千晶先生の逆行物語(仮称)

1再び歩みだす

忘れるな あの時の怒りを


忘れるな あの時の絶望を


忘れるな あの時の己が無力さを



瞬きを数回

目の前に広がる光景は10年以上前に引き払った、教員時代に住んでいたマンションの天井であった。

視線を右に向ければ、事故で失ったはずの右腕がある。

傍らに置いてある携帯で日付を確認すれば、条東商に赴任する5か月前…稲葉たちが高2の1学期が始まった頃を指していた。

戻ってこれた。

年齢不詳な黒の術師曰く、どの時代のどのタイミングまで戻るか分からないと言われていたがなかなか悪くないタイミングだ。

己の体調悪さを除けばだが。

この時期は、前赴任先にて盛大に体調を崩し休職してから日が浅い。

つまるところ、動きたくとも肉体的にも監視の目(俺の看病係兼見張り役のマサムネの事である)的にも動けない。

非常に困った。

この肉体はまだ霊力に慣れていないにもかかわらず、霊力の塊である魂が無理やり入りこんだ状況であり、いつ耐え切れなくなって暴走するかわかったもんじゃない。

それに、これだけ制御無しに霊力を出し続ければ、妖怪の類もだが、力のある人間にも気づかれる。

そうなれば俺の制約に引っかかりペナルティを喰らう可能性がある。

まあ、霊力に関してはあてがあるので動けるようになったら抜け出していくとしよう。

取敢えず現状としてできるのは…

「チアキ大丈夫…おい、熱ぶり返してないか!?」

「悪い、点滴追加で」

戻ってきてしまった反動でぶり返した熱を下げ、動けるようになるようにすることだけだ。



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