味わいたいのは

みもち(創作アカ)
@mimochi_sousaku

「ポッキーゲームしよう!」

ノートに並ぶ数字を追いかけていた蓮二の視界にポッキーを差し出して、弾むように愉しげに、彼女は言った。

目前で踊るように揺れるポッキーを暫し見つめた後で、今日が何の日かを思い出した蓮二は、ふ、と小さく笑う。

「なんだ、キスがしたいのか?」

「ちっ、ちがうっ!なんでそうなるの!」

「違うのか?」

「ち、違わなくは…ない、といえばない……っじゃなくて!私はただ、純粋にゲームとして楽しもうって…」

「ゲームなら俺はやらないぞ」

素っ気なく言って手元の作業に戻ると、「えぇ~…」という彼女の落胆の呟きが耳に届く。

「なんで?面白そうじゃない」

「どこが面白いのか言ってみろ」

「ん~…食べてる間に感じる、このままじゃキスしちゃうかも!?っていう、ドキドキとか…駆け引きとか?」

「それはポッキーが無いと感じないものなのか?…例えば」

おもむろに席を立ち、拗ねたように俯いている彼女の顎を、くい、と持ち上げる。

近付けた顔を、もう少しで唇に触れる、というところですっと横に逸らし、

「…これでは、ドキドキはしないか?」

耳元で、囁く。

「えっ…ちょっ…近…」

「更に言うなら、ここは部室、今は土曜の夕方。人は少ないが、誰もいないとは言い切れない」

「まっ…待って、あの…」

「ここで、俺とお前がこんな風にしているのを、誰かに見られるかもしれない」

「ちょっ…耳、やめ…っ」

「それでも、ドキドキはしないか?」

「しっ……します!しますから取り敢えず離れて!」

彼女の力一杯の抵抗も蓮二には大したものではなかったが、素直にそれに従い、身体を離す。

「……意地悪!」

「お菓子の有無に拘わらずイタズラは出来るということだな」

「ハロウィンはとっくに終わりました!」

「そうだったか?」

怒りより恥ずかしさや照れによって頬を上気させながら自分を睨み付けてくる彼女が可笑しくて、それ以上に可愛くて、蓮二はつい笑みを零す。

「なに笑ってんの!?ホンっト、意地悪!」

「済まない、お前があまりに可愛くて」

離したばかりの身体を再び引き寄せ、それから唇に、軽く触れるだけのキスを落とす。

「……………!?」

「ついでに言っておこう。ポッキーの味がするキスよりも、お前を味わうキスが、俺はしたい」

「……バカっ」

とん、と軽く胸を叩かれたのを合図にして、蓮二は更に深く彼女を味わうべく、唇を重ねた。