マイマイ、ポケモンコンテストに出場!?

佐渡惺
@sat0rusq

第5話、ドキドキ!コンテスト二次審査(前編)

 カナズミシティ、ポケモンコンテストの一次審査が終わり、小休憩の時間も過ぎると、司会のビビアンが控え室や外のモニターに映ります。





 そして、ビビアンから二次審査のトーナメントの発表がありました。コンテスト会場の外の広場でモニターを観ていたマイマイと、ピカチュウ姿のりっぷは、トーナメントの対戦相手をチェックします。





 すると、何と、マイマイの初戦の相手はサダムネでした。マイマイはモニターに映っていた対戦相手のカードの少年を観て、頬を強張こわばらせていました。





 りっぷは緊張しているマイマイをリラックスさせようと、魔法を使おうとしますが、




 「ねーえ、そこのお嬢さん」

 と、緑色のとんがり帽子をかぶった紫色の長髪の男性がやってきたことで、りっぷはします。紫色の長髪の男性は、ハーリーでした。




 マイマイたちがハーリーと会ってしまった一方、控え室でも、セレナとハルカの表情が強張っていました。




 初戦の相手がセレナはシュウ、ハルカはハーリーだったからです。




 「いきなり、シュウくんと当たっちゃったな」

 と、セレナが言い、




 「いきなり、ハーリーさんと当たっちゃった」

 ハルカはセレナの方を向き、言いました。




 「私、一回戦からだ。ハルカちゃんは?」




 「私は四回戦よ」





 「マイマイさんは何回戦だろう?」




 「見て、セレナちゃん、マイマイさんは三回戦かも。相手はサダムネさんか」

 ハルカがモニターの画面を指さします。




 「そういえば、マイマイさんとピカチュウが、まだ外から戻ってきてないわね」

 セレナがきょろきょろしていると、




 「私、呼びに行ってくる。セレナちゃんはここにいて」

 と、言ったあと、背を向けたハルカです。




 「で、でも」

 セレナもついて行こうと動きますが、




 「一回戦、もうすぐでしょう。係の人が呼びに来ちゃうかも」

 ハルカは振り返り、片手で制しました。




 「そっか」




 セレナを残し、マイマイたちを呼びに控え室から出たハルカは廊下で緑の髪の少年と鉢合わせします。数分間、微妙な空気が漂いましたが、シュウから先に口を開きます。




 「今回のポケモンコンテストは荒れそうだ」




 「荒れそうって?」




 「ま、君にはわからない話さ」




 「ちょっと、シュウ」





 「マイマイさんってトレーナーと、ピカチュウ……」





 「え?」




 「いいや」




 「………」

 今のハルカとシュウの話を、こっそりと控え室から出てすぐの柱に隠れながら聞いていたセレナです。





 シュウが控え室の方に向かってくるところが見え、セレナは慌てながら控え室に戻り、しゃきっとした姿勢でその辺にあったイスに座っていました。





 「やあ、一回戦の相手は君だったね」

 シュウがセレナに声を掛けます。





 「あ、あの、さっきのハルカちゃんとの話……」

 セレナが恐る恐るシュウに尋ねようとすると、少年は目を閉じ、





 「君が気にすることじゃないよ。君のことを言ったわけじゃないから」

 と、言いました。




 「シュウ、マイマイさんとピカチュウが何?」

 ハルカも控え室に戻ってくると、シュウはまた控え室から廊下に出て行ってしまいます。




 「………」

 シュウに避けられてしまったと思ったのでしょう。ハルカは少し、傷つきます。




 「ハルカちゃん……」

 セレナがハルカの気持ちを察し、話し掛けようとしたところ、係の女性がここでやってきます。




 「シュウさーん、セレナさーん」




 「はい!」

 係の人が呼びに来てしまったと、セレナは焦ります。




 「セレナちゃん、行って。私、シュウを呼びに行ってくる」

 ハルカは笑い、ウインクをし、走りながら控え室を出ました。




 「うん」

 セレナは心配そうにハルカの背中を見送ったあと、係の人について行ったのでした。




 場所が変わり、マイマイはハーリーの相手をしていました。




 「お嬢さん、あんま見ないコーディネーターね。どこの方かしら?」

 と、早速、ハーリーはマイマイたちの探りに入っていたのです。彼はピカチュウ姿のりっぷの方も見て、にやりと笑います。りっぷはハーリーにおびえていました。





 「あたし、ホウエンから離れた地方のところからイベントで来ただけなんです。それでポケモンコンテストを体験して……」

 マイマイが最後まで話し終える前にハーリーはぱんっと両手を鳴らし、にこっと笑います。




 「あらー、そうだったの。でも、あなた、ポケモンコーディネーターの素質があるんじゃない。ピカチュウちゃんとの息がばっちり合ってるもの。ねえ、あなたのピカチュウちゃんってもしかして、言葉が話せたりなんかしない?」





 「え?」




 「!」


 ぎくっとなったマイマイとりっぷです。




 「ね、ピカチュウちゃん、さっき、しゃべってたでしょう?」

 笑った顔のハーリーがピカチュウ姿のりっぷに近づきますが、りっぷにとって彼の表情が怖かったようです。目を閉じながら逃げ出してしまいます。





 「あ、ピカチュウ!」





 「(逃げられると、余計に気になるじゃない)」

 ハーリーは心の中でそう言っていました。





 「ハーリーさん、失礼します」

 と、マイマイが行こうとすると、





 「待って、お嬢さん。ねえ、あのピカチュウって何者?」





 「いや、その、ポケモン?」





 「そんなの知っているわよ。けど、そうじゃなくて、あたしはピカチュウ自体のことを知りたいのよ」





 「(この人、ピカチュウがポケモンじゃないことに気づいてるかもしれない。どうしよう、この状況。やばい、やばいよ!)」

 マイマイはハーリーの前で顔を真っ青にさせていたのでした。反対にハーリーの方は口の端をにやりとあげ、マイマイに同じ質問で攻めていました。




 一方、ハーリーから逃げ出してしまったピカチュウ姿のりっぷは、コンテスト会場内まで走っていたところで魔法が解け、元のチューリップの妖精姿に戻ってしまったのです。そこを緑の髪の少年に、はっきりと見られ、少年はりっぷの前に立ちます。




 りっぷは、半分泣きそうな顔になり、シュウからも逃げようとしていましたが、ロズレイドに通せんぼうされてしまいます。





 「大丈夫、怖がらないで」

 シュウは優しく手を差し伸べました。





 「………」

 りっぷはまだ警戒しています。





 「シュウ」





 「ハルカ……」





 「さっき、係の人が控え室に呼びに来て、そろそろ、出番だって。セレナちゃん、先に行っちゃったよ。あれ、その子、ポケモン?」





 「ハルカちゃん!」

 りっぷはハルカの後ろに隠れました。





 「どうして、私の名前を知ってるの?」





 「あ……」

 りっぷは両手で自分の口をふさぎます。






 「君の名前を知っているのは、その子がマイマイさんのピカチュウだからさ」






 「え、まさか……」

 シュウの言葉に戸惑うハルカです。





 「……うん、シュウくんの言うとおりだよ、ハルカちゃん。実は私ね、ポケモンじゃないんだ。フェアリルって妖精なんだ」





 「フェアリル……」




 りっぷはハルカとシュウにこれまでのことを全て話していました。ハルカは驚きの表情、シュウは冷静な表情でりっぷの話に耳を傾けていたのでした。りっぷの話が終わると、真面目な顔になったハルカが口を開きます。




 「コンテスト始まる前の練習のとき、ピカチュウの動きがおかしいって思ってたかも。何だ、そうだったんだ。りっぷちゃんの話を聞いて、すっきりしたー」





 「あの……」





 「りっぷちゃん?」




 「これ以上、ポケモンコンテストにマイマイちゃんと出たらまずいですよね」




 「そうだな。君たちのしていることは、コンテストのルール違反していることになる。そもそも、君はポケモンじゃないからね、みんなに君のことがバレたらまずいことになるだろう」




 「シュウ……」




 「今のうちに、二次審査を棄権して帰った方がいい。コンテスト関係者に迷惑が掛からないうちにね」





 「ちょっと、シュウ!」




 「二次審査、出番だから。君がさっき言ってただろう。係の人が僕を呼びに来てたって」





 「そうだったかも……」

 シュウが行ったあと、人差し指で頬をかいていたハルカでした。





 「……そうだよね。私、マイマイちゃんにそろそろ、棄権しないとまずいこと言って来ようかな」

 りっぷがそう言うと、





 「りっぷちゃん、待って」

 ハルカは再び真面目な顔になります。





 「ハルカちゃん?」





 「二次審査、出よう」





 「でも……」




 「棄権なんかしたら、かえって怪しまれるかも。私、りっぷちゃんの話していたこと、聞かなかったことにする。誰にも言わないから」

 ハルカはウインクをしたあと、そのまま行ってしまったのでした。





 「ありがとう、ハルカちゃん。リルリルフェアリル~、ピカチュウに変身するリル~」

 りっぷはハルカの後ろ姿を見て小さい声でお礼をつぶやいたあと、魔法でピカチュウに変身しました。そして、外の広場へ戻って行きます。




 一方、マイマイはハーリーにまだ質問攻めをされていました。




 「ね、マイマイちゃん、あなたのピカチュウ、どうして言葉が話せるの?」




 「だから、ハーリーさんの気のせいですって」




 「嘘をおっしゃいな。あたしの耳は正常なんだから。ね、マイマイちゃん、早くピカチュウのこと教えてって」




 「(どうしよう、逃げようにも、この人のガードが固くて逃げられないし……)」

 と、マイマイがかなり困っていたときのことです。




 「すみませーん、けて下さーい!」

 少年の声が聞こえ、マイマイたちの方にシャドーボールが飛んできました。





 「きゃ!」





 「わっ!」


 マイマイとハーリーはシャドーボールを慌てて避けます。シャドーボールはマイマイたちの間を通り過ぎて行ったあと、空中で消えました。





 「びっくりした……」

 マイマイは、まだ胸がドキドキしています。





 「誰よ、シャドーボールを飛ばしてきたのはー!」

 ハーリーの方は、ぷんぷんと怒っていました。




 「すみません、シャドーボールは僕のゲンガーです」

 少年はゲンガーを連れ、頭を下げます。少年はサダムネでした。




 「ちょっと、危ないじゃないのよ。ふんっ!」

 ハーリーはサダムネに怒ったあと、どこかに行ってしまいます。





 「サダムネくん……」





 「君があの人に迫られて困っているのを見かけたから、ゲンガーのシャドーボールで脅かしてみたんだ」




 「あたしを助けてくれたんだ。ありがとう。でも、助け方が危ない。あたしもシャドーボールに当たるところだったよ」





 「すみません……」





 「初戦、よろしくね」





 「ああ、よろしく」

 サダムネはマイマイと握手しようとしていましたが、その前にマイマイはりっぷを探しに走って行ってしまったのです。




 サダムネもマイマイの後ろ姿を見て微笑したあと、ゲンガーと練習を続けていました。




 「りっぷちゃん、どこー?」

 コンテスト会場内を走りながらマイマイがりっぷを呼ぶと、





 「マイマイちゃーん!」

 彼女の向かい側からピカチュウ姿のりっぷが走ってくる姿が見えます。





 「りっぷちゃん、大丈夫だった?」





 「うん、もう大丈夫」



 マイマイがりっぷを見つけたあと、会場内に設置されてあったモニターの電源が自動的に立ち上がり、司会のビビアンが映りました。





 「お待たせいたしましたー! ただ今より、カナズミシティポケモンコンテスト、二次審査を始めまーす! 第一回戦は、シュウさん対セレナさんでーす!」




 「セレナー、頑張って下さい!」




 「セーレーナー!」


 観客席が盛り上がっている中、シトロンとユリーカが、セレナを応援です。





 「フライゴン、ゴー!」





 「お願い、テールナー!」


 シュウとセレナ、それぞれのモンスターボールからポケモンを出し、フライゴンとテールナーが華麗に登場しました。




 そこからもう二次審査が始まっていたか、観客席の北側にあった大きなモニターに映っていたセレナとシュウのゲージが少し削られます。




 その後、攻撃はシュウから仕掛けてきました。




 「フライゴン、すなあらし!」




 「いきなり、大技おおわざできた!? テールナー、かわしてフライゴンの背中に乗って!」

 セレナが指示をすると、シュウはそうくるとわかっていたか、




 「はがねのつばさ!」

 と、フライゴンに指示をし、セレナのテールナーを近づけさせぬよう、翼ではじきます。




 先ほどのすなあらしと、今のはがねのつばさのアピールポイントが高かったか、セレナのゲージが三分の一、削られていきました。




 「テールナー、めざめるパワー!」

 フライゴンにはじき飛ばされたテールナーは、めざめるパワーを使い、きれいに着地します。それにより、シュウのゲージも三分の一、削られていきました。




 「互角ですね」

 観客席のシトロンがそう言うと、




 「うん。でも、ゲージをよく見るとセレナの方が勝ってるよ」

 妹のユリーカは隣で頷き、大画面のモニターに映っていたセレナとシュウのゲージを見て言っていたのでした。




 「君、なかなかやるね。ポケモンの見せ方が美しい。けど、君は二次審査の壁がどういうものか、まだわかっていないようだから、教えてあげるよ。フライゴン、かえんほうしゃ!」

 シュウはセレナにそう言ったあと、フライゴンに指示します。




 「テールナーも、かえんほうしゃ!」

 少年の言うことがちくりと刺さったセレナでしたが、負けずにテールナーに指示していました。




 しかし、フライゴンのかえんほうしゃの威力の方が強く、テールナーはダメージを負って動けなくなってしまいます。




 「りゅうのいぶき!」

 シュウの指示を受けたフライゴンは空中回転を決め、りゅうのいぶきでテールナーにとどめです。テールナーは戦闘不能になります。




 「ここでテールナー、バトルオフ! 第一回戦の勝者はシュウさんです!」




 「負けた……」




 「君は、バトルセンスをもう少し磨いた方がいい。ポケモンコンテストは、カロス地方のトライポカロンのように、パフォーマンスだけで通用するものじゃない」




 「そっか。これがポケモンコンテストの二次審査の壁……」




 「わかったようだね。この次、君とコンテストバトルをできる日を楽しみにしているよ」




 「うん、次は負けないから」

 セレナは負けて悔しい気持ちもあったが、清々しい表情でシュウと握手を交わしていました。少女は控え室に戻るとき、シトロンとユリーカに会います。




 「セレナ、残念でしたね」




 「超、悔しいね」




 「ユリーカがそんなに悔しがることないのよ。シュウくんとコンテストバトルして、私が今しなくちゃならないことが見えてきた気がする。バトルセンス、磨いて強くならなくちゃ。ねえ、シトロン、ユリーカ、このあと時間空いてる?」




 「え、あ、いや……」




 「空いてるでしょう、お兄ちゃん。私たち、このあと、うんと暇してるよ」

 はっきりしない兄に代わり、ユリーカがはっきりと言いました。




 「良かった。シトロン、バトルの相手にちょっとなってくれないかな」




 「わかりました。僕で良ければお付き合いしますよ」

 セレナに頼まれたことで今度は、はっきりとそう言えたシトロンです。




 「ありがとう」

 セレナは笑顔でお礼を言います。




 「ねえ、セレナ、どこで練習するの?」




 「外の広場のところよ」




 「あ、セレナちゃん」

 セレナたちの姿をちょうど控え室の前で見かけたマイマイが声を掛けました。ピカチュウ姿のりっぷもいます。




 「マイマイさん、私、第一回戦、負けちゃった」




 「うん、向こうのモニターで観てたよ。悔しいね。シュウくん、強かったね」




 「本当強かった。さすが、ハルカちゃんのライバルだよ。じゃ、これから私、友だちと特訓しに行くね。マイマイさん、三回戦、頑張って下さい」




 「うん」




 「じゃ!」




 「マイマイさん、そろそろお願いします」

 セレナたちが行ったあと、少し時間が経ってから係の女性に呼ばれ、マイマイとピカチュウ姿のりっぷは心の準備をしながら移動していました。




 「マイマイさん、次、出番ですよね」

 ここでハルカが話し掛けます。




 「うん、ハルカちゃんはあたしたちの次だよね」




 「相手はハーリーさんだけどね」




 「あぁーら、あたしが相手で不満そうじゃない、かもちゃん」

 かもちゃんとは、ハルカのことです。




 「小細工、使ってくるからでしょう」

 絡んでくるハーリーにハルカは細目になって言い返します。すると、ハーリーも細目になり、




 「ふん、あんたなんか、小細工なくたってね、楽勝の楽勝よ」

 と、両手に腰をあて、ハルカの顔に近づけたかと思うと背を向けました。




 「そのセリフ、ずーっと前のポケモンコンテストのときにも聞きましたー」

 ハーリーがどこか行くとき、ハルカはあっかんべーをします。




 このとき、マイマイとりっぷはハルカとハーリーは仲が悪いことがわかり、苦笑します。




 二次審査のコンテストバトルの二回戦を終え、いよいよマイマイの出番がきました。




 マイマイはピカチュウ姿のりっぷとステージの前に立ちます。向かい側に立つサダムネに緊張しながら、彼女たちは二次審査の三回戦を迎えるのでした。

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