茅ヶ崎至とオペガール

りんう
@riririnu07

act.3:衝突

この小説は夢小説 (名前変換ができる小説) です。
キャラベルに登録してログインすると、登場人物の名前をお好きな名前に変更できます。


「今の、どういうことですか?」


 そう言った千花に先程までのおどおどした様子は無く、眉は釣り上がり、真っ直ぐ睨むように俺の事を見ていた。

 俺だけじゃなく、綴も足を止めていて驚いた顔でこちらを見ていた。

 早く稽古なんて終わらせてゲームがしたいだけなのに、これは面倒くさい事になりそうだ。溜め息を吐きそうになるのをぐっと堪えて彼女と目を合わせる。


「……どういうことって?」

「茅ヶ崎さん、今までゲームされてたんですか?」


 丁寧な口調で問い詰めてくる。

 何て誤魔化そうかと思ったが、このテのお子様に下手に誤魔化せば余計ややこしくなるのを察した俺は開き直ることにした。


「そうだけど?」

「稽古をサボってゲームをするなんて、」

「サボってないよ。さっき休憩だって、言ったと思うけど? 休憩中にゲームをしただけ」

「それでもこうやって皆木さんが探しに来るまでゲームをやってたってことですよね?」


 予想外に中々食い下がらない彼女に嫌気が差してくる。そもそも彼女が何で怒っているのかも分からないし、怒られる筋合いも無い気がする。

 横目で綴を見ればこの状況にただただ戸惑っているようだった。これは綴に止めてもらう、なんて期待は出来無さそうだな。


「で? 何が気に入らないの?」

「……MANKAIカンパニーの春組に所属していながら、その不真面目さが不愉快です」


 なるほどね。

 それは今の俺の全てが気に入らないという事か。

 千花にとってMANKAIカンパニーへの思いれの深さは何となくだけど理解した。しかし、だからと言って「はい、そうですか。じゃあ稽古頑張ります」とは俺には言えなかった。


「悪いけど、そもそも俺は芝居をやりたくてこの劇団に入ったわけじゃないから」

「そんなっ……!」

「話はそれだけ? 一応、稽古に戻るつもりだったから行くね。行こう、綴」

「え、あ、はい」


 これ以上構ってらいられない、そう思い俺は言葉を挟む隙も与えず歩き出した。

 千花はもう俺を引き止めなかった。

 踵を返す前に見た千花の表情にそれまでの怒りは無く、どこか悲しそうにしていた。


「至さん! 藤堂さん、いいんすか?ちょっと大人気無いっすよ」

「なんとでも。俺は本当の事を言っただけ」


 そういうところが大人気無いんすよ、と綴の呆れた声が聞こえる。

 先に突っ掛かって来たのはあっちだ。それに対して丁重に返しただけのこと。とやかく言われるのは理不尽である。


「でもあの子、本当にMANKAIカンパニーが好きなんっすね。さっきも俺に演出の事で相談に来てくれて。すごい熱心っすよ」

「へぇ」


 ここにも温度差か。

 咲也や綴にも言える事だけど、芝居をやりたい、脚本を書きたい、そうやって入って来た二人とは明らかに温度差があった。真澄は監督さんしか頭にないしシトロンは良く分からない。謎すぎる。

  正直、こんなにもやる気が無いのは自分だけだと思うと居た堪れない気持ちも有ったり、無かったりして、少し前に劇団を辞めようかとも思った。

 引き止められたって言うのもあるし、このメンバーなら、って変な期待とかもあってロミジュリの公演までは残ることにしたけど、結局またこんな思いをするのか。


「あ、至さん! 次、至さんのシーンやりますよ」

「はいはい」


 会場内に戻れば、監督さんが待ち構えていた。

 俺は座席に置いておいた台本を手に取ると、舞台に上る。

 照らされる照明の眩しさに空いている左手を上げて影を作った時、正面にあるオペレーター室が視界に映る。そこには、真剣な表情で台本片手に照明スタッフと話す千花が居た。時々、台本を指差して話しているのを見ると、何かしらの打ち合わせをしているのだろう。


 どうしてみんなそんなに真剣になれる?

 どうしてみんなそんなに真っ直ぐでいられる?

 俺には到底分からなかった。

 無事にロミジュリの公演が終わった時、俺はそれを分かる事が出来るのだろうか。





20171010@Hinayuki