Eternity

綺野あきら✨絵とD活がメイン
@KIRAhoshina

Christmas with …

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キラは厨房にいた。


屋敷下僕達がせっせと働く中、ぽつりとその様子を眺めていた。厨房は今夜のクリスマスディナーの後片付けに忙しく、まさに戦争という言葉が相応しいほど入り乱れていた。


「マルフォイ様、ご希望の品です」

キーキー声が足の方から聞こえ、視線を落とすと、屋敷下僕のセザンヌがチェリータルトの入ったバスケットを手渡してきた。


「セザンヌありがとう、あなたの作るタルトが私は一番好きよ」

バスケットを受け取り、セザンヌにお礼を言って厨房を出る。


もう真っ暗になった城の廊下を、杖で明かりを照らしながら歩いていく。

まだ暗闇は少し怖いが、勉強の甲斐あって杖に光を灯す事が出来てからは1人で廊下を歩けるようになっていた。


向かうはスネイプの研究室。

冬休みでクリスマスだというのに、食事の席でみかけた彼は少し窶れて目の下に隈が出来ていた。きっと居残り組のレポート採点か、研究に明け暮れているのだろう。

そんな彼に、ケーキと紅茶でちょっとした息抜きのプレゼントを考えたのだった。


勿論クィレルからクリスマスのプレゼントがきた件を相談することを視野に入れて。



コンコンと木の扉をノックすると、

「入れ」と低いバリトンボイスが聞こえた。


中に入ると、彼はいつも通りデスクで何かをしたためている最中だった。


「何の用だ」

「先生がお疲れのようだったので、差し入れにお茶菓子をお持ちしました。一緒にいただきませんか?」


スネイプの返事を待たず、机の上にカップを出現させ(因みにダンブルドアからもらったプレゼントである)、ポットにお湯を沸騰させ始める。

セザンヌに作ってもらったケーキを皿に盛り付けてテーブルに並べると、

デスクからスネイプが立ち上がり、向かいのソファへ腰掛けた。


今日はローブを着ておらず、スラックスとトップスが彼の意外と細身な体を強調させる。

櫛を梳かす暇もないのか、髪も乱れていた。


「先生、お疲れみたいですね」

「ふん、まぁな。お前はあまりそう思ってないようだが、我輩はこれでも教授で、やるべきことが山程あるのでね」


沸いたお湯をカップに移してあたためながら、持参した茶葉をティーポットに2匙いれる。そして熱い湯を流し入れ、少しの間蒸す。隣で同じく深皿に湯を張り、持参したチョコレートを湯煎にかけた。


ソファに腰掛けた彼は背もたれに体重を乗せ、ふーっと息を吐く。

遠い目でデスクをみている様子から、まだまだ作業は終わらないことを示していた。


「チェリータルトはお好きですか?厨房でセザンヌに作っていただきました。私、このチェリーパイがとても好きなんです。彼女はきっもホグワーツ1のパティシエだと思います。」


切り分けられたチェリータルトを、小花柄が白陶磁器に美しく映える平皿へ移し、

温めたチョコレートソースをタルトにかからない位置で絵を描くように花の模様に仕上げた。


「…マルフォイの屋敷でみた時から、お前は甘いものにがっついていたな。」

「え…?」


お茶を淹れ終わり、彼の元へカップを差し出した時に、スネイプが零した言葉に反応する。


「我が家にいらっしゃった事があるんですか?」

「左様、ルシウスはホグワーツで我輩の先輩にあたるのでな。何度か訪問したことがある。」

「私、学校にくるまで、先生とは初対面だと思ってました。お会いしたことがあったんですね…」

「…幼かったからな。覚えておらぬであろう。」


黒い瞳から零れた目線がカップに落ちる。

カップを手に持ち、紅茶を口に運ぶ彼の顔を見つめた。


「…私が、いくつのときですか?」

「…4年ほど前か。中庭でドラコが箒の練習を庭でしていた時に、お前は近くで本を読んでいた。」


あの美しい、私の中庭。

幼い頃は私とドラコの遊び場で、

魔法や箒を練習したり、木にハンモックを吊り夢中で本を読んでいた。

夕飯の時刻になっても屋敷に戻らなかったこともあって、母上によく叱られたのを思い出す。


「ルシウスもナルシッサも大広間で会議をしていた。我輩はたまたま会議の空気に嫌気がさして庭に出た。春のまだ寒い時期だった。

ダッフディルの花が美しく咲き、優しげな香りが漂っている庭で、ドラコが箒の練習の最中、落下した。」


あっ、と口から声が漏れた。

この話は知っている。


大勢の大人が我が家に訪れた。

父と母は会議だといい、私達は折角の父母との休日を満喫できず、ドラコは不貞腐れていた。


「今日は父上に箒乗りをみてもらう予定だったのに。あーあ、お前が一緒でも下手くそだから練習にもならない。」

「ごめんねドラコ。私、高いところが怖くて…」

「ふん、まぁいいさ。キラ、代わりに見てろよ、僕はもう屋敷で一番高い木よりも高く飛べるんだ。」


ふわっと箒に跨り、空を縦横無尽に飛ぶドラコを見守りながら、私は読み途中だった本を開いた。


暖かい日だった。

春というにはまだ肌寒い気温だったが、肥料の相方がよかったのだろう、昨日からダッフディルが花を開かせ甘い香りを庭中に放っていた。


花の匂いの中で本を読み進めれば、すぐに時の感覚など無くなった。


夢中で読み進めているうちに、

突然ドラコの悲鳴が聞こえてきた。


「ドラコ!??」

本を閉じ、空を見上げると

80メートル上空からドラコが箒と共に降下しているのが見えた。


下にはクッションになるようなものは何も無い。このままでは…!


私は無我夢中で駆け出した。

そして。



「…ドラコを助けようと、呪文をかけた。浮遊呪文だった。ドラコの体は重力に逆らい、無事に地についた。だが、お前は、制御出来ない魔力が暴走して、自分自身の体を傷つけていた。」



それは、火柱のように体から溢れていた。熱い力が私の体に裂傷を作り、そこから湧き出ていた。

止めようとしても止まらない。どうしようもなくなって、泣き叫んで、周りの花や植物達もどうしようもなくざわざわと落ち着かなかった。私は意識を手放したのかそこからは覚えていない。


「ドラコは無事だった。落下のショックで気を失ってはいたが、見事な浮遊呪文で怪我はなかった。だが、お前は反動で命を失いかけていた。杖もなしに発動された道筋のない大量の魔力が行き場を失い体を蝕んだ。肌は焼け、傷が裂け、お前は泣いていた。

すぐに駆けつけた時、お前は意識を失った。だが、魔力の噴出は止まらなかった。」


黒い瞳が私を見つめた。あの時、この人は駆けつけてくれていたのだ。熱くて痛くて苦しくて、あぁどうなってしまうのか、とてもとても不安だった時に。


「…父が、駆け付けた時には、私は血だらけで、でも不思議なことにただ眠っているだけだったと聞きました。

先生が、私を助けてくれたんですね?」

「我輩は何もしていない。魔力は自然と止まった。傷の手当をしただけだ。」


淡々と。その返事は淡白だった。

その気取らない返事が優しく感じた。



「…もう帰れ。間も無く就寝時間だ。」

「あ、まだ甘い物の件にまで話が終わってませんけど!」

「Ms.マルフォイ、我輩は忙しい。それに吾輩には就寝時間までに寮に戻っていない不届きな生徒に罰を与える権利と義務がある。我輩がまだ目を瞑っていられる間に自主的な行動をお願いしたいものですな。」


席を立ち、デスクへ戻ろうとするスネイプからいつもの口調で小言を言われる。


はぁい、と少し気のない返事を返し、

持ってきたポットやら何やらを片付ける。

残ったケーキは、また食事をとっていなさそうな先生の為に置いていこう。


荷物をまとめ終え、出るだけになった時、

ローブのポケットの中から小さな包を手に持ち、彼の仕事をするデスクへ向かう。


座ろうとした矢先にこちらに向かってくる小娘相手に怪訝な表情を浮かべるスネイプに

手に持っていた包を差し出した。



「先生、メリークリスマス!」


ホグワーツに入ってから初めて見る

スネイプ先生の呆けた表情を拝む計画は大成功をおさめたのだった。


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