アズカバンの囚人

不思議な3人組

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 ルーナの言う通り、渡り廊下から中庭に降りてきたドラコ。

 その姿を見ただけで心が温かくなり、サクラは彼へ手を振った。


「ハーイ、マルフォイくん……あ!」


 そこで手が土で汚れているのに気付き、両手を広げて見た。


「あ、えーっと、えーっと!」


 自分が酷く汚いことに気付いたサクラは、慌てて両手をこすって土を落とそうとする。清め呪文も忘れて、とにかく焦ってしまった。

 するとドラコが、杖を取り出してくる。


「花の調子はどうだ?」


 ドラコが少し笑みを浮かべながら杖を振るって、そう訊ねてきた。

 サクラは恥ずかしくなって、忽ち綺麗になった両手を胸の前で組んで答える。


「ありがとう。うん、いいよ。今、新しい球根を植えてたの」

「そうか」


 頷くと、ドラコは傍らのルーナへ視線をやる。


「知り合いか?」

「うん、そうなの」


――もう友達って言っていいのかな? まだ会うの2回目だけど。


「ルーナ・ラブグッド。私、ここの花が好きなんだ」


 ルーナが述べるとドラコは、大して興味はないが一応、そうなのか、というように無言で小さく頷き、そしてルーナの足元へ視線を落として少しだけ眉を顰める。


「ずっと咲いててきれいだよね。あなたもよくこの花を見てるでしょ?」


 ルーナがそう言うと、ドラコがはっとして視線を足元から上げた。

 サクラも驚いてルーナを見て、そしてドラコを見る。


「他のみんなもここの花、きれいだなって見てるよね。あなたって、もしかして誤解されてるのかな。サクラに対してすごくやさしい顔してる。不思議な人」

「……不思議なのは君の方だ」


 視線を外して呟いたドラコ。青白い頬に少しだけ朱が差したような気がした。


――本当に、マルフォイくんもこの花を見てくれてるのかな。


「ここの花は、どんな魔法をかけてるの?」


 ドラコに対して少しだけ気まずさを感じていると、ルーナが咲き誇るヒメナデシコに視線を落として訊ねてきた。


「あ、えっとね、成長促進の魔法と、色とか潤いを保持する魔法、あと保護呪文とかかな」

「へえ、すごいね。そんなに魔法をかけてるんだ」

「でも、まだ全然上手くいかなくて、やっぱり枯れたり痛んじゃったりもするの」

「そんなに魔法を重ねることが出来て、これだけ咲いているんだったら、よく出来てる方だろう」

「ほんと? よかった」

「――わあ、すごい、ストレンジトリオだ! 写真撮っていい?」


 突然聞こえてきた声に、サクラ達は一斉に振り向く。

 そこには、本格的なカメラを掲げたコリン・クリービーがいた。彼は、ルーナと同じ2年生である。

 去年はやたらとハリーにお熱だったが、今では少し落ち着いてきている。


「え、うん、いいよ! ね、いいでしょ?」

「もちろん」


 ルーナは直ぐに頷いてくれたが、ドラコは硬い表情でサクラの隣に並ぶ。


――隣にマルフォイくんがいる!


 サクラは、ドラコとルーナに挟まれて写真を撮ってもらった。


「コリン、その写真、出来上がったら欲しいな」

「私も」

「いいよ」


 コリンは快諾してくれて、そしてドラコへ恐る恐る声を掛ける。


「……あなたは?」

「一応……もらう」


 コリンはこの1年でドラコのことが分かったようで、彼に対して怖い気持ちがあるようである。

 ドラコもドラコで、彼のことをよく思っていないことは、去年ポリジュース薬を飲んでスリザリンの談話室へ潜入したときに分かった。


「OK.出来上がったら渡しに行くね!」

「ありがとう、お願いね」


 サクラは去っていくコリンの背中を見て、あることを思いついた。

 また時間のあるときに実行しようと決める。

 それから、ルーナが「それじゃあね」と言って去っていってサクラとドラコがふたりきりになった。


「もう調子よさそうだな」

「え?」

 

 ドラコにいきなりそう言われ、何について言っているのか直ぐに理解出来なかった。


「風邪引いてただろう。でも、もう治ったみたいだな」

「あ、うん。もうよくなったよ。もう大丈夫!」


 ドラコに上手く接することが出来ず、彼の顔を直視することも出来ず、彼とふたりきりが恥ずかしくて今すぐ城へ戻りたい気もあるし、でももっとずっとドラコと一緒にいたい気持ちもある。

 するとそこで、生徒達の視線に気付く。

 今日の授業は全て終わっているので、教室移動などで行き交う生徒達は今はいない。たまに中庭を横切ったり渡り廊下を歩いたりする生徒達を見る程度である。

 そのほとんどがこちらに何か言いたげな視線をやってくるのであった。

 その視線に、サクラは今までなら気にしていた。しかし、今では全く気にならなくなっている。寧ろ、ドラコのことを誤解しているのだ、と言ってやりたいとさえ思う。


「あ、マルフォイくんの方はどう? 調子が悪いって聞いたけど、風邪じゃなかったみたいだし。何かあったの?」

「あ、いや、その」


 口ごもって視線を落とすドラコ。

 彼の言葉を待つと、すぐに視線を合わせてきた。


「クジョウにひどいことを言ってしまったから、後悔していたんだ。それをずっと気にしていて」


 それは、ホグズミードに行った日の帰りのことだろうか。


「ずっと謝りたくて。でも君に合わせる顔がなくて、それになかなかタイミングが掴めなくて……」

「本当?」


 ドラコが嘘を言っているようには思えないが、信じられなくてサクラは思わず訊き返した。


「ああ。医務室で君に謝るまでは、もう君とは会わない方がいいとも思っていたし、それに、ウィーズリーに邪魔されるし」


――あのときのことかな。


 図書館でジョージと話した日のことを思い出す。あの日、確かに彼に声を掛けられる直前にドラコの姿を見たのだった。

 あのとき、ジョージと話し終えた後はドラコの姿が見当たらなくなってしまって残念に思ったが、彼のその言葉を聞いて申し訳なさも感じる。


――あたしもあたしで、タイミングを壊していたのか。


「わたしも、ずっとマルフォイくんに謝りたくて悩んでたの。わたし達、お互いに謝りたがっていたんだね」

「そうだな」


 優しい表情で笑むドラコの髪が、11月の涼しい風に揺れる。その姿を目の当たりにして、サクラはドラコへの想いを改めて実感した。

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