恋する動詞111題・011~020

みもち(創作アカ)
@mimochi_sousaku

019. 寂しがる : 忍足侑士

昨日は、俺の部活のせい。

一昨日は、彼女のバイトのせい。

その前は、お互いの委員会のせい。

更にその前は……なんやったか。


とにかくなんやかやで、彼女と一緒に帰れない日が、もう一週間以上も続いている。


いい加減、限界や。


部活が自主練なのをいいことに早々に切り上げ、図書室へ向かう。

レポートの締め切りが近いと言っていた彼女の姿が、はたしてそこにあった。


その視線が手にした資料ではなく窓の外に向けられているのを見て、俺は小さく笑みを零す。


「レポート、進んどる?」

背後から声を掛けると、ぴくん、と彼女が肩を揺らし、振り返った。

「えっ…え? ユーシ? なんでここに…部活は?」

「隣にお化けがついてもうて、部活どころやないねん」

「は? お化け?」

「そう、お化け。妖怪“寂しがり”」

顔に浮かんでいた驚きが、みるみる不審にとって代わっていく。

「…………なにそれ」

「あれ、知らん? 隣が空いてる寂しい奴のトコに寄ってきて、そこに居座ってまう妖怪」

「は?」

「そいつが隣におると、部活も勉強もままならんのや」


わざとらしい溜息を零す俺を、彼女は笑わなかった。


「…どうすれば、それ、追っ払えるの」

「簡単や。本当に隣にいて欲しいヤツにおってもらえばええんや。つまり、俺ならお前やな」

に、と笑って言うと、しばらく難しい顔をしていた彼女は、はぁ、と一つ息を吐き、それから机の上を片付け始めた。

「レポート、ええの?」

「あたしがいなきゃ、そのお化け追っ払えないんでしょ? だったら仕方ないじゃない」


全く、ホント迷惑なんだから。

ぶつぶつ言いつつ帰り支度をする彼女を見ながら、俺は笑いをかみ殺す。


お前の隣にも、そのお化け、おったで。


なんて言ったら、きっと彼女は機嫌を損ねてしまうだろうから。


せやからこれは、俺だけの秘密。