Re:member—【Alvasly】

✿*. 𝕟𝕚×𝕟𝕒✿𝕤𝕙𝕚𝕡𝟡.𝟜 ❀.*・゚
@solabell9601

荊と鎖


その後、上層部は、過酷なまでの実験を重ねた。

どれだけ耐えられるのか、どれだけの数を相手に出来るのか。

「兵器」として彼女…《code:Z-Filia》を扱った。


時間が経つほどに、《code:Z-Filia》の扱いは酷くなっていった。

AIと言えど、構築段階で自らの行動を判断するためにと、最低限ではあるが人間らしい要素を追加されていた。

生存本能を煽るための痛覚、撤退判断のための恐怖心、戦闘を好むようにするための嗜虐心。

そのどれもが、月日を追うごとに、彼女自身を苦しめていった。


その状況を間近で見る、彼女の内面をすべて熟知した…言わば「親」である彼は、見て見ぬふりを続けて居られなかった。


重ねてきた実験の数々に、AIの彼女も疲弊していた。

…いや、正確には、疲弊を避けるため、「自らが考え思考する能力」を自らの意思でとざしていたのだ。

そうなってしまっては、調整者たる彼本人でも治すことなどできない。

彼女自身が、その鎖を外す意志を持たなければ。

そして、思考する能力を失くしたAIの末路は、知っている。


今の自我の廃却アップデートだ。


実験開始から10ヵ月…《code:Z-Filia》と彼が邂逅してちょうど1年のその日、彼は彼女を連れて研究所を去った。

無論、それなりの騒ぎにはなったが、研究所としても明るみに出したくなかったようで追手が差し向けられることはなく事態はすぐに沈静化した。

逃げれば、例え追っ手がなくとも自分の居場所がなくなることは明白だった。

…今はもう何もない彼に、それはある種の死を意味するようなものだったが、それすらも彼の中ではどうでも良かったのだろう。

《code:Z-Filia》を苦しめている原因の一つが自分だからなのか。


—————それとも、彼女に自身の過去を投影していたのか。



ただ手を引かれ歩く人形と化した彼女は、暫くの時が経った頃、ひとつだけポツリと呟いた。


「…わタシは…だレ…?」


感情の篭らない、機械音に、彼は答えた。


「…テメェの名前は……《ゼフィーリア》だ。…それだけだ。」


人形と化していたはずの彼女は、その言葉に一瞬立ち止まる。

動こうとしない彼女に彼は言った。


「…あとは、テメェの好きなようにすりゃァイイ。…俺も好きなようにするからな。」


好きなように、していい。

それは、彼女の幾重にも重なった鎖をひとつ解いたものだったのかもしれない。


それから、彼と彼女は別々に歩き出した。


—————1人は、自らの心を見つめる道へ。

もう1人は、自らの心を見つける道へ。


3 / 3

著作者の他の作品

クラウロット家、夏の恒例行事の流しそうめん大会。今年はどうやらいつもと様...

ニコラハルト=アイゼンシュタインの過去録。彼が昔関わった人達も喋ります。※...