アズカバンの囚人

荒らされる

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 図書館で課題を終わらせられるだけ終わらせたサクラとハーマイオニーは、夕食前に中庭へと訪れた。

 既にアネモネの花が咲いていて、赤や白やピンクの可憐な姿を見せている。昨日確認したときも特に異常はなかった。

 渡り廊下に差し掛かり、陽が落ちて薄暗くなっている中庭の方へ向いてみると、信じられない光景がサクラの目に映った。

 花壇の様子が明らかにおかしい。遠目から見ても、荒らされたように見える。


「…………」


 サクラとハーマイオニーは言葉を失いながら中庭へ下りる。 

 花壇は土が掘り返され、花もみな跡形もなく千切られて色とりどりの花弁がでこぼこになった土の上で散らばっている。白い柵も折られて倒れていた。

 所々が焼かれていて、焦げたような臭いもする。

 手で荒らすことに加え、魔法も使ったようだった。


「まあ、かわいそう」


 すぐ近くでキンキンとした声が聞えてきた。咄嗟にそちらの方を向くと、ベンチに座っているパンジーとその友達ふたりがいたのだった。

 どうやらあまりの衝撃的な出来事に、彼女達がそこにいることに気付かなったようである。


「何よ、その目」

「まさか、私達がやったとか言うんじゃないでしょうね」

「証拠はあるの?」


 正直に言って疑わしい。けれども、彼女達が言うように証拠がない。

 花壇をこのようにしたのであれば、手や体が汚れそうだが、勿論見た限りでは汚れていないのである。

 それでもサクラは聖人君子ではない。この3人の仕業だと思ってしまうし、彼女達を見ていると、沸々と怒りが沸き上がってくる。


「何よ。何か言いたいことあるの?」

「サクラ……証拠がないわ」


 ハーマイオニーは流石で、震え声ながらも冷静に述べた。


――そう、証拠がないんだ。分かってる。


「……誰も、あなた達のせいだとか言ってないでしょ」


 漸く口を開いてそう言えたが、思ったより涙声が出てきてしまった。


――この人達であってもなくても、犯人が憎い。あんなに毎日毎日様子を見て世話をして魔法をかけて、それに、マルフォイくんにもルーナにも、みんなにも褒めてもらえたのに。


 今までの、苦労しながら失敗しながら花を育てた記憶や、ドラコ達に掛けてもらった言葉などを思い出すと、胸が締め付けられて涙が溜まってくる。


「犯人じゃないなら、黙っててよ。あなた達には関係ないでしょ」

「フン! ちょっと男子にモテるからって、いい気になってるんじゃないわよ」

「何よその言い方」


 ここでハーマイオニーが言い返してくれた。


「サクラがいつ、いい気になったっていうのよ」


 ハーマイオニーも鼻声になり、涙を堪えながら言う。


「サクラがどんなに一生懸命ここの花を育てていたか、この城の全員が知っているはずよ。それなのに、こんな風にされて、サクラにかけてあげる言葉が、そんなものなの? 私は知ってるわ。悪いけど、私が一番知ってる。親友だもの。だから、私が思うわ。犯人があなた達だって」


 先程証拠がないと言ったハーマイオニーが、いつも冷静に物事を考えて判断出来るハーマイオニーが根拠もないことを言い、サクラは思わず彼女を見た。


「何ですって!」

「証拠があるって言うの?」

「ないわ。証拠って隠すものでしょ。だからそんなものないし、見つからない。でも、花をこんなにされたサクラにあんな言い方であんなことを言うなんて疑わしいわよ。それに、逆に訊くけど、あなた達こんな時間までこんなに寒い中ここで何をしてたのよ」

「あ、あんたに関係ないじゃない」

「関係ないわ、全く。でも、こんなときにこんなところでこんな時間までいるってことは、この花壇をこんな風にして、そしてサクラが来るのを待ってその反応を見るためだって思われても、文句は言えないわ。サクラが、あなた達を犯人だと思わなくても、私が思ってやるわ」


 ハーマイオニーにここまで言われ、パンジー達はぐっと言葉に詰まる。


「もうどこかへ行って。これ以上私に犯人だと思われたくなければ、さっさと行って」


 パンジー達は、サクラ達を睨み付けながらその場から去っていった。


「ハーマイオニー」


 彼女の名前を呼ぶと、涙が零れて頬を滑っていった。


「ありがとう」


 そう告げると、ハーマイオニーが抱き着いてきた。


「ありがとう、わたしの代わりに言ってくれて」

「私、ここの花が好きだったのよ」

「うん」

「サクラと一緒にいる時間が少なくなってしまったけど、ここに来てここの花を見てサクラのことを思っていたの」

「うん」

「ひどいわ、本当に」

「うん」


 ふたりは抱き合って泣いた。

 苦労して育てていた花壇が荒らされて言葉に出来ない程悲しく辛かったが、ハーマイオニーの気持ちがとても嬉しかった。


「犯人を、捜すの?」


 サクラの肩口で、ハーマイオニーが訊いてくる。


「ううん。そんなこと、してあげない。わたしにはそんな暇ないもん」

「そうね。そんなことより、この花壇を作り直さなきゃね」

「うん」

「――ねえ、それ、どうしたの?」


 そこで声を掛けられた。

 渡り廊下からレイブンクローの女子生徒が2人やってきた。


「分からないの。今ここに来たらこうなっていて」


 サクラとハーマイオニーは涙を拭う。

 女子生徒達が悲痛な表情をして荒らされた花壇を見遣る。


「ひどい」

「誰がこんなことを……」

「分からない……」

「あなた、サクラ・クジョウよね?」


 そう訊かれサクラが頷くと、ふたりは一度顔を見合わせてそれから優しい表情をこちらへ向けた。


「私達、いつもここの花きれいねって話してたの」

「ほら、あなたってスリザリンのマルフォイと色々と噂になってるじゃない? それだけでイメージが悪かったんだけど」

「でも、こんなにきれいな花を咲かせているんだから、悪い人なんかじゃないって信じてたの」

「ねえ、よかったら、ここの花壇を作り直すの、私達にも手伝わせてくれない?」

「家に頼んで花とか種を送ってきてもらってもいいかしら? 迷惑じゃない?」


 嬉しい言葉に、またも言葉を失うサクラ。


「私も手伝うわ、サクラ。みんなで一緒に花壇を作りましょう」


――そうだ。何も自分ひとりでやる必要なんかないんだ。みんなで一緒にやった方が、断然楽しいに決まってる。


 サクラは目の前の心優しいふたりに、そして隣の親友に心からお礼を述べた。



 次の日の夕食のとき、コノハズクがサクラへ手紙を届けてくれた。差出人はドラコだった。

 サクラは思わず目を見開き、すぐにでも開封したい衝動に駆られるが、ハリーやロンに見られてしまうのが嫌なので、寮に戻ってからじっくりと読むことにする。

 夕食後、ハーマイオニーとラベンダーとパーバティと一緒に寮の部屋に戻ってきたサクラは、ベッドに腰掛けてドラコからの手紙を開いた。



Dear Missクジョウ


 花のことは聞いた。僕も悲しく思う。

 僕と関わっていることが原因でなければいいけれど。

 犯人は分かったのかい? もし分かっていなければ、僕も一緒に探すよ。

 僕に何か出来ることがあるなら言ってほしい。

 君からの返事を待っている。


From Malfoy



 読んだ後、サクラは胸がいっぱいになってさっそく羽ペンと便箋を取り出した。



Dear Mr. Malfoy


 手紙ありがとう。あなたの気持ち、とてもうれしいです。

 正直言って、花壇を荒らされた原因は分からないの。でも、きっとあなたとの関係が原因ではないから、心配しなくていいよ。

 犯人は捜さないつもり。そんなことより、早く花壇を作り直したいの。

 今度は自分ひとりでやるんじゃなくて、みんなで楽しく作っていこうと思う。

 あなたも、時間があるときに中庭へ寄ってみてね。


From サクラ



 書いた手紙を何度も読み直し、ハーマイオニーにも文法などに間違いがないか確認してもらい、寝る前にクルミへと託したのだった。


――写真のこと、何も訊かれなくてよかった。



 クリスマス間近になると、校庭が霜柱に覆われてとても眩しい景色になった。

 フリットウィックは、自分の教室にきらきら輝く妖精を飛ばしており、クリスマスを意識してそのような行動をする彼が可愛らしいとサクラは思った。

 サクラ達の寝室では、サクラが雪を降らせてみようとしたが上手く行かず、ハーマイオニーと力を合わせて室内の温度を下げずにひらひらと舞う雪を発生させることに成功した。このことで、サクラとハーマイオニー、そしてラベンダーとパーバティの4人ではしゃいだのだった。

 因みに、ラベンダーとパーバティにはサクラのドラコへの想いは既にばれていて、ふたりはそっと見守ってくれるようになった。サクラの言うドラコはとても信じられないが、サクラが嘘を言う訳がないと理解してくれたので、ふたりには感謝している。

 ラベンダーとパーバティは、クリスマス休暇には実家へ帰るようだが、サクラとハーマイオニーとロンはホグワーツに残るつもりである。ロンは、2週間もパーシーと一緒に過ごしたくないと言っていた。まだパーシーとの喧嘩が続いているようである。

 何が喧嘩の原因なのか訊いてみると、新学期が始まる前、みんなで漏れ鍋に泊っているときに、一緒の部屋になったパーシーの写真にロンが紅茶を零してシミを作ってしまったと責めるかららしい。因みにその写真はパーシーの恋人であるペネロピ―・クリアウォーターで、鼻の頭に出来たシミが恥ずかしくて、ずっとフレームの影に隠れてしまっているという。

 サクラとハーマイオニーは、ハリーが心配で傍にいたい為にホグワーツに残るのである。しかし、ハリーは過剰に自分が心配されることが好きではないので、気を悪くさせないように念の為、どうしても図書館で調べたいことがあるという理由にしておいた。

 ホグワーツに残る旨を祖父母に伝えるとふたりを悲しませてしまったが、それだけホグワーツが楽しくて友達も多く出来たのかと喜んでくれたのだった。

 サクラは、今は学期末に行けるホグズミードへ思いを馳せた。

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