【版権】157680000を飛び越える【MHA×うちの子】

静萢@MHA同期組推し
@ysa_sousaku_Sz

157680000を飛び越える 3

さぁ行ってきなさいと放牧して

インカムから届く音声を聞きつつどの生徒の所にも

すぐ行ける位置をキープしておく

組み分けも生徒主体でさせてみたが

中々面白い組み分けで動いてるなとメモを目でなぞる

自分の担当チームの一組に目が留まる


「ここは絶対組まないと思ったんだけどな」


第三チーム、相澤消太・山田ひざし

対照的な二人がどうやってチームを組むに至ったかは分からないが

初日揃って物言いをしてきた辺り、どこか気が合うのかもしれない

商店街を歩きながらすれ違う生徒に一言アドバイスをしつつ

それぞれの行動を記録していく

どんな活動でどんな風に個性を使ったか

この授業でその後のヒーロー像を大まかに決めていく大事な時間

二時間ぶち抜きの授業が半分を過ぎた頃

俄かに商店街が騒がしくなる

進行方向から走ってくる人だかりに押されながらも道の端へと移動する

それと同時に耳に届く生徒の悲鳴と爆発音


「白羽!!ヴィランだ!!生徒が巻き込まれて」


インカムから届く声を脳が判断する前に翼は開いていた

薄く緑に色付く翼は羽根を散らしながら急上昇する

見れば前方に爆発の火炎と立ち上る煙

逃げ惑う人はそこからやってきているようだった


「クロスさん、生徒の点呼は!」

「殆どこちらに退避させたが、まだ二人戻ってない!」


誰が、と聞く前にインカムから聞こえてくる声


「YEAHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!」

「は!?」


インカム越しでも鼓膜を破らんばかりの声量に思わずバランスを崩す

驚異的な声量、これはヴォイスの個性だ

そしてそれの持ち主は


「山田と相澤!どこにいる!?」


山田ひざしだ、恐らく傍に相澤消太も居るはず

反響した声を頼りに火炎の上がるほうへと急降下する

そこには、爆発のど真ん中で何やら喚いているヴィランと

地面のレンガが吹き飛び丸見えになった土と折れた街頭

煙を翼が起こす風で振り払い、地面に降り立つ

二人の姿は、ヴィランを挟んだ向かい側

インカムに手を添える


「二人ともそこにいるな、今クロスアイが君達の保護に向かっている。俺が気を引くから、全力でこの場から離脱して」


今考えうる最善をインカム越しに伝える

クロスアイがここに到着するまで残念ながらまだ時間が掛かる

子供二人を抱えて戦える個性ではないことも考慮した

インカムからは何も聞こえてこない


「ちょっと、分……」


分かったか、と言い終える前に声の大砲が飛んでくる

射線上に自分が居るのもお構いなしの大音量に空へ回避を余儀なくされる

ヴィランは何かを叫んで二人に向かっていく

お前らが気を引いてどうすんだ!!


爆炎が上がる


巻き上がる白い羽根


焼け焦げる嫌な臭い


頭上に、影


「微妙に間に合ってませんよ、クロスアイ先生」

「寄る年波かな、息切れしてしまったよ」


爆炎が二人を包むまでの短い時間

限界速度で急降下し二人を抱きしめた

耐火性に優れた翼は半分焦げてしまったが

それでも炎の波を防ぐ十分壁となってくれた

向かってきたヴィランは顔を半分出した状態で布に包まれている

その布の端を掴んでいるのは、肩で息をするクロスアイ

腕の中の二人は目を見開いたまま、何かを口ごもる

言いたいことは山ほどあったが、肺の痛みで上手く息が吸えず

頭を軽く叩くだけに留めた


「校舎に戻る、他の生徒と一緒にバスの中で待機」


有無を言わせない語気に素直に頷いて

バスのあるほうへと走っていく二人

途端に口から溢れる鉄臭い液体

限界速度を超えて飛行すると毎度こうだ

さり気無く背中をさすろうとしてくれるクロスアイの手を払う


「やっと、諦めがついたんで」


どういう意味か、きっと分かっただろう

クロスアイは眉を下げ、漸く到着した警察へとヴィランの引き渡しに向かう

自分で振り払っておいて、名残惜しくなるその手の温もりに

情けなくて情けなくて

口元の血を拭うこともせずにしばらく立ち尽くしてしまった


サイレンの音とインカムの呼び出し音が頭に響く




――先生ってば未練がましい――