恋する動詞111題・011~020

みもち(創作アカ)
@mimochi_sousaku

017. 自惚れる:跡部景吾

そういう女だ、ってのは分かってた。

いつでも俺と対等で、決して媚びないし、甘えない。

コイツのそういうところに惚れたんだろうと言われれば、確かにそうだと頷くしかない。


………けれど。


「お前、本当に俺のことが好きなのか?」

部室で資料を整理している彼女に伸ばした手が、「ジャマ」の一言で拒絶された。

ただそれだけのことが、俺を不安にさせる。

滅多に抱くことのないその感情が、柄にもないことを俺に口走らせる。

「…なに、急に」

「お前の態度見てると、好かれてる気がしねぇんだよ」


決して媚びない、甘えない。

それは彼女の美点ではあるが、恋人として、となれば話は別だ。


俺はお前に愛されていると、いつでも実感したい。

愛されていると自惚れるなんてバカな真似は、したくない。


「なぁ。俺のことが、好きか?」

戸惑う彼女の隙を突き、耳元に口を寄せ、同じ言葉を囁く。

「―――っ!!」

と、弾かれたように彼女が俺から離れた。


その顔が驚くほどに赤いのを見て、ようやく俺は安心する。


「…ったく、そういう顔出来んなら、ちゃんと見せろよな」

「……………ヤダ」

「アーン? なんでだよ」

「だってアンタ、すぐ自惚れるから」

「自惚れ? ハッ、事実だろう?」


俺を満たしているのはお前の愛で、お前を満たしているのは俺の愛。

お前の表情一つで、それが自惚れから確信に変わる。

意外と俺も単純だな、と、少し可笑しくなる。


「で、お前はどのくらい自惚れてるんだ? それ以上に愛してやるから言ってみろよ」


離れた身体を引き寄せて、再び耳元で囁く。

怒ったような、困ったような、複雑な表情を浮かべながらも、彼女は拒絶しない。

だから俺は、不本意そうに尖っているその唇に、自分の唇を落としてやった。