もういない君へ

机の上の花

悲しい雨が降る日はあのクラスメイトのことを思い出す。


彼はいつもクラスの中心にいて、誰にだって優しかった。


でもその優しさの裏で彼は病に侵されていた。


彼がいなくなった日は空さへも泣いているような悲しい雨が降っていた。


私は自己表現が苦手で人と関わることが出来なかった。


でもそんな私を彼はいつも気にかけてくれた。


私にだけ病気なんだと明かしてくれた。


好きな物、好きなことたくさん聞かせてくれた。


だけどどうしても聞けなかったことがあった。



それは『弱音』だった。


彼は3歳の時から病と戦ってきたらしく、今更死ぬのなんてなんてことないよと笑った。


いつだって「怖くないの?」と聞くと


「全然へーき!今更怖いなんて思わないよ」


そう笑って言った。


私はきっと彼が好きだった。


だから自分だけには甘えてほしいというわがままから君の弱音が聞きたいと思った。


ただひとこと『死にたくない』という言葉が聞きたかった。


聞いてあげたかった。


でも彼は私と彼の家族に手紙を残し息を引き取った。


あれから2年経った今も手紙の封を切っていない。


彼がいない現実を突き付けられるようでとても怖かった。


今日は彼のいなくなった日。


教室の左端の一番後ろの席には『カラコンエ』の花が置かれていた。


花言葉は《たくさんの小さな思い出》。


私は君との思い出を忘れない。


だから今日こそは君からもらったあの手紙を読むことに決めた。


このままじゃ君との思い出が悲しいだけの思い出になってしまう気がしたから。


大丈夫。


そう自分に言い聞かせてゆっくりと手紙を開いた。


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手紙なんて書いたことないから読みにくいと思うけど、最後までちゃんと読んでほしい。


俺さ、ずっと死ぬことが怖かったんだ。


でもそんなことダサくて言えなかった。


いつも気にかけてくれたよな。


すげぇ嬉しかった。


お前の存在が俺の生きる理由だった。


くだらないことで笑ってくれるのが嬉しかった。


涙なんて見たくなかった。


見せたくなかった。


もう死ぬやつが何言ってんだって思うけど、


ずっと好きだった。


俺がいなくなったらまた笑ってくれなくなるんじゃないか?


泣くこともしないままずっと一人で抱え込んでるんじゃないか?


俺からの最後のお願い。


たくさん泣いたあとは、泣いた分よりたくさん笑え!


出会ってくれてありがとうな!

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ずるいなぁ。


こんなの泣くしかないじゃない。


涙で滲んで続きが読めないよ。


ずっと堪えてきた涙が溢れてきた。


彼との思い出が頭の中を駆け巡った。


私も君の笑った顔が好きだったよ。


こちらこそ出会ってくれてありがとう。


好きになってくれてありがとう。


私は声が枯れるまで泣いた。


気付けば雨は止んでいて空には虹がかかっていた。


机の上の花は太陽に照らされてきらきらと光っていた。

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