錯双リベス(日常の1コマ編) Ⅰ

喰雅.らんちーず
@kuga2255

1.放課後にあったかもしれない出来事(★紗弥・奈緒羽)


 私は、この時の彼女が一番好きだ。

 同性愛だのの「愛」の意味合いではなく、ただ人の内面を見れると嬉しいという意味合いで。

 いやはやそんなこと想像する方はいらっしゃらないか。

 それを彼女に説明すると、いつもほんのり顔色を血で染めて否定する。それがまた可愛いというものだ。さすがにそこまで言うと怒られる。

 ところで今は何をしているかというと、巷で有名なアクセサリーショップ…もとい小物屋に奈緒羽(通称なーはん)と来ている。巷で有名かはともかく、私たちの中では有名だ。

 女の子らしい可愛らしい感じの小物が専門のお店だ。なぜお前らがと思われるかもしれないが、それこそなーはんの実はというやつである。

 本人じゃああるまいし、包み隠さず言うなれば、彼女は”カワイイもの好き”というやつだ。

 本人はそれを恥ずかしそうに隠しているらしいが、別に女の子だし隠す必要もないのではと思う。しかし本人曰く「なんか私のイメージの感じと全然違う気がして…」らしい。いやいやむしろそのギャップで周囲が集まってくるのだろう!これは本人にはまだ言ったことが無いが。

 当の彼女は目を輝かせながら夢中で小物を見て回っている。こっちのほうが生き生きしていて、印象的にも良いと思うんだけどなあ。

 私も無論楽しんじゃいるが、あまり顔に出てくれないので、よく「楽しんでる?」と不安がられることがある。しかしまあそういう性質なので仕方ない。彼女にそう聞かれることは少なくなったが。長く一緒にいるだけあるだろう。

 「ねえ紗弥、これどうかなー?」

なーはんが嬉しそうな表情で小さめのぬいぐるみのホルダーを私に見せる。評価しろということかな?「うーん…」

 桃色のうさぎ。顔がいかにも可愛いと言わせにきている。いや、「可愛い」のだがね。

「うふふ、そうだよねーっ」はずれではなかったようで安心。

 こんななーはん見たらクラスの人どう思うんだろう…。なんか”特別”を見せてもらってる感があると、やっぱり嬉しいんだよね。

 …っと、ん?なーはんどこ行った?私はほぼなーはんの後ろをついて行っていたと思うんだが…。ちょっと私がグッズを拝見(普通に見てる)してる間になにかすごく興味のあるものを見つけたのだろうか?

 まあ、こちらものんびり回るか。


 急に視界が猫で埋まる。

「わっ」んだねんだね

「どうっ?」いつの間にか後ろ側にいたらしい。私の目の前に生地薄めのハンカチを広げて垂らして、超アピールだ。つーか近すぎて見えねえ。近眼だとかそういうの関係なしに見えない距離だ。「…見えん。」「おっと、ごめん」

視界の外部接続を切断するベールを外し、私はなーはん側を向いた。

 ふむ。ちょっと目つきが悪いがキュートさを感じさせる猫がド真ん中でお腹を見せているハンカチ…。「なーはんみたいね。」「はっ!?」

「なっ、なんで!?」

「いや、このなんか目つきの悪い感じね、学校の時のなーはん。」

「…っでも、こんなポーズしないし!!」「そーね」

そんなポーズなーはんがしだしたらさすがに友達続けられない。

 なーはんは少し恥ずかしそうに、ムスッとしてる。なーはんはやっぱこういう感情豊かな感じが良いんだよ。なんか変態じみてきたぞ。でもまあ、あの、そばに置いておきたい的な掴みの可愛さね。見てて楽しいし。

 そんななーはんはそのハンカチとにらめっこをしていた。「何してるの?」

「い…いや、なんか…可愛くていいなーって…」「自分好きも大事よね」

「ばっ、そういうことじゃ……そんなに似てる?」

ふむ、欲しくてにらめっこしてたのか。

「いやー?目だけ、目。でも可愛いし良いんじゃない?」

「だ…よね…!」「買ったら?」なんか店員みたいだな…「うん」

 かなり嬉しそうな表情になってレジへ向かっていった。自分に似ていると言われたのだけ気にかかっていたのだろうか。するとなんだか少し申し訳なく感じるな…。

 ま、結果的には本人満足そうだし、無駄に私が気にすることでもないか。



2.寮であったかもしれない出来事(★優香奈・詩穂)


 疑わせる気のある行為としか思えないのに否定とは…。

 いや、見ているだけで確信しそうなレベルだ。

「ほんとーに詩穂と魁は付き合ってないのー?」

「つっ、つ、付き合ってなんかないよっ!」この一点張り。

 むしろよくそれを言い通せるよなと思う。いっそ認めちゃえよ純カップル!

 あ、そういえば大事なこれ聞いてなかった。「好きなの?」

「え?」

 詩穂が固まる。おう、主語が無かった。「魁…」「わわわっ!!」

 わわわあ!詩穂の声にびっくりした。

 意味を捉えたようでかなりの赤面…りんごのようとはこのことか。

「詩穂は魁好きなの?」追い討ち。

意地悪に聞き直してみる。すると次は超赤面しながらもじもじし始めた!

 なにこれ!なんか楽しくなってきたぞ!イジリ甲斐がある子!!

 どうなのどうなの?と返答を急かすような表情をしてみせた。(要するにニヤニヤ)すると更に困ったような表情になり「えっ…えっと…」と困惑した声を出す。その反応はつまり、声に出して返答せずとも態度に出てると捉えるなら…詩穂!あんたっ…!!

「き、嫌いじゃ……ない…けど…。」

 赤面しながらそう言われたらもう一択じゃないですか。

「好き?」

 ぼふっと効果音がついてもおかしくないほど、ぼふっとなった。赤面が限界突破した。顔に熱を収めきれなくなった感じ。いや、人もそこまでいけるのか…!

 普通に驚いた。純愛ってステキ。いやそうじゃなくて。もう一発いってみる。

「魁好きなの?」

 わなわなしてる。それでいて赤面。かわいい鬼だ。

 もー言っちゃえよーっ と言おうと思ったけどこれ以上詰めて泣きまでいかせてしまうといけないので控えた。でもやっぱ気になる。本人の口から聞きたいってわかる?

 こう、なんか確信できても、本人からザッツライトを聞きたいよね。

 でもまあ言い寄りすぎて嫌われても困るから、そろそろ止「す…」

 ほぼわぁッッ!!

 外見普通の表情を保ちながら耳を傾ける。「好き…」

 わああ!!「…かな…」

「…へええ……さすがだね…」少し殺意わいた。この気もちはなんだろう。

いや、これこそ純というものなんだろう。正直でよろしいね。

「じゃあ次は魁に詩穂が好きか聞かなきゃねー。」

「えっ …ええっ!?」わたわた。

「っで、でも、好きじゃないって言われたら悲しいし…」ほぼなくない?

「うーん、そう?」

 というかそんな簡単に両想いって見つかるものなのか?

 純なカップルだからこそなんかどうやって相手に伝えれば良いんだろう…でも好きだってことは少しでも相手に伝わらせたい…でもでもあからさますぎると迷惑かかるかもしれない…でもでもでも一緒にいたい!一緒にいると幸せ!→いちゃいちゃ

……みたいな。

 はあ。思わずため息が出まくる。吐く息はそんなに環境によろしくないという。じゃあため息を吐かせるカップルみたいな奴らは全員有害物質なのでは!?

 なんてくだらないことを考えていないで聞き込みを再開しよう(聞き込みだったか)

「聞こう!」「ええっ!?」

 甲高すぎ!耳が奥まで潰れそうになった。

「きっと向こうも好きだよー…」あ。

 ついノッて言い過ぎた。でもまあ確定事項か。向こうがツンツンしなければ。

 どんな表情だろうと詩穂をちらりと見ると

固まっていた。超真っ赤で。思わずこちらもガン見で固まる。

 いや、やっぱなんか、純粋って無限大。



3.休み時間中にあったかもしれない出来事(★夏憐・夏凜)


 わたしたち同士は何でも知ってる。

 夏凜は、わたしの考えてること何でもわかる。わたしも夏凜の考えてることわかる。

 でも少し、夏凜の方がわたしのことお見通しって感じ。

 わたしたち同士は何でも同じ。

 わたしと夏凜がお互いに考えてることがわかる理由は、ほぼいつも考えてることが同じだから。その時したい!と思うのもタイミングも一緒だし、食べたい!と思うのも一緒。

 だからいつもわたしたち二人は一緒。


「なんか、甘いスイーツ食べたい!」唐突に思った。

 勢いよく椅子から立ち上がったから、後ろの机にかなりの衝撃を与えてしまったけど今は昼食の時間。みんな食堂や中庭でのんびりと食事をするのが主流だから、教室に残っている人はほぼいない。だから後ろの席の人は今いない。大丈夫。

 突然衝動的に大声を発したからか、驚いてこっちを見ている人もいたけどそんなことを気にするよりも自分の欲求優先だ。

「わたしも食べたいと思った!!」

「食べに行こう!」これがいつもの流れ。

 夏凜も勢いよく立ち上がって、わたしと同じように後ろの机に当たって大きな音を立てる。

 いやそんなことどうでもよくって、とりあえずわたしと夏凜の欲求が一致したんだから早く甘い物探しへレッツゴーしなければ!

 探しといっても、ただ食堂に向かうだけだからそんなに歩数は稼げないなあ。ってそんな話だったっけ?

 夏凜の手を引きながら廊下へ、渡り廊下へ駆ける。

「こーら、走らない!――って!」

 そういえば廊下って走っちゃいけなかったんだっけ?「えへへー」と笑顔で駆け抜ける。

 乙女の欲求は誰にも止められないのよ!なんて。


 そんなこんなで夏憐と夏凜はやっとの思いで食堂へ辿り着いた!

 そんなこんなの間で何人かに声を掛けられた気もするけど、足は止まらなかった。

 やっとの思いというほど疲れたのは走った足だけ。

 わば自分の身状態なんかよりも心状態が最優先だろう!嗅視覚を頼りに獲物を…いや甘いものを探す。こう、激アマな気分!激アマなものを食したい気分ですの!の!

 夏憐は甘いモノ不足で頭ぼっかーん!!はやくせっしゅしなければー!

「わばばー!」

 夏凜も甘いモノ不足でわたしと同じように脳の動きが段々にぶくなっている!たえろ!

「とりあえずあそこのパフェたべよ!」ぱっと目についた店を選択。「たべよたべよー!」

 ばったばたと店前まで駆ける。

 この季節はみんな中庭で食事をするので、室内はそこまで混雑していない。

 ちなみにここのパフェは種類が豊富なので最初はどれを頼もうか悩み結局食堂の閉まる時間になってしまったことがある。その後選べないならと全種類制覇したが、その結果ストロベリーパフェとチョコパフェと色々な果物の載ったバラエティパフェが優勝となった。同率。

 今は激アマを食したい気分なので、チョコパフェを頼んだ。「わたしもー」と夏凜もわたしと同じチョコパフェを注文した。

 これであたまのとろとろあまあま要求がしゃきっとしてぴきぴきーんとなって午後を越えるのだ!今日の予定組みはぱーふぇくとで終了するのです!

 せっかく晴れてるし席空いてるし「ベランダで食べよう!」(正しくはテラスという)「うん!」

 組みたてのパフェをおぼんにのせて持ち、屋外、食堂と同じ階のほうへ向かった。

 そういえばチョコは黒っぽくて地味な色をしてるけど、なんですごくおいしそうに見えるんだろう。改めて考えてみるとすごく謎だ。でも美味しいからそれでよし!

 風通しの良い席をとり(どこでも大差ない)向かいに座る。

 そしていつもの儀式。

「てーあわせてー!」

「「いただきまーす!」」



4.休み時間にあったかもしれない出来事(★彩果・夏憐凜)


 転校生、というと大抵紹介の時間が終わった後の休み時間にクラスメイトが色々なことを詳しく聞きに転校生の机の周囲に集まる。

 まさか現実でも同じような現象(心理的な意味で)が起こるとは思わなかろう。

 要するに、質問攻め(?)状態である。なんか違う気がするけど。

 職業柄そんなに目立ちたくないんですが…なんて言っちゃったら本末転倒でしょうけど?

でも時間フライングして大胆に教室に入ってきてしまったのだから目立ちたくないんですぅなんて言っても無茶があるだろう。フライングせずとも転校生の時点で十分目立ってしまうか。

 しかし魁くんは学級にたった二人の男子だし、目立たないようにしようとも目立ってしまうか。いや魁くんはスパイとして常に重要な立ち位置にいるから、ちょうどいいぐらいかな。どちらかといえばむしろそんなこと関係ないか。

「かーっわいー!」可愛い系の女の子に言われた。

 双子らしく鏡に映したようなそっくりさをしている。先ほどからずっと褒め称えられている。

 髪さらさらーだのかわいーだの、おとなっぽーだの等々。

 気分は悪くないが、さすがにここまでずっと言われてると照れとか超えて複雑な心境になってくる。

 営業スマイルばりの無限笑顔でその場を乗り切る。さていつまで続くかな(双方の精神的に)

 というかさっきから機械のように褒め言葉を次々と紡いでいっているわけだが、片方(見分ける目印がない)に心が見えない。…ああいや、そういう能力とかでなくて、感覚的に。左の子としておこうか。

 右の子は心の底から…本心として言っている感じがする。そう思いたいとかいう理想刑でなくてね?きちんと頭を働かせている。

「制服の色!」←右の子

「きっれーい!」←左の子

という感じでずっと交互に発声している。仕組んででもいるのか?でもそう聞いて「うふふー、バレちゃったー?実は事前に考えておいたんだー!」なんぞ言われたらさすがに私でも不登校になりかねない。禁句というやつだ。しかしクラスメイトも気にせず生活しているのだから、生来のものなのだろう。いや、実は既に一度聞いたことがあり、「実は事前に以下略」ともうクラスメイトは知っているが私は転校生でまだクラスメイトのことをあまり知らないので騙してみようみたいな?

 ……なんだろう、疑心暗鬼。

 そういうはじめのほうのクラスメイトの情報は魁くんから今度聞いておこう。

 双子は満足したのか「じゃあね!」と声を揃えて自分の席へかえっていった。一安心。

 何となくクラスを見渡してみる。なかなかにモブのいないクラスだなあ…。普通でも完全に普通とは切り離せないような人がたくさんだ。個性の強いクラスとでもいえるか。

 そういえばこのクラスはすごく少人数なイメージがある。別に問題はないけれど、4組が少人数なのに5組があるとはどういうバランスをしているのやら。

 5組のメンツをまだ見た事がないので、5組に関しては何も言えないが、4組は…なんだろう。

 少人数……うーん、障害者?精神的な障害者はいるが(確定)、全員が全員そうではないだろう。まず私がそういう類ではないからな。目標(ターゲット)がそうという情報は、聞いてないよなあ…。

 あとなんだ、少人数でまとめる必要性…。優秀生クラス?みんなすっごく頭良いから人数の多すぎない状況下で授業をし更に力を伸ばしていくみたいな…。すごく子供っぽくて一見むしろ頭の悪そうなあの子達も実は超頭良くて、他の子も…みたいな…。…やばいクラスに入ってしまったぞ…。

 私は頭悪い方ではないが、天才的なほど良くはない。頭の良さ10番内の大学(高校でも)に2つ受かれるか程度、だと思う。国内に限る。

 しかしまだ授業を受けていない以上、何も確証はないが。

 授業が始まった瞬間生徒の目の色が変わるか雰囲気が急変したらヤバいと思っていいだろう。なんだろ心臓が重い。

 まあ…私は私のやることをできればいいか。もし勉学のレベルが尋常じゃなくとも、適当にやっておけばいいし、勉強に関しては”学生”っていう職業の副産物のようなものだし、とりあえず目標さえ達成できればなんとかなる…かな。

 そうポジティブに自分を励ましても心臓…いや胃?の重さは変化しない。ええい、当たって砕けろだ!的な心境で砕けたほうが良いだろう。

 本当にマズい時は、きっとクラスを変更しての介入ぐらい許されるだろう。多分学年切だろうけど。あと10ヶ月待て!ということになる。そんなクラス選択の制度があったかどうかあやふやだけど。

 そしてチャイムが鳴る。初めての授業で胸がドキドキ!なんてそう明るい気分にはなれないけれど、ま、初日だし、多少はなんとかなってほしいとは思う。



5.放課後にあったかもしれない出来事(★冬太・亜樹斗・英清)


 少し先生と話をしていたらいつの間にかあーくんがいなかった!のでいそうな所を探している。

「あーくんどこー?」

 無駄にだだっ広い校舎を探し回るのはかなりつらい。クラスとしての教室の階は二階分しかないのに、他の教科の部屋などによって4階まである。階段だけじゃなくてエレベーター機能もつけるか、外から翼で昇降できる機能をつけるべきだと思う。

 今日あった授業で移動教室だった時に移動した教室は全て見回った。あとー…あ、僕があーくんを探してこうやって回っているうちに、教室に戻ってきてるかもしれない、と思って教室へ戻った。

「あーくーん…」

 いない。会話で残っていた人たちが数人いるだけだった。

 あとどこだ?と教室から離れ廊下をうろついて「ちがいます!」

 突然あーくんの大声。こちらも対応する。

「あーーーくーーん!!どこぉーー!!」

 声の根源だと思われる方向へ駆け出した。そしてあーくんと―――だれ。

 そして話していたのはトイレ前。あぁトイレ!そういえば探していなかった。完全に探索候補から外れていた。教室にいるとばかり考えていたが、”いそうな所”と改めて考えれば簡単に候補に浮かぶ。

 それから早歩きであーくんの横に着き「だれ?」気になったことを口にする。

 片目に眼帯を着けている。少し不良系の男。そんな男があーくんに何の用があるのか。

「えーと…こちらもなんだけれど、まぁいいか。名乗る必要はない、かな、なんて。」

 突然駆けて来た僕に少し困惑した様子を見せたが、すぐに立て直し質問を突っぱねる。

「……行こ。」あーくんが急かす速度で言った。

 僕は相手の『名乗る必要はない』が引っかかり少し腹立たしく感じていて本心はもっと言い返したいが、大人しくあーくんについて行こうとする。

 すると男は、後ろを向き進もうとするあーくんを掴んだ。

「っとぉ…、まだお話終えてないなあ」

 へらっと引き止めた。しつこいので僕はあーくんからそいつの手を引っ剥がそうとしたが、あーくんは素直に振り返り手を振り払って、男と向き合う形になった。

「……あーくん、メンドくさいからもう行こうよ」

 あーくんは突然簡単な深呼吸をした。ため息ともいえるかもしれない。

「あの」「いつまで根拠のない嘘を続けるわけ?」

 言葉を遮り男が問う。嘘?どういうこと?途中から話に入ってきた僕はさすがに話についていけないので、黙って聞いていることにした。口を挟んであーくんを危険な方向へ追い込んでもいけないし、無駄なことを言ってあーくんを怒らせてもいけないから。

「嘘とかなんなんですか。僕は男ですけど。」?

 そんなこと?この男はあーくんが髪しばってて女の子っぽいから女の子と勘違いしちゃってるみたいなそんなカンジ?なら僕も話に入れるぞ!

「俺の五感がそれが嘘だと申しているのさ…って戯言じゃ無限ループか。」

「五感とかなんなんですか。はっきり言ってください。」

「その反応対応が女性っつったらどーしよう?」

「もうここまできたら僕が女の子っぽいっていうのは認めますから、僕が男だってことについてそれを嘘とかぶっ飛んだコト言うのやめてもらえますかね。」

認めるのか。いや、可愛いけどさ。

 向こうの言動も無茶苦茶だ。さすがにこれらは嘘っぱちだろう。

「テキトーなこと言ってないで」「インキュバス」「「は?」」

 突然出てきた不慣れな単語に会話を聞いていただけの僕も口を開いてしまう。

「な、なんですか、それ。」

 あーくんも聞き慣れない単語だったらしく、困惑した言動で問う。

「それ扱いかい、悲しいなあ。後で調べてみなよ、インキュバスの勘、さ。」

 この男がインキュバスというやつなのか?では種族の名前かなにかか?もしかしたらなんかもっと難しい単語なのかもしれない。車のバスの仲間とはいわんだろうとはさすがに僕でも判る。

「もーいいや、君との会話はキリがない。そろそろおさらばするよ。」

 こちらに有無も言わせず男は僕らの横をひらりと通っていった。渡り廊下の方向だ。バッグを持たないまま下駄箱に向かうあたり、本当に不良だったのだろう。

 そして20mほど行ったところで何かを思い出したように立ち止まり、振り返った。

「その後から来た男の子、わがままなお姫様をちゃんと守ってあげなよー?」

「なっ…」

からかうような口調で言い放ち、その後「なんてねぇ」と付け足してまた渡り廊下の方向へと進み始めた。後から来た、というんだから間違いなく僕に対してだろう。しかしお姫様とはさすがに…雰囲気はもってるけど…。

 あーくんは顔をしかめて男が去っていくのを見ていたが(睨みつけてともいう)、やがて男が見えなくなると僕の方を見て「帰ろ」と短く言った。頷いて再び大人しくあーくんについて行った。



6.授業中にあったかもしれない出来事(★魁・輝端・真里亜)


「ねー魁。」

「…うん?」

 毎時恒例行事が始まった。

「ここちょっと解らんのだけど。」

 どうせ”ちょっと”でもないし、基礎のうちの基礎だし、ふつうに授業でさらっと教わったところだ。要するにすごく教えるのがメンドくさいわけだ。

 とりあえず輝端がわからないとシャーペンで指す問題を見る。ふむ、やはりそうだ。

「…こういう基礎的な問題は俺らに聞くより先生に聞いた方が早くない?」

 毎回のことのため、呆れ気味に言った。すると輝端は少し不服そうな表情をし「でもさー…」

「先生にこういうの聞くとさぁ、”きちんと教えたでしょー!”って怒られるじゃん…?」

 先生のセリフの部分を少し声を高めてそう言った。しかしだな…

「お前の覚えの悪さが悪いんだろ…」

 すると今度は俺を睨み「才能は変えられないんですー」と不満を漏らした。否定はしないが、言われる側としては複雑な心境になる。”才能”に関しては褒められてもあまり嬉しくないのだ。なんというか、その話題については嬉しい感情が麻痺してるみたいな…わがままだな。

 しかしこいつも戦闘に関する知識…というか技術に関しては十分すぎる能力をもっている。ただ駄目なのは座学だけだ。そう考えるとある意味勿体ないなー…なんて教師みたいな見解を俺が持ったところで無意味か。

 そうやって俺が思考を巡らせる間、輝端は珍しく一人で問題と戦っていた。一線一点すらペンが進んでいないが。ここまでくるとさすがにわざとバカやってんじゃねーのと問いたくなる。が、以前それを訊いてみたところ

「はあふざけんじゃねーわざとバカができるならわざと天才もできるわ」

と意味不明な回答を頂いたので、生粋のバカを確信した。意味が本当に分からない。多分本人も理解できてない。むしろどう説明するのかというところだろう。

 と輝端の進み具合をちらりと見ようとしたら、本人と目が合った。もしやこいつちらちらと俺の顔色を窺(うかが)ってでもいたのか?目が合った途端唇をとがらせて「魁が教えてくれないからー…」と愚痴をこぼした。

「ちょっと注意されるだけで一応教えてもらえるじゃんか…先生だってさ…」

 とにかく教えるのが面倒だし、自分の今やってる問題解きを進めたいので、なんとかして他の人になすりつけたい。言葉はあれだけど、他の人に訊いてもらいたい。

「魁は滅多に注意されないからわかんねーんだよ、何度も怒られてる俺はちょっとの注意でも心がズタボロになるんだよ…」

すごく悲壮感を出した声音で言うが、結局は自業自得かよ。

 目の端の小刻みな揺れに思わず目がいく。真里亜が笑ってる。

輝端も動きに目がいったらしく、「む」と不満の前兆の声をだした。

「真里亜、笑ってんだろ」

 真顔できいてる。しかしさっきの話は俺は相手だったからそんなだったが、改めて考えてみれば、フツーに面白要素がたくさんあっただろう。むしろよくここまで堪えてたなと思うぐらいに。もちろん輝端の発言に。俺は真面目につまらん返答しかしていないので、要素は皆無だ。そもそもそんなもん狙ってすらいなかったが。

「わらっ、笑ってないよ…ちょっと、寒気がした…だけ…」

 輝端の真顔の指摘に嘘で反論する真里亜。お前ら似た者同士かよ。

 ちなみにさっきから真里亜、自分の机に向かったまま返事してるから、多分口元は笑ってる。

「笑ってるって。あ、じゃあさ真里亜、ちょっと俺がわかんないとこ教えてよ。」

と言う輝端の表情は真顔から一変悪めの表情。いや、ニヤリとしてた。

 こいつが戦闘以外でも作戦を立てること自体が得意ならば、作戦のうちかもしれないな。しかし、たまたま引っかかったぜラッキーの可能性もゼロとはいえない。

 いや…人のこと悪とかいえる立場じゃないけどな…

輝端が頼みの矛先を他の人に変更してくれれば、俺は解放され、自分の問題を周囲を気にせず解くことができる…。というのを数分前にも考えていた気がするぞ。

 真里亜一人の犠牲でその二倍の人が救われる(俺と輝端だけ)と考えれば、軽いものだろう。救われる側にとってはかもしれんが。頑張れ真里亜!心中で応援してるぞ!

 あ、質問をもってこられる心配がない以上先生も救われるのか、なら三倍だぞ!

「いやだ。」

 真里亜はさっきまで笑っていたのが全く嘘だったかのように睨みつけて言い放った。断固拒否みたいな…そんな感じの?

 …おいおい、自分の三倍分救ってやれよ…。

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