恋する動詞111題・011~020

みもち(創作アカ)
@mimochi_sousaku

014. 別れる:財前光

線路を挟んだ向かいのホームで、さっきまで隣にいた君が手を振っている。

こっち側で俺は、それに応えようと左手をあげる。

けど、周りの目が気になって、すぐにそれを降ろしてしまう。

「しゃあないなぁ」と言いたげな顔をして、君が向こう側で笑う。


別れ際のこの時が、一番苦手だ。

ホームのあっちとこっちに別れて電車を待つ、この短い時間が。


君との間に横たわる、顔は見えるけれど、手も、声も届かない距離。

いつもなら何となく誤魔化せてしまう気持ちが、クリアになる距離。


本当は、まだ一緒におりたい。

もっとぎょうさん話したい。

ほんで、出来るなら、少しだけでも君に触れて――


そんな気持ちを吹き飛ばすように、走り込んできた電車が風を巻き起こす。

向こう側の君の姿が見えなくなる。

停車した電車の窓に、乗り込んだはずの君の姿を必死に探す。

けれど、人混みに紛れて、それはいつも叶わない。


やがて電車は君を乗せ、ゆっくりと走り出す。

俺がいく方向とは反対側へ。

俺から離れていく方へ。


「……また、明日な」


君を乗せた電車の音が遠くなってから、君のいなくなったホームに向かって小さく呟く。

と、それに応えるかのように、ピコンと音がした。

ポケットから取り出したスマホの画面には、君からのメッセージ着信の通知。


『また、明日な!』


俺と同じこと、言っとる。


それがなんだか可笑しくて。

別れた後も、すぐそばに君はいるような気がして。


俺のいるホームにやってきた電車が、さっきより強い風を起こす。

風から逃げる様に顔を俯かせて、それから俺は、盛大に頬を緩めた。