君の声を聞かせて。

SHION@銀魂、黒バス、DAYS…ex
@shion_aniaka

部長と主将

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その黒髪は陽の光を浴びていっそう目を惹いた。…槇原先輩だ。と降谷は少し離れた場所から彼女の姿を見つけた。


だけど彼女は1人じゃなかった。その隣にはわりと長身の男が1人。誰かなんてすぐわかってしまう。見慣れた後ろ姿だった。


御幸先輩…


こうして彼女を目で追うようになったのはいつからだろうか…。初めて取材交渉に来てくれた時から、いや初めて彼女を見た時からだ。


彼女の姿は野球部ではよく話題にあがる。槇原というワードでなくとも『新聞部』とか『部長さん』とか。だからそれとなく存在を知っていた。


必死でメモをとる姿も、一生懸命話を聞く姿も、笑いかける仕草も…自分に向けられたものじゃなくてもそれを見る度になぜか彼女の事が気になっていった。


しろくまアイス…なんてしょうもない理由じゃないことぐらいわかってる。

でも降谷にとっては初めての感情だった。自分でも理解が追いついていないのだ。


せめて知ってる人じゃなかったら良かったのに…


一番に思ったのはそれだった。

降谷は2人を避けるかのように反対方向から少し遠回りをして、次の授業のため特別教室に向かった。






「御幸先輩。今日ブルペン入ってもいいですか?」


午後練が始まってまもなく、防具をつけている御幸の元に降谷がやってきた。


なんか降谷、機嫌悪そうだな…


「今日は投げ込むなって言ったよな、朝練の時。」


昨日の夜、こいつは小野に受けてもらってた。小野曰くけっこう投げ込んだらしいし…


降谷の表情は変わらない。こいつ、ほんに曲げないよな、こういう時は。


「どうしたんだ?そんな焦って。」


「焦ってないです。ただ御幸先輩に捕ってもらいたくて…」


御幸にとってそう言ってもらえるのはキャッチャー冥利に尽きるというものだが、今降谷に向けられているのは『信頼』ではなくなぜか『敵意』な気がした。


だって、今日の降谷は何か出てやがる。

オーラってゆーか、なんというか。俺、何かしたっけ…


「悪ぃな、俺今日ノックはいるから……」


いや、でも待てよ、こういう日のこいつのボールって荒れるけど質はいいよな…


御幸のキャッチャーとしての本能が反応し始めた。あいつが今、何でオーラを撒き散らしてるかはさておき、この感じってセンバツのときのアイツに近い気がする。


「やっぱ受けるわ。今からでもいいか?」


降谷はコクっと頷いた。





「ナイスボール!」


球のうねりはいつもに増していた。手がじんじんと痺れる。


降谷は黙々と投げ込んだ。ったく、今日のこの気迫はどこから来てんだか…いつもこれぐらい球威があればいいんだけど。


「ここからなら見やすいんじゃない?ブルペンなら安全だし。」


「唯ちゃん、ありがとう。」


「うん!じゃあ私戻るね。」


声のする方に視線をやると夏川と槇原がいた。槇原はデジカメを手に持っていた。


「御幸くん!新聞部さんね!」


「おう。」


夏川は御幸にそう告げると足早にブルペンを去った。


マスクをとって槇原に視線をやると槇原は小さく手を振った。俺はグラブをあげてそれに応えた。

そーいや、写真撮りに来るって言ってたよな。そんなことを考えながら御幸は再び降谷の方に向き直した。


グラブを構えると間もなくスパーンと音を立ててボールがグラブに収まった。


また球威あがってる…


御幸は降谷にボールを返した。

荒っぽいがいいボール。ほんとあいつどうしたんだ?


思わず御幸も夢中になってしまい、けっきょく予定よりも多く投げさせてしまった。


「降谷、ラスト。」


御幸はど真ん中にグラブを構えた。降谷は少し驚いているみたいた。

普段ど真ん中になんて投げさせないからな…


シュン…と降谷の指先からスピンの効いたストレートが放たれる。このボールのうねりこそがこの男のストレート…いつもよりいい伸びだ…


ドン…


御幸は鈍い音が後ろから聞こえて振り返った。ボールが転がっている。自分のグラブの中にボールは入っていなかった…


俺が、捕れなかったのか?


たしかにグラブに収まるように見えた。しかし少し高めのストレートがさらに伸びた。まじかよ…こいつ。


投げた本人もびっくりしてるぐらいだ。


「今の指のかかりな、忘れんなよ。」


降谷はこくっとうなずいた。







「はいチーズ!」


こういう時ってどういう顔をすればいいものか。

御幸は我ながら微妙な表情をしてると思った。横にいる降谷も同じことを考えているらしい。


「槇原~、キャッチャーマスク被っていい?」


「いいわけないでしょ!」


速攻で拒否される。写真って苦手なんだよな…


降谷の取材が最後まで終わったらしくそこに御幸が呼ばれた。

どうやら主将とエースのツーショットが欲しいらしい。


槇原が写真やら何やらを確認してる間に御幸にはひとつ降谷に確認しておきたいことがあった。


「なー、降谷お前これからどーすんの?」


降谷は何も言わず首をかしげた。とぼけたのか?それとも意味がわかってないのか。


「もう槇原来なくなっちまうよ。」


降谷の表情が少し変わった。やっぱりこいつ…そういうことなんだな。


「どうもしません…。」


降谷は手に持ったボールを指に入る挟んだり抜いたり…俺の方を見ようとはしなかった。


「知らねぇぞ。あいつけっこうモテるぞ?」


「僕も知りませんよ?そんな余裕でいいんですか…」


今度ははっきり目を見て言われた。

おいおい、こいつまでかよ。


みんなそんなに俺が槇原のこと好きなように見えてんのかね…


まぁ、あながち間違いではないのだけど。