審神者、始めましょう

冷凍夏蜜柑@24日金コミ零さん→椿
@macchi2354

あるじ…って、僕?

桜が散る水面。

まるで人が住む世界から離れたような景色。


僕が最初に思ったことは『綺麗だな』だった。

次いで『何処だここ』。


ほんとに何処ここ。


そもそも僕、なんで此処にいるんだっけ?うーん、確か孤児院で…

思い出そうとする前に声が響いた。




??「貴女様が新しい審神者様…いえ、主様ですね!」


『さに…?えーっと、あるじ…って、僕?』


??「もちろんでございます、主様」




僕が、主、ねぇ。

てかさにわって何さ。はにわなら知ってるけど…古い時代のあの墓の中にあるあれ。

さにわって何、ホント?

それ以前に…





『狐が喋ってる…ていうか誰?』


??「わたしは『こんのすけ』と申します。主様をサポートする役目を仰せつかっています」


『はぁ……』





なんだろう、とてつもなく胡散臭い。





『で、さにわ?って何?』


こんのすけ「審神者というのは歴史修正主義者と戦うため、付喪神である『刀剣男士』を目覚めさせ、歴史の修正を阻止する役目を持っています」


『待って追いつかない。歴史…なんだ?』


こんのすけ「歴史修正主義者ですね。歴史修正主義者は過去を変えることを目的としています。過去が変わると現在が変わることは分かりますか?」


『うん…まぁ』




過去…例えば…日本が鎖国を続けていれば今はもしかしたら…




『着物のままだったし日本はここまで発達していなかった、みたいな?』


こんのすけ「そのような感じです。それを止めるのが主様の役目です」




歴史修正主義者は止めるもの…と。

因みにこんのすけは喋る狐と書いておいた。あと何かの手先。そしてやっぱり胡散臭い。が、今は信じるしかないのがなぁ。




『なるほど…じゃあ次、とうけん…』


こんのすけ「刀剣男士、ですね。彼らは元は刀であります。そんな彼らに眠っている物の想い、心を目覚めさせ、自ら戦う力を与え、振るわせる事が主様の役目であります。そして力を与えられた付喪神の方々が刀剣男士です」


『ヘェーソーナンダー…』




ぼんやりとしかわかんないどうしよう。

というかなんか僕、厄介事に選ばれた感じする。

取り敢えずポケットにあったメモ帳に刀剣男士は戦う付喪神とメモしておいた。

分かってるかは置いてくれると助かる。




こんのすけ「さて、早速ですが主様。この5本の刀からお好きな刀を一振りお選びください」


『え…一振り?全部じゃなくて?』


こんのすけ「はい」




うーむ…僕、優柔不断なんだけど…。




『因みに何がなんていう刀なのかは教えてくれる?』


こんのすけ「お望みならばお教えしますよ!」




ふむ…なら教えて貰ってから決めようじゃないか。

僕は忘れないためにメモ帳の新しいページを開いてメモする準備をした。


🌸🌸🌸🌸


こんのすけに教えて貰ってからたっぷり悩んで選んだのは…




こんのすけ「そちらでよろしいですね?」


『うん、これにする。加州清光』





そう、加州清光。

扱いにくい刀らしいけど、僕っぽいのはこれかな、って思った。

正直最後まで山姥切国広って刀と悩んだけど。





こんのすけ「それでは、実際に顕現させてみましょう。顕現のため移動します、着いてきてください」


『あ、待ってくれ。1つ聞きたいことがある』


こんのすけ「なんでしょう?」


『何か…これは駄目だよって事とかあるの?あるんだったらそこはしっかり駄目だって言わなきゃいけないし、そのためにまず僕が知りたい』




加州清光を胸の前で握りながらこんのすけを見つめて言った。

ケジメ、のようなものになるだろう。

それだけははっきりさせたい。




こんのすけ「お教えするのを忘れていましたね。やってはならないことは2つ。まずは主様の名を教えてはなりません」


『なんで?』


こんのすけ「刀剣男士様は神の末席に名を連ねる方達ですからね。神婚がある時代ですし、念のため、と言ってもいいでしょう。そしてもう一つはわたしたちも歴史を変えてはいけません。過去の人物との接触などもしてはいけません」


『接触したらそれで歴史が変わるかもしれないから、か』


こんのすけ「そういうことです」





なるほどね。うん、大丈夫。多分。

僕はメモ帳を閉じて、こんのすけを真っ直ぐ見つめた。





『よし、行こう』


こんのすけ「はい」





僕は刀を持って、1歩踏み出した。


🌸🌸🌸🌸


踏み出した先はさっきまでの水面に桜だけの風景とは打って変わって大きな屋敷だった。

こんのすけの案内で顕現で使うらしい部屋に到着。

道中で顕現の仕方については教わった。


ここに来るまでにたくさん部屋があったなぁ。

きっとそれほど多くの刀が…刀剣男士がいるのだろう。

…あとで顕現させた刀と一緒に屋敷を見てまわろう。正直迷う気しかない。それどころか覚えられる気がしない。




こんのすけ「主様、」


『ここで顕現させるんだな?』





こんのすけが頷いたのを見て、さっき教えてもらった顕現のやり方を思い出す。

因みにこんのすけはこの顕現させる部屋には入れないんだとか。こんのすけの上司でも無理らしい。

…秘密基地に使えそう。

深呼吸を1回してから、刀に想いを念じる。

光り輝き出す刀。どこからか桜の花が舞う。

輝きが収まるとそこにいたのはさっきまでの刀じゃなくて1人の男性だった。

口元にホクロ、切れ長のつり目寄りの目、黒と赤で纏められた衣装に小物に使われている金色と白色はとても似合っていた。






??「あー。川の下の子です。加州清光。扱いづらいけど、性能はいい感じってね。…あんたが新しい主?」


『そう……だね、うん』




扱いにくいって聞いていたからどんな怖い奴が出てくるかと思ったらめっちゃ美形。てか可愛い。

びっくりながら惚けてると加州清光は不思議そうな顔をしていた。





加州「何?俺、何かおかしかった?」


『あっ……いや、扱いにくいって聞いてたから想像と全然違くてびっくりしたというか何というか…。可愛いな、とキミを見て思ってた』




笑いながらさっき思ったことをそのまま言ったら加州清光はちよっと驚いた顔をした。

あ、そっか。加州清光は刀剣『男』士だもんな。可愛いってあんまり嬉しくないか。

じゃあ綺麗とか?




『いや、可愛いが一番合ってるんだよなぁ…僕より女子力絶対高いし…』


加州「…調子狂うなぁ」


『え?あ、僕どこか失敗したか?すまない!』


加州「フハッ!何焦っちゃってんの、主」


『えっ、違うのか!?もーキミは!!』




ごめん、と謝る加州清光に僕は笑いながらいーよ、と返答。


なんだ、人と一緒じゃないか。


そう素直に思った。


🌸🌸🌸🌸


『さて、と。加州清光、今更かっこつけるのも申し訳ないけど、一応主らしく誓いをしたいんだけどいいかな?』


加州「いーよ。そーいえばまだだったね、俺たち」


『ハハハ、すっかり脱線していたからな、僕達』


加州「あ、俺も正座した方がいい?」


『うん、正座かどうかは任せるけど座ってくれると嬉しいかな』



そう、実は顕現した後に喋ってたから加州清光は立ったまま、僕は正座した状態で駄弁っていたのだ。正直凄いわ。

加州清光は座る姿勢に悩んでたけど、結局正座にしていた。



『改めて初めまして。僕はキミの主だ、加州清光。キミの力を借りたくて顕現させた。協力してくれるな?』


加州「もちろん。異論なんてないよ」




僕は加州清光に礼を言い、真っ直ぐ加州清光の目を見て、言葉を続けることにした。




『まず、僕はキミに名を教えることは出来ないことになっている。だから僕の事は取り敢えず『主』と呼んでくれ。それから、多分一番重要な事だと思うが僕らが歴史を変えることは厳禁だ。僕らが歴史を変えればそれは歴史修正主義者と変わらない。変えてしまった刀は最悪破壊しなければいけなくなる。絶対やめてくれ。そして最後、この本丸内では私闘は禁止だ。この3つを守り、僕の為に刀を抜いてくれるか、加州清光』


加州「そりゃとーぜん。よろしくね、主」


『あぁ。誓いは成立した。僕の初期刀として僕を守り、振るってくれたまえ、加州清光』




笑って言うと待って主と加州清光に止められた。

誓いは終わった…よね?僕失敗したかな?




加州「俺が初期刀って今言った?」


『あぁ、言ったな。キミが初期刀だよ、加州清光』


加州「………」


『??おーい、大丈夫か…』


加州「主大好き!!」


『うぉ、急にどうした!?可愛いからいいけど!!てか背中打った痛い!!』




急に加州清光に飛び付かれて僕は仰向けに倒れてしまった。そして背中強打。

あ、加州清光いい匂いする気がする。

…これではまるで僕が変態みたいだ。




加州「うわ、ごめん、主!大丈夫?特に痛いって言った背中」


『あぁ、平気。気にしないで加州清光』




謝りながら手を差し伸べる加州清光に笑って答えてやる。そして差し伸べられたその手に甘えて立ち上がった。因みに加州清光は先に立っていたりする。

服を整えてると加州清光はねぇ、と声をかけてきた。




『どうした加州清光?』


加州「主さぁ…加州清光って呼ぶの面倒じゃないの?」


『正直に言うと面倒だな。清光って呼びたいのが本音』


加州「主はっきり言うねー。じゃあ清光って呼んでよ?加州呼びでもいいけど主には清光って呼ばれたい」


『ん、分かった、清光』




僕の呼びかけに笑ってそっちがいいと言う清光。

僕の最初の刀は想像以上に可愛かった。



(主ってはっきり物事いうタイプなの?)

(いや?嘘をつくのが下手くそだから全部ハッキリ言うことにしてるんだ)

(へぇー、女の子なのに珍しいー)

(……女って分かったんだな)

(とーぜんでしょ?)

(さいですか…当然なんだ…)