素直な気持ち

うさ大佐@7/7ナナライ
@usataisa0723

しとしとと降る雨の音で目が覚めた。

時計を見れば丁度お昼時。

昨夜の情事があまりにも激しかったため、こんな時間まで眠りこけてしまった。

隣ではぴょんぴょんと跳ねたくせっ毛のもじゃもじゃが眠っている。

その顔があまりにも間抜けで幸せそうで、僕は思わず笑ってしまった。



********



最初はお互い憎しみ合っていた。

顔を合わせれば視線を、言葉を、時には魔法をぶつけあって…ほとんど僕が一方的に攻撃されていただけだったが。

絶対にこいつとは分かり合えない。分かり合おうとも思っていなかった。

それはポッターも同じだと、そう思っていた。

だが、ある日からポッターは僕を攻撃してこなくなった。

きっかけは何だったのか…休み明け、父親からの暴力でボロボロになってホグワーツに戻った僕を、ポッターが医務室へ運んだ時だったのかもしれない。

変わったのはそのくらいの時期だった…と思う。

ポッターの事は未だに良くわからないので、正確な事はわからないが。


ポッターは僕を攻撃してこなくなった代わりに、僕に告白をしてくるようになった。

一番最初の告白は食堂で食事中の時だったと思う。

全校生徒が集まって食事をとっている真っ只中、ポッターは突然立ち上がったかと思えば僕の前までやってきて大きな声で「好きだ、付き合ってください。」と行ったのだ。

初めは新手の嫌がらせかと思ったが、その日から毎日ポッターは僕の元へやってきては好きだという。

その目があまりにも真剣で、とても悪ふざけには見えなかったが、如何せんずっと僕を虐めていたような奴だ。

信じた途端に嘘でした、なんてこともありえる。

ポッターにどう返事をしたらいいのかわからなかった僕は、幼馴染であるリリーに相談したのだ。

そしたらリリーは「いいんじゃない?付き合ってみても。そしたらジェームズの気持ちが本物なのかどうかわかるし、貴方も少しは変われるかもしれない。」と言った。

だから僕は「お試し」という形で、ポッターと付き合う事にしたのだ。



********




お試しの恋人生活が始まってから、ポッターは毎日僕の傍へ寄って来た。

急に抱き着いてきた時は驚いて突き放してしまったが、それ以降はスキンシップを控えて接してきた。

ポッターの親友のルーピンやブラックは「普段のジェームズではありえない」と驚いていた。

僕の嫌がるようなことは一切しない。今まで遊びで付き合っていた女生徒たちとも、今は関係を終わらせて僕を一途に見てくれる。

誰かから愛されるという事に慣れていない僕は、それがくすぐったく、胸がきゅっと締め付けられるような、ふわふわとした気持ちになった。


「あぁ、こいつは本気で僕の事を…」


ポッターの気持ちが痛いほど伝わってきて、ようやく自分の気持ちにも気付き始めてきた。

きっと僕も、ポッターの事が好きなのだと。

だけど、僕は素直にはなれない。

本当は好きだと、そう言って抱き着いて温もりに包まれたい。

けれど好きだと言われても「そうか。」などとそっけない言葉しか出てこない。

そんな自分に嫌気がさす。

それでもポッターは変わらず僕を愛して、僕のそばにいてくれた。

だから僕もそれに甘えていたんだ。


言わなくても、こいつは僕から離れない。

ずっと傍にいてくれる…と。



********



ある日、ポッターはいつもと様子が違った。

どこかそわそわしているような、不安気な顔をしていた。

そして、僕の顔をしばらく見つめた後、


「ねぇ、セブルス。お試しって言って付き合いだしてもう3ヶ月になるよね。そろそろ、僕たち前に進まないといけないと思うんだ。」


と切り出した。

僕は正直内心焦っていた。

もし素直にポッターの気持ちを受け入れられなかったら、いつもみたいにそっけない返事をしてしまったら、こいつは僕の傍からいなくなってしまう。

そうわかっているのに、僕の口からは「好き」というたった二文字の言葉が出ない。

俯いて黙ってしまった僕を見てポッターは、


「無理しなくていいよ。嫌なら嫌って言ってくれていいんだ。でも、もし迷っているのなら、今夜君を抱かせてほしい。グリフィンドール寮の入り口で待ってる。」


そう言うと額に口づけて授業へと向かってしまった。

僕の想いはわかってる。

あとは言葉にするだけ。なのにそれができない。

だったらせめて行動で…。



********



夜、皆が寝静まった頃、僕は部屋を抜け出してグルフィンドールの寮へと向かった。

監督生のルシウス先輩や見回りの先生に見つからないかひやひやしたが、幸い見つかることはなかった。

寮の前へ辿り着くと、太ったレディが「ジェームズ・ポッターから話は伺っています。お入りなさい。」とドアを開けてくれた。

談話室へ向かうと、暖炉前のソファーにポッターが腰かけていた。

僕の顔を見ると少し驚いた様子だったが、すぐに笑顔になって僕を手招きした。

僕はポッターの元へ歩み寄り、前に立った。

するとポッターは僕の手をぐいっと引いて抱き寄せる。


「いいのかい、セブルス。もう後戻りはできないよ。」


「あぁ。」


「じゃあ、行こうか。」


「ポッターの部屋でやるのか?」


「ううん。アーサー先輩がね、特別に監督生の部屋を貸してくれたんだ。あそこは一人部屋だから。」


「彼は?」


「あぁ、アーサー先輩なら君のとこの…なんて言ったっけ?何とかマルフォイ。あいつのところへ行くって。」


「ルシウス先輩の?だからあんな簡単に寮を抜け出せたのか。」


「さ、行こう。」


ポッターの手に引かれるままついていく。

これから僕はポッターに…。

そう考えるだけで体が熱くなるし、緊張で震えるし。

それが繋いだ手から伝わったのだろう。

ポッターは僕の方を振り返るとくすっと笑った。



部屋へ着くと、ポッターは僕を優しく抱きしめた。

ポッターらしい爽やかで優しい香りが鼻をくすぐる。

それからベッドに押し倒されて、優しいキスがたくさん降ってきた。

ふわふわとしてそこから先の事はよく覚えていないが、ポッターが何度も僕の名前を呼んで好きだって言っていたのはなんとなく覚えている。



僕の気持ち、少しは伝わっただろうか?



********



「セブルス?」


物思いに耽っていると、突然声をかけられる。

隣を見ると、ポッターが目を擦りながら顔を上げた。


「起きてたんだね…って、うわ!もうお昼だ!」


「そろそろ食堂の料理が下げられるな。」


「えー!僕お腹ぺこぺこだよ…。」


「構内の屋敷しもべに何か頼めばいいだろう。」


「…それもそうだね。」


腹が減っただの何だのとぼやいていたポッターは持ち上げた体をまたベッドに沈ませる。

そして僕の方を見て「体は大丈夫?」と聞いてきた。


「腰とお尻が痛い。」


「ごめんよ…。でも、嬉しかったんだ。」


「何がだ?」


僕がそう尋ねるとするりと指を絡めとって少し小さな声でぽつりと、


「ほんの少しでも、君の中に僕を好きな君がいたらいいのにって、そう思ってたんだ。だから、君が僕の誘いを受け入れてくれて、嬉しかった。」


そう言ってはにかんだ。



「ねぇ、僕の事、好き?」


ポッターが問いかける。


「あぁ。」


僕はそう答えると、ポッターに優しくキスをした。

これからは少しは素直になれる気がする。

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