恋する動詞111題・011~020

みもち(創作アカ)
@mimochi_sousaku

012. 囁く:河村隆

カーブに差し掛かったバスが揺れて、隣で寝ている君の頭が俺の腕に、とん、と当たった。

跳ね上がる心臓に合わせて身体も動きかけたけど、どうにかそれを押し留める。

そっと様子を窺えば、君は相変わらず気持ちよさそうな寝息を立てていて、俺は胸を撫で下ろす。

同時に、君の髪の匂いや温もりを感じて、少しだけ緊張した。


君は、気付いてないんだろうな。

俺が今、どんな気持ちでいるのかなんて。


カーブを抜けても、君の頭は俺に凭れかかったまま。

俺はとにかく動かないよう、君の眠りを妨げないよう、細心の注意を払う。


君が俺のことをそんな風に見ていないことは分かってる。

だからこその、この距離感だってことも。


でも、今なら、言ってみてもいいかな。

だって、君には聞こえないから。


「……好きだよ」


少しだけ君の方に顔を寄せて、耳元にそう囁いてみる。


「………ん…」


君が小さく身動いで、俺は慌てて正面に向き直る。

視線を戻す直前、ちらりと見えた君の顔は、微かに笑っていたような気がした。


それが見間違いじゃなければいいな、と思いながら、俺はまた動かず、真っ直ぐ前だけを見て、君の眠りを守ることに徹した。