意外な

そんなに多くはないけれど、甘い雰囲気になるときもある。


急に肩を抱き寄せられたりとか。唇をゆっくり食まれたりとか。


「玲さんといると、すっげぇ落ち着くわ」


そう言って、思い切り抱きしめられることもある。服越しに伝わる彼の感触に、ドキドキしてしまうこともある。


筋肉質だけど、温かくて、ちゃんと鼓動が聞こえてきて……


「あ……」

「ん……どうした?」


そして、いつからだろう。カジュアルなタンクトップの、意外なほど優しい香りに気付けるようになったのは。


「あー……宮瀬だろ。あいついっつも洗濯物に訳わかんねー匂いつけたがるからな」


色とりどりの花が咲き誇る、九条家の庭。その庭の片隅で、鼻歌まじりに洗濯物を干す宮瀬さんがふと浮かんだ。


「……お前、いま宮瀬のこと考えてただろ」


明らかに不貞腐れた声が、乱暴なキスを連れてくる。


「だって桐嶋さんが……」


少しだけ性急な掌は、それでもやっぱり優しいのだけど。


「うるせぇ」


世間では怖がられている九条家。実は皆さん、こんな風に、同じ優しい香りを纏っているのだろうか。そんな微笑ましい妄想までしてしまったことは、さすがに黙っておこうと思った。







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