Re:member—【Alvasly】

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@solabell9601

魔法の鐘


「さて、じゃあ自己紹介も終わったところで本題に移ろうか?」

「…そうだな」


少しだけ空気がピリッとする。


「…君が、海底で原住民を助けようとして無理してたベルちゃんを助けてくれたんだってね」


ニコが簡潔に説明する。


「そうなのか。…そりゃ助かったよ、ありがとな」


微笑むユーヴェンスに対して、ニコも礼を言う。


「…うん、それに関してはとても感謝してる。ありがとう。…最近僕は他の用事でベルちゃんについていってあげられてなかったから、助けてあげられなかったことは事実だし」


ふぅ、とため息をひとつ吐いて、言葉を続ける。


「けれど、それからベルちゃんに誘われてうちに来たのはいいんだけど。…‪ベルちゃんにどうして連れて来たのかって聞いたら、なんて言ったと思う?」


困ったな、みたいな顔をしてスライの方に視線を向けるニコ。その目は笑っていない。


「…『アイツ、帰る場所がないの!…私だったらそんなの嫌よ。…だから連れて来たの。…理由は話せないわ』…だって」

「………。」

「…理由が解らないんじゃ、例えユーヴェンスくんやシルフィカちゃんが許したとしても、僕は君のことを信用するわけにはいかないかな」


そのニコの言葉に、ユーヴェンスが付け加えて一言。


「…俺は、お前が今まで話してて悪いやつだとは思わなかったけど…家族ニコがそう言うならその気持ちは汲み取ってやりたいわけだ」


黙って話を聞いていたスライだが、不機嫌そうに口を開く。


「…家族ごっこかァ…?…俺は御免だなァ、虫唾が走る」

「…………なるほど?君は少しばかり態度を改めてみる方がいいんじゃないかな?」


目を細めて笑うニコに、ユーヴェンスが静止をかける。


「ニコ、やめろって。…なぁ、スライお前、なんか過去にあったんだろ」

「…………。」

「言いなよ。…ベルちゃんは君が二ヶ月も惑星ウォパルの海底地域にいたらしいって話をしてた。…なにやらかしたの?」


まぁ、良いか。これで追い出されたとしても、とりあえずもう何ヶ月かはどっかで生き延びれるだろ。…別に生きる理由なんざねェから、のたれ死んでも構わねェしな。

そう思って真実を口にする。


「………両親を殺したんだ」


そのスライの言葉に、ニコもユーヴェンスも驚きを隠せない顔をする。

…まさか殺人だとは思ってなかったのだろう。


「…それ、は…」

「………やっぱり君は…」


暫くの沈黙の後、口を開いた2人の言いたいことはなんとなく予想できた。

その時、応接室の扉がバタン!と大きな音を鳴らして開かれた。


「待って!!」


先ほどまで結っていたツインテールを下ろして、部屋着に着替えたウィルベルが大声で扉の向こう側に立っている。


「ベル、入っちゃダメって言ったのに〜…」


どうやら少し前から聞き耳をたてていたらしい。

シルフィカもそこに一緒にいる。


「…スライは、私を助けてくれたの。…最初はね、多分…見捨てようとしてた。…だけど、私が、助けてって言ったわけでもないのに助けてくれたの」

「………。」


見捨てようとしてた、のところでこちらをちらりとみるベル。

…正直その通りなので何も言い返せない。


「でも、ベルちゃん」

「うん、ニコやゆーにぃの言いたいこと、分かる。…スライが信用できる証拠がないんでしょ?」

「…………まぁ、簡単に言えばそういうことだな」


その言葉を受けて、ベルは2人のもとに駆け寄って言う。


「でもね!私は…!私は、スライが悪い人じゃないって思うの!…どうやって証拠を探せばいいのかなんてわかんないけど、私は!…そう思うの…」


最初こそ強い口調だったが、徐々に声も小さくなって、涙目で話す。

自分の言いたいことが、幼いが故に伝わらないのがもどかしいのだろう。


「……泣くなベル。…わかった。兄ちゃんはお前の言葉を信じるよ」

「ユーヴェンスくんっ…!」


まだ納得がいっていない様子のニコに、ユーヴェンスは微笑んで言う。


「ニコ、お前だって分かるんだろ?…コイツにもなんか理由があったんだってこと。…俺たちは…大人だから…かもしんねぇけど。…そういう純粋な目で人を見ること、忘れちまってるんだよ」

「……………。」


否定できないのか、苦しそうな表情で下を向くニコ。


「…とりあえず、ベルと落ち着いて話がしたい。…悪いけど外で待っててくんねぇかな」

「…わかった」


部屋から出ればそれでよかったのだろうが、気分的に外まで出る。


「そりゃあ…殺人を犯した奴を喜んで迎え入れるほど狂った場所なンか…ねェよな。」


以前所属していた機関…研究所のトップは喜んで迎え入れた。

…今思うと、アレは完全にイカレている。


陽も落ちて、寒くなって来た頃、玄関の扉が開く。


「うわっ、本当に外まで出てんじゃねぇか!…早く入れって…」

「………。」


やはりコイツお人よしが過ぎるんじゃねェのか、と扉を開けたユーヴェンスを見る。

中に入ると、シルフィカが声をかけてきた。


「…ごめんなさいね。…私はニコくんの方を説得してて、入れてあげられなくて」

「お前ら兄妹…いつもそんなンなのか」

「そうね、そうかもしれないわ。…両親がそういう人たちなの♡」

「……なるほどねェ…」


遺伝、か。…そりゃ結構なこった。

…俺には、狂った両親アイツらの血が流れてるのかと思うとゾッとするけどな。


応接室に入ると、不機嫌そうに椅子に腰掛け足を組むニコと、スライが入ってくるなりちょっと笑顔になる‪ベルがいた。

全員が椅子に座ったところで、ユーヴェンスが口を開く。


「ま、結論から言うと、スライはうちで預かることになった」

「わーい!やったー!!」

「…僕はまだ不服なんだけどね!」


むすっと拗ねてニコはこちらを睨む。

しかしその表情は先ほどより幾分か柔らかになっており、どちらかというと喜んでいるベルを見てスライに嫉妬しているような顔だ。


「…で、条件…つーか、約束事みたいなもんだけど」


そう言うとユーヴェンスは真剣な顔で話す。


「…お前が話す気になったらでいい。…なんでそうなったのか、そしてお前が今までどう生きて来たのかを教えてくれ。…これはニコが来た時にも言ったっけな」

「…そうだね」


この家の慣例になっているのだろうか。ニコが少しだけ苦笑いしながら答える。

…察してはいたが、コイツにも『一目惚れ』以外にも深い訳がありそうだ。


「…スライにとっては偽善に聞こえるんだろうが。…同じ家に帰ってくる俺たちは、家族だ。…血が繋がっていようとそうでなかろうとな。…それがうちの方針だ」

「………俺は守るかどうか分かんねェぞ?」


そう言うと、ベルがぷんぷんと怒りながら言う。


「またそういう口の悪いことを言う〜!!お兄ちゃんのゲンコツを3回くらいくらえばいいのよ!!約束は守る!絶対よ!」

「わかったよ…うるせェな…」


ぐいぐいと近づいてすごい剣幕で言うベルに、面倒臭そうに答える。


「…よし!じゃあそれで決定だ!…ようこそ我が家へ、スライ」


微笑んでこちらに手を差し出すユーヴェンス。…握手とかそういうのはなんか嫌なんだが、という顔をするも、ほら早くとベルに急かされて渋々その手をとる。


「…よろしく」


「声が小さいよスライくん!☆」

「いきなり馴れ馴れしいなテメェ」

「テメェじゃないよニコだよ!!…みんなが君を家族だって認めたなら、僕と君も家族だ。…名前で呼ぶのは当然じゃないか☆」

「うわ…ウゼェ…」


心底鬱陶しいという顔を向けるスライに、シルフィカがうふふと笑いながら言う。


「あらあら♡もうニコくんのウザさに気づいちゃったのね〜?」

「シルフィカちゃん!?さりげなくひどいね!?」

「よし、じゃあ今日の夕飯はスライの歓迎会も兼ねて豪華にいくぞ!」

「え、やった〜!!!ゆーにぃのふるこーすだ〜!!」

「私もなにかお手伝いしようかしら♡」

「し、シルフィカちゃんは僕と一緒に飾り付けでもしよう!ね!ほらやるからには豪華に☆」

「そーだぞ、料理はベルと俺でやるから、な?」


そんなことを言いながら応接室を出て行くみんなを、後ろから眺める。

…俺、本当に今日からここに住むのかァ…?

間違った選択じゃねェといいんだが…。とか考えている。


「スライ!なにしてんのはやく来なさいよ!」


ぼーっとしている(ように見える)スライを‪ベルが呼びに来てその手をとる。


「今日は〜♪ごちそう〜♪」

「食い気しかねェのかよ」


スキップしながら変な歌を歌うベルに引っ張られてその後ろをついていく。


「なっ!失礼ね!私だってやればできるのよ!」

「……知ってらァ…」


さっきの、大人2人に対して言った馬鹿みたいに理論もなんにも通ってないあの言葉は、間違いなく、ベルコイツの力だ。


あの一言で、人を動かしてしまったんだから。

…そういや俺も、こいつに動かされて今こうなってンのか。


「ふふん♪ウィルベルさまを尊敬なさい♪」

「…そりゃあ厳しい努力が必要だな」

「失礼ね〜!!」


まぁ、コイツみてェな馬鹿の考えることは解んねェが、振り回されてみるのもいいんじゃないかと思ってしまう自分がいた。

…ここが、本当の意味で帰る場所になることを心で願いながら。


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