昔の友人、今も友人、今は他人

93@オジギヲスルノダ
@reinn0000

国木田独歩のしんゆうのおはなし

俺には【何故か】友人が一人もいなかった。


そんな

俺には昔、

一人、たった一人だけの友人兼親友と呼べる男がいた。


奴は

虚弱体質で

いつも青白い顔をしていたが

喋ると明るく、気のいいやつだった。


ひょろひょろとした細身の体と、

女のような顔つきのせいで周りの輩からちょっかいを掛けられていたあいつを助けたのが話すきっかけだった。

もっとも、


助けようとした瞬間に

ちょっかいを掛けた男の頬に、

細く青白い手からは想像もつかない位の

鋭い右ストレートが決まり、

間に入ろうとした俺の出る幕は無かったのだが。

「・・助けようとしてくれてありがとう?」

「あ、ああ・・。」


そこから俺達はよく話をするようになった。

屋上で弁当を食べながら

どちらという訳でもないが世間話をする。


たまに絡まれたあいつの助け(主に絡んだ奴等の)に入ったり、

絡まれたのを助けてもらったり

理想の相手の話や、授業の話、

本当に・・本当に、あの時は楽しかった。





「好きなんだ独歩。」


卒業式の前日のことだった。


青白い顔をさらに白くして彼は俺に言った。

顔はもはや紙のように白かった。

細い手に、冷や汗を滲ませながら俺の手を握り、

目を見ながらはっきりと自分の好意を口にした。


そんな彼には

酷いことをしてしまった。



【同性】である俺に好意を伝えること、

酷く、酷く悩んだ筈のその好意を、

それを俺は、


「っ触るな、」

たった一言で拒絶した。


振りほどいた腕と一緒に、

途端に全てが崩れる音がした。

初めて会ったあの日から今までの、

全ての思ひ出が崩れ落ち、壊れ、無くなってしまった。



彼は俺を見つめたまま泣いていた。

気丈な彼の初めて見る涙だった。

静かに、声もなく、涙を流していた。


それを俺は、


美しいと思ってしまった。

唯一の親友と呼べる友人を泣かせて

あまつさえ、その涙を美しいと思ってしまった。

そんな自分に吐き気がした。


そんな汚い考えをしている俺に気づかずに、

彼は俺に更にこう言った。

「オレ、

女の子に生まれれば良かったのにな。

そうすれば、___なのにな、

・・女の子に生まれたかった

ごめん、独歩、ごめん。」


気が付くと彼の唇が俺の唇に触れていた。

あっと、驚く間もなく離れ、彼は

「ごめんね、

もうオレは消えるから、

悪い夢だと思って忘れてくれないか。

・・卒業おめでとう、独歩。俺の、」

そう言って立ち上がり、屋上から静かに出ていった。



卒業式、彼の席は空いていた。


あの日から俺はずっと思っている。

あの日のことは悪い夢などでは無いと。


俺はあの日を忘れずに今も生きている。



【国木田独歩のしんゆうのおはなし】