春のパズル

✿*. 𝕟𝕚×𝕟𝕒✿𝕤𝕙𝕚𝕡𝟡.𝟜 ❀.*・゚
@solabell9601

成りかけの空


たすきを身体にかけながら、借り物が書いてある紙が入っている箱へ急ぐ。

私は球技と水泳は得意なのだけど、走りにはあんまり自信がなくて後ろの他の部の選手に距離を詰められてしまう。


「うぅ〜!!負けないもん!」


なんとか1位のまま箱を持っているニコ先生のもとまでたどり着いてその中身の紙をひく。


「これ!!」

「お〜☆お題は何かな?」

「え〜っと……うぇぇぇぇ!?」

「おや?」

「『気になる人』…!?」

「リィンちゃん大当たり〜☆」


全然大当たりじゃない…!こんなベタな展開があるものなの…!?


「ベルが余計なこと祈ってるからだよぉ〜!」

「いいじゃないか☆この機にリュイくんにアタックしちゃえ☆」

「なっ!?なんで知ってるのニコ先生!」

「見てたらわかるよぉ〜☆」

「わああああああ〜!!」


恥ずかしさとかいろいろで涙が出てきた。

もうとりあえず走るしかない。

ええい!もういい!紙の内容を見せなければいいんだから…っ!!


「…っ!!…リュイくんっ!」

「へっ?えっ?リィンちゃん!?」


3年生のクラス席に居たリュイくんを見つけてその手を掴む。

周りの3年生からひゅー!とか行ってやれリュイ〜!とかってひやかしの声が飛ぶ。

恥ずかしいけど、もうなんかいっそ恥ずかしくなくなってきた。


「き、きて!」

「あ、借り物?いいよ〜」


案外すっと付いてきてくれて助かった。

このまま聞かれないでゴールできれば…


「ところで、借り物の内容は?」

「んんっ!!!!」

「だ、大丈夫リィンちゃん!?」


動揺しすぎて思い切り転んでしまった…。す、すごく恥ずかしい…!


「だ、大丈夫…!え、えっと…内容は…その…紅茶部が優勝したらで!!」

「あ、そうだね、早く行かないといけないしね…!」


そういうことじゃないのだけど、つい勢いに任せて言ってしまった。優勝したいけど!したら言わなきゃいけない…!?

あ、なんかすごいドキドキしてきた…!でも…


「……っ!リィン、頑張って…!」

「リィンちゃーん!!あとはテープをきるだけだーっ!いっけー!」

「リィンさん、まだ走れば優勝を狙えますよ!」

「…!みんな…!!」

「…よし、リィンちゃん、走ろう!」

「…うん!!」


リュイくんの差し出された手を握って、2人でゴールへ向かう。


《続々と借り物を終えてゴールへ向かう部が増えてきていますね〜》


必死すぎて今まで聞こえてなかった先生たちの実況と解説の声が響く。


《現在1位はバスケ部、2位に僅差で紅茶部、3位に陸上部です!》

《すごい!紅茶部、文化部ですが頑張っていますね〜!!》


実況の通り、私とリュイくんのすぐ目の前を走るのはバスケ部の人だ。

まだ、追い抜ける…!


「負けない〜!!!!」


バスケ部の人も私に負けまいとスピードを上げる。

目の前にゴールテープが見える。


《ゴーーーーール!!!》

《えー!?え、今どっちが先でした!?》

《これはビデオ判定ですね〜!少々お待ちください!》


走りきって息がきれ切れの私にエミリィ先輩とミーカ先輩が抱きつく。


「お疲れ様〜っ!!すごい!めっちゃアツいたたかいだったー!!」

「…うん、2位だとしても、悔いはない」

「お疲れ様でした、見ているこっちもドキドキしてしまいましたよ」


《さて、結果がでました!》

《結果は—————》

《本当に僅かな差で、紅茶部です!!おめでとうございま〜す!!》


『やっっっっったー!!!』


先輩達と、リュイくんも一緒になって喜ぶ。

つい嬉しくてその手を握って飛び跳ねてしまう。


「やったねリィンちゃん!」

「うん!ありがとう…!」


嬉しくてやっぱり泣いてしまいそう。

私の涙腺緩いなぁ。


「あ、そいや借り物はなんだったの?なんでリュイがいるの?」

「…それ、気になってた…」

「実は僕も知らないんだ、リィンちゃんが優勝したら言ってくれるって…」

「うっ…あの…それは…」


たじろぐ私に、ミーカ先輩がなにかを察した様子で、わざとらしく大声をあげる。


「あー!そーだ!私このあとちょっと出る競技がー…!エミリィ先輩もちょっと作戦練るの手伝ってもらえますか!うん!」

「……?いいけど…」

「私もお手伝いしましょう」


分かってなさそうなエミリィ先輩の手を取りその場をあとにしようとする。

ヴィンス先生も微笑んでこちらに目配せする。

なに!?みんな察しが良すぎない!?


「忙しいんだね…?みんな…」

「そ、そうみたい…」


もちろん私とリュイくんを2人きりにしてくれたんだろうけど…!


「あ、あの…その…借り物…はね…」

「うん?」


リュイくんの微笑みが私の心臓の音をさらに加速させる。


「『気になる人』……、なの…」

「…………!」

「………………………」


恥ずかしくてきっと真っ赤だから、顔を上げられない。でも、リュイくんの反応は気になる。

勇気をだして少しだけ顔を上げてみたら、リュイくんも真っ赤だった。


「……………へっ?」

「……えっ、あっ…!」


真っ赤になったままそっぽを向いてしまうリュイくん。


「あ、あの…リィンちゃん…あんまりこっち見ないで…」

「…あっ!あっ…ごめん…!」


なに、なんなのその反応…!?

私、ただただ片想いだと思ってたんだけど、


「(期待しちゃっても…いいのかなぁ)」


しばらくして、こちらを向いたリュイくんは、なにかを言おうとしたのだけど、遠くからベルが私に手を振っているのに気づいてまだちょっと赤い顔で私に言う。


「あ、ベルちゃんが呼んでるよ」

「…あ、う、うん!」


告白したっていうわけでもないんだけど、なにか言葉を期待してしまった。

いや、それはずるいか…!

立ち去ろうとした私の手をリュイくんがもう一度だけとる。


「あ、あの…!」


緊張してるって顔で、最後の方は少しうつむきながら言う。


「……僕も、気になって…る、…から…」

「…!!!」


それはずるいよリュイくん、そんな照れた顔で言われたら、私はリュイくんのことをもっと諦めきれなくなっちゃうよ。


「………また、……用がなくても、声かけてよ」

「!!……うん!またね!」

「うん」


優勝しただけじゃなくて、予想外に嬉しいことが重なって飛び跳ねたいくらい嬉しい。

リュイくんに手を振って、‪ベルのもとに急ぐ。



6 / 7

著作者の他の作品

シャルくんの癖をリズちゃんに聞いたスピネルがシャルくんで遊ぶ話。若干意味...

うちの子たちのHappyなHalloweenだよ!よその子も出てくるよ!お借りしたよ!S...