trick or treat

約束の日

『 あっ こんなことをしてる時間は無いの! 』

女の子は 椅子から立ち上がり

おばあさんに告げた


『 時間が無いから 簡単に言うわね

 おじいさんからの伝言があるの 』


突然のことに おばあさんは なにがなんだか分からず

びっくりして ただ 女の子を見つめた


『 驚くと 思うけどね

 私 ここで飼われてた 

ネコのミーコ! 』

女の子は 満面の笑みで おばあさんに 自己紹介した


『 あの世に行ってから 

おじいさんと月で会ったのよ

 それでね おじいさんが おばあさんに 

 言い忘れてたことがあるって それを 伝えに来たの! 』

 

ミーコは 急に小さな声で語り始めた

『 あのね 詳しいことは言えないんだけど…

 ハロウィンが新月なら 仮の姿だけど 会いに来れるのよ 』


ミーコは くるりと回って ウィンクした


おばあさんは ミーコの言っていることが理解できず

目をパチクリ


『 信じられないのは 仕方ないけど

 時間が無いから 伝言だけは 聞いてね 』

 

ミーコは ちょっと 咳払いをしながら

背筋を伸ばし 誇らしげに おばあさんを見た


『 では! おじいさんからの伝言です

 ” 古時計の中にある ” 』


言い終わると ミーコは 

またニッコリほほ笑んだ


おばあさんは またまた 目をパチクリ


『 ”古時計の中にある” 

 伝えたからね! そろそろ 戻らなきゃ

 帰れなくなっちゃう! じゃあね 』


ミーコは 慌てて リビングから繋がる 裏庭に飛び出した

かと 思ったら

また リビングを のぞき込んで 

おばあさんに告げた


『 あっ それから

 次の ハロウィンが満月の日 

 おじいさんが 会いに来るからね

 忘れないで! 約束だから! 』


そう 伝えると 満足げにミーコは 

出て行った

外は もう真っ暗で 何も見えない 

闇でした


どれくらい 呆然としていたのか

おばあさんは ただただ 立ち尽くして

今 起きたことを 

理解することにだけ気力を使っていた


何だったのかしら…

おばあさんは まだ理解できない様子で

イスに 腰かけ

リビングの棚の上の おじいさんとミーコの写真を見上げて 溜息をついた


ボーンボーン

おじいさんの古時計が 

また6時を知らせていた

不思議に思った

おばあさんは リビングの時計も確かめてみる


やっぱり 針は 6時を指していた


『 やっぱり 

夢をみていたのかしら? 』

おばあさんは  少し笑って

テーブルの お皿を片付けようと立ち上がった


ん?

スープが入った お皿を見て おばあさんは首を傾げる


やっぱり これは現実なんだわ! 

ミーコの言ってた言葉を思い出し

玄関の時計へと 急いでいた


おじいさんが趣味で集めたアンティークの家具たち

その中でも この柱時計は とても大事にしていたからか

おじいさんが亡くなった後も止まることなく正しく時を刻んでいた


この 扉を開けるのは何年ぶりだろう

おばあさんは そっと扉を 開けた

振り子が 優しく左右に揺れている


”古時計の中にある”


ミーコの伝言を 思い返しながら

時計の上から下まで ゆっくり見てみると

下のほうに白い紙が置いてあった


綺麗に折り畳まれた 紙を手に取り

そっと 開いてみる


” ありがとう

  ずっと 愛してるよ ”


おじいさんらしい 優しい文字で そう 書かれてあった


おばあさんは 手紙を抱きしめながら裏庭へと向かった


星の光がキラキラと線を描き

庭のカボチャ畑へと 脱ぎ捨てられた

花柄のスリッパを照らしていた


瞬く星空を見上げ 

おばあさんは ニッコリほほ笑んだ


約束の日を思いながら