ヨ ウ キ ヒ 系女子

宇鷺 林檎
@RingoUsagi1020

いち

「…警察に言わないで、とはどういうことだ?」

 アヤはここ、内務省特務異能課に(連れて)来(られ)て早々、後悔していた。


(…何か、早速警戒されてる…。)

「全く。先生は本当にデリカシーがありませんね。淑女レディーに秘密くらいありますよ。」

 辻村に、ねっ?と同意を求められ、アヤは訳がわからずまた硬直した。

「…二人とも落ち着いてください。困っているでしょう。」坂口は呆れ乍らも同じような注意を再び促した。アヤは坂口を、じっと見た。


(…何か、落ち着くなぁ。)


忌島キノシマ、さん?」

「…アヤ、で構わないです。」

「では、アヤさん。…貴女に何があったのかは分かりませんが、取り敢えず。警察に通報することはないので落ち着いてください。」

「は、い…。」

 優しい、穏やかな安吾の物腰と声に、アヤは人心地を取り戻した。再び、じぃっと彼の眼を見つめた。丸いレンズの奥。緑の瞳が優しい光を放っていた。


「…先輩凄い。」

「子供の扱いに慣れているな。」

 子供、って。もう直ぐ十八なのに、と少し不服に思ったのは飲み込んだ。


「…取り敢えず、自己紹介をしていきます。僕は坂口。…坂口安吾、です。そして。」

 その隣の辻村、綾辻の順に自己紹介を済ませた。

「…で。何故失踪した?」

 単刀直入に切り込む綾辻に。隣の辻村が眉を顰める。

「あのですねぇ。」

 いいんです、とアヤは呟くように口にした。先程よりは緊張も解れてきた。少しずつ、話していくことにした。


「…先ず、集落を逃げ出した理由、ですね?簡潔に言うなら…。…」


 内容を頭の中で整理して。アヤは絶望的な問題にぶち当たった。集落を逃げ出した理由が、先ず常識では考えられないような。非現実的なものだったからだ。


「…あー、あ…えっと。」

「何だ。」

 綾辻の威圧的な態度に、アヤはまた焦り始めた。一人あわあわとしていると、坂口の優しい声がした。

「取り敢えず、話してみて下さい。否定も肯定もしません。」

 魔法使いみたいだ、と思った。彼の言葉は温かく、アヤの心を包んでくれた。


「わかりました……じゃあ、話します。…簡潔に言うと、或る事件を起こさないため、です。」

「アヤちゃんの言う…或る事件、って?」

「分かりませんが…。私があのまま集落にいたら…。」


 アヤは何を思い浮かべたのか、顔を悲痛に歪ませる。言葉を聞かずとも、其の事件とやらが良くないことなのは誰にでも容易く理解できるだろう。

「…ある日…兄と父が話していたのを聞いて。」


 その内容は、要約すると、『アヤは我等(アヤの集落の住人)の祖先の復讐のために欠かせない存在である』ということと、『アヤに因って未曾有の大事件を起こす』ということだった。


「…どう言うことなのかはよく、分からないんです。私も。私と話をしてくれる人は、あの集落にはあんまりいなくて。祭りの日に神様に神楽を捧げる日以外は部屋に幽閉されていて。」

 皆、黙ったまま、考え込む。アヤは不安そうな表情をして、見慣れぬ都会の町並みを見つめていた。


「……奇妙だな。」

「そうですね。」

「っえ?何がです??」

 眼をしばたかせる辻村を他所に、綾辻と坂口はまた思索の海へ潜っていってしまった。


著作者の他の作品

「架空OL日記」というテレビ番組に触発され、書くことを決めました。因みに、...