隣人モブ雄4

ふき子
@fuki_fukiko

隣人モブ雄4

明日は取引先に行く予定がある。

その為に差し入れを持っていこうと、有名デパートの地下にいた。

だがこの手の差し入れ物には疎く、何を買ったら良いか迷ってしまう。


洋菓子・和菓子コーナーをウロウロしながら悩んでいる中、「あれ、偶然ですね」と声を掛けられた。

あるケーキ屋のショーケースの前に、隣人さんが居たのだ。


「あぁお隣さん!本当ですねすごい偶然」


「ものすごくキョロキョロしてましたが、誰か探してるんですか?」


「いえ・・・先方さんに持っていく茶菓子を買おうとしてるんですが・・・こういうの疎くて、どれにしようか迷ってたんです」


「そうなんですね、ココの詰め合わせおすすめですよ。女子社員に受けが良くて、オレもよく買っていきます」



そう言いながらシューケースの横に陳列している、お菓子の詰め合わせを指差した。

確かに・・・見栄えは物凄く豪華で美味しそうだ。

「それじゃ、ここで決めます」と伝えて、どれにしようかと商品を品定めする。



「ノクト、決まらなかったら。迷ってるやつ全部買おうよ」


ん?

てっきり一人だと思っていたお隣さん、それが隣で身を屈めてショーケースを見ていた黒髪の男が背筋を伸ばしお隣さんと視線を合わせる。


「それは、イイ」


「何でさ、別に遠慮することないじゃん」


「・・・・別にそういう訳じゃねぇ~よ」


これまたイケメン外人だ

もう・・・何を見ても驚かないぞ・・・・この際お隣さんが何人の男を誑かしてても・・・


以前の金髪青年と同じぐらいの年齢だろうか、女子高生が好きそうなアイドル系のルックスだ。

折角の整った顔を顰めて、物凄く不満げだ。



「んじゃ良いじゃん。買おう」


「待てよっ、そんなガキっぽい事・・」


「・・・・・今さら?」


「うるせ~」



どうやら少年から青年への成長過程で、大人として見てほしいお年頃みたいだ。


「そういうの気にするなって言っただろうが。男は幾つになっても子供なんだよ」


ちょっとカッコつけてドヤ顔でそう言った隣人さんの顔を、暫く黙って見ている青年。

そして納得したように「そうだな」とコクンと頷いた。


「お前、人の顔見て納得するとか失礼だろ」


「いや、お前がいい見本だと思って」


「あぁ~・・・明さんはちょっと気分を害した。ノクトのケーキを買ってあげる気さえ無くした」


そう口にした隣人さんは、さっさとショーケースの前から移動する。


少年は慌てた様子で「お前大人気ねぇ~ぞ」と投げかけながら、その背中を追う。


・・・・・・うん、大人気ないな・・・。


そんな二人の後ろ姿を見送り、店員さんの声で我に返る。

店員さんのおすすめにより、買うものは決まった。

料金を払いラッピングを待っていた時、再びお隣さんが現れた。

それも満遍な笑みで。


「ショーケースのケーキ全種類各1でください」


と、とんでもない注文をする。

店員さんも目が点だ。


少し遅れてその場に姿を表した黒髪の青年。

うつむき加減のその顔は、長めの黒髪で表情を読み取れない。


何があったのか・・・

それともお隣さんに何かされたのだろうか・・・


店員さんが2人掛かりで、ケーキを取り出しては包んでいく。

そして自分の頼んだお菓子セットが入った紙袋を手渡され、もうここに用はないので立ち去る前に隣人に挨拶を入れておこう。



「おいっ帰ったら覚えてろよ」


声を掛けようと口を開けたと同時に、俯いていた青年が顔を上げた。

隣人さんを睨みながらそう言うが、赤くなっている頬のおかげで凄みが全くない。


「へぇ~それは楽しみだ。めちゃくちゃ期待してるよ。まむしドリンク買っとくべきかな~」



何を言っても、隣人さんの方が一枚上手ってところだろうか。

二人の会話が何を意味しているかは、何かと察する事は出来るが・・・・

これほどまでタイプの違う男性ばかりを引きつける秘訣は、何なんだろうか。

これが女性ならば、まるで恋愛ゲームのようなハーレム状態。

もっとも恋愛ゲームなら、誰か一人を選ばなくてはいけないが・・・・