君に胡蝶蘭を 2

茉夢@お題箱募集中
@mamu_au

意地っ張り

大和からラビチャが入ってた。あいつは私に会いたいらしい。それから返信をしていない。会えるわけがない。あいつは1人で前に進んでいるけど私は進めてない。もともとこまめに返事をしているわけではないから返事も特にしない。



自分が何に腹を立てているのかわからない、でもこの怒りは収まらない。なぜ私達はこんな目に合っているのだろうか。いや私達ではない、私なのだ。あいつは前に進み始めたのに私は一体何をしているのだろうか…



父の隠していた秘密を知った時から私は人と仲良くするのをやめた。仲良くなりかけたら一歩身を引く。今もそれを続けている。自分でも馬鹿げているとは思うけど止められない。それほど父のことがショックだったのかはわからないけれど、人と深く結び合うのが嫌なんだ。



最近はずっとこの事ばかりしている。きっと片割れのせいだろう。もう考えるのも疲れてくる。今日はお湯を溜めて入浴剤を入れて疲れを癒そう。そして昨日仕込んだおつまみと一緒にビールを呑んで寝よう。明日はせっかく休みなのだから少し夜ふかしをしてもいいかもしれない、と考えながら家の中に入ると電気がついており、




「よっ、おかえり」




片割れがそこにいた。しかもビール片手に。




「なんで、いるの」



「明日オフだからさ、お前も休みだろ?」



「…」




何故休みと知っているのだろうと考えたらすぐわかることだった。明日は私の会社の定休日で、あいつは私の勤めている会社を知っている。つまり、私が明日休みなのを知って、私の部屋のスペアキーを使い中で待っていたという事だ。



よく考えれば会いたいというメッセージがきてから初めての定休日でもあった。





「返事ないから今日って思ったんだけど違った?」



「……別にいいよ、それで何の用なの?」




要件を聞くと、さっきまでヘラヘラしていた顔を引っ込めて真面目な顔をした。こういう顔をする時はだいたい私にとって嫌な話ばかりだと想像がつく。




「今度一緒に家に帰らないか?」




やっぱり私にとって嫌な話だ。家になど帰りたくない、私は父に会いたくなどないのだから。それはあいつも分かっているはずなのに……




「嫌よ。私は帰らないから1人で帰れば」



「やっぱりな、お前ならそういうと思ってたよ」



「ならなんで聞きに来たの、ラビチャでもよかったでしょ」



「会って確認がしたかったんだよ」




確認ってなんだ、何の確認なんだ、そんな確認いらないだろう、わかりきっていることなのに。だんだんと怒りが募ってくる。




「なぁいつまでこうするつもりなんだ?」



「……」



「親父もそろそろ歳だしさ、それそろ折り合いをつけよう」



「……」



「そうやっていつまで意地はるつもりなんだ」



「……」



「…お前さちゃんと友達いんの?」




溜息をついた後に言われた言葉に私はカッとなってしまった。




「帰って。勝手に私の部屋に来て説教でもしにきたの?自分だってつい最近まで同じだったくせに……私もう疲れてるから早くお風呂に入って寝たいの、だから帰って。今、すぐに」




きっと最近寝不足だったのだろう、四六時中答えがわからない思考をずっとしていたから。怒りが収まらなかったのだろう。でもきっと一番の怒りの原因は“友達”。あいつの言うことは図星で、でもそれに否定できない自分が悔しくて。





「……悪かった。嫌なこと言ったな、帰るわ。ちゃんと飯食えよ」





そう言って玄関からあいつは出た。



1人だけ前に進んで、私の事なんて考えずに言葉を放つ。なんであいつの周りには沢山人がいるんだ、なんであいつは笑顔でいられるんだ、なんであいつは幸せそうなんだ。



冷蔵庫には見覚えのない料理と数が増えたビールがあった。あいつなりに考えていたのかもしれない。あいつの料理は冷めていたのに温かかった。