


好きだ、って言ったら、振り向いたキミは驚いた顔して、その後すぐに嬉しそうに、花が咲くみたいに笑ってくれた夢で、それがすっげぇ嬉しくて幸せだったんだ、なんてさ。


言えねぇなぁ。

言えねぇよ。