a fake flower

a fake flower

 行きつけになった花屋であたしは百合の花束を買った。赤なんかじゃなくて、白色の。それから待ち合わせに向かう。あの野郎と昼に会うなんて、随分と久しぶりな気がした。

 洒落たカフェのテラス席で待っていたのはフォーマルとカジュアルの比率が7:3くらいの格好をしたあいつだった。これからお高い所にでも行くんですか?それこそ、恋人とデートにでも。そんな感じの、品があって洒脱な様はそれもそれでよく似合っていてすっごい腹が立つ。

「これっきりにしよう、別れたい、終わりにしたいんだ、お好きなのを選んでどうぞ?」

 相変わらずだねと奴が笑う。何が相変わらず、だ。言うほどないだろあたしたち。それともあたしの胸のうち全部透かされちゃってるっていうのか。こいつならできそうだけど。だとしたら気味が悪い。あー、ほんと、いけ好かない。こいつの何がいいんだろう。顔以外で。あとスタイル。

花束どうしたの?そう聞かれ「ああ、これ?」とできる限り何気なさを装ってあたしは言う。

「もらったのよ」

 これから出会うだろう未来の旦那に。

 そう胸のうちで呟いた。

 今に見てろよ、あんたなんかより数等いい男を捕まえてやるから。

 宛もないくせに、反抗心だけがから回った無様な意気込みをひた隠しにしてあたしが言うと、そりゃなによりと奴が笑う。

「そういうあんたこそ、なあにその恰好」

 食事の予定がねと言う。ふうん?食事ねえ。




「ああ待って」

 別れ際、なに?と足を止め、振り返ろうとしたあいつをいいわよ、前向いてなさいよと言って押しとどめる。何かついてるわよ、とってあげる。適当な言葉を並べたて、あたしはたっぷりと、百合の花束を、その花粉を奴の背中に押し付けた。

 気づいているのか、いないのか。構いやしない。それから「然様なら」とあたしはあいつの背中に向かって綺麗に笑ってやった。ね、でもあんたはそれが見えないのよ、一生。

 ざまあみろ。

 踵を返して、いい女を気取ってあたしは立ち去る。全然そんなことないんだけど。歳食って何ができるようになったかって、ヒールの高い靴を履いても転ばなくなっただけ。身の丈なんてちっとも分かりやしない。老いだけが迫って、いつの間やら若さが枯れていく。

 振り返ってやるものか。

 あれに気づいた時、あの男はどんな顔をするのだろう。一体何だと思うのだろう。

 答えなんて教えてあげない。強いて言うなら、ちょっとした嫉妬ってところかしら。

 それも、ほんの、かるーいやつ。

 どうせあんたならこのくらい卒なくやり過ごすんでしょ?つまんないの。

 ――――せいぜい、お幸せに。


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